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1994年 卵対峙(4)
去年の夏よりずっと暑い夏休みがやってきた。ぼくは宿題と夏期講習に追われ、陽介の頭の出来に嫉妬しながら日々を過ごしていた。
「自由研究、か」
宿題の多さに絶望しながら塾の帰り道を歩く。途中、立ち寄ったコンビニで購入した花火セットが手に思い。
そのまま家に帰るのも憚られて、ぼくはなんとなく土手のほうへと歩いていった。
夏の、日が長い陽気のはずなのに、辺りは既に暗くなり始めていた。
階段に座り、ライターをこする。花火につけると、焦げた匂いと、鋭い灯がともった
地震の所為で、一ヶ月も遅れた受験に無事合格した。どうやら、古松くんも同じ学校に通うことになるらしい。
花火の所為で起きた小火騒ぎは、うやむやになって終結し、ぼくは小学校を卒業した。
あれだけ逃げ出したいと思っていた場所なのに、正直に言うと、まだ卒業したくない気持ちもある。
きっと中学になったら勉強が大変になるし、今までのようには遊べない。
なんとなくおばあちゃんに会いたくなった。
治りかけの高速道路に向かって、ぼくは石を投げつけた。




