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飛光少年A(17)  作者: つなかん
独り虫の興奮性蛾
12/31

1994年 卵対峙(4)

 去年の夏よりずっと暑い夏休みがやってきた。ぼくは宿題と夏期講習に追われ、陽介の頭の出来に嫉妬しながら日々を過ごしていた。

「自由研究、か」

 宿題の多さに絶望しながら塾の帰り道を歩く。途中、立ち寄ったコンビニで購入した花火セットが手に思い。

 そのまま家に帰るのも憚られて、ぼくはなんとなく土手のほうへと歩いていった。

 夏の、日が長い陽気のはずなのに、辺りは既に暗くなり始めていた。

 階段に座り、ライターをこする。花火につけると、焦げた匂いと、鋭い灯がともった




 地震の所為で、一ヶ月も遅れた受験に無事合格した。どうやら、古松くんも同じ学校に通うことになるらしい。

 花火の所為で起きた小火騒ぎは、うやむやになって終結し、ぼくは小学校を卒業した。

 あれだけ逃げ出したいと思っていた場所なのに、正直に言うと、まだ卒業したくない気持ちもある。

 きっと中学になったら勉強が大変になるし、今までのようには遊べない。

 なんとなくおばあちゃんに会いたくなった。

 治りかけの高速道路に向かって、ぼくは石を投げつけた。

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