最強の一手
サブタイトルに意味はありませry
いつものことです。
そんでもって、予定のアーシェとテナーのターンが次に持ちこしされましたw
術式遊びの件が予想よりも長くなっちゃったんです・・・・スイマセン
「神術に必要なのはイメージなんだ。」
「ふむふむ。」
「うん」
「・・・・・あ・・、えっ、それだけ??」
「そう。まぁ普通は、自分の神力の量を把握してそれにあった神術を・・・とか考えるんだけど、シェスタの場合は無尽蔵にあるようなもんだから気にしなくていいよ。さ、やろっか。」
なんてテキトーな!!クロエに教師役は荷が重かったか??
気抜けしてベッドに伏せる私をクロエは不思議そうに見つめてくる。
だいたい、そんなんで神術とやらが使えるんなら誰も苦労せんわ!!
「大丈夫。だって、シェニエスタだもん。使えない訳が無い。ほら、早く」
根拠の全くないクロエの発言に脱力しつつ、私は掌を空に向けた。
大切なのはイメージ。それ以外には何もいらない・・・というか、それ以外に大切な物を私は知らない。
こんなんでホントに大丈夫か??
小さく溜息をつきつつ、
「いくよー、『シェニアス』」
クロエの言葉に、なるようにしかならん!!という妙な決意の元、私は自分の掌の上に舞う葉を想像した。
すると、どうだろうか。掌がポゥと暖かくなって数枚の葉が何処からともなく現れ、風もないのに私の手の上でひらひらと舞い始めたのだ。
おお!魔法・・・じゃなかった、初の神術成功!!
嬉々としながら自分の手の上の葉っぱを見つめていると、その葉っぱがクロエの手の上に浮かんでいる水球に飛んで行って、水を吸い上げるようにしてクルリと舞った
「ほぇ??」
「あーあ、僕の負けか」
今の現象の意味が分からずに素っ頓狂な声を上げると、少しだけ悔しそうなクロエが肩を少し竦めて笑う。
草は水に勝つ・・・ってなるほど。草は水を吸って成長するものね。
目の前で小さなアニメを見ている気分だった。
水を吸った私の葉は、緑の鮮やかさを増して私の元へと戻ってきて、ふわりと花を咲かせる。
艶やかに咲く花は、柔らかい桃色をした蓮華のような花で、少しの間だけ私の手の上でその色香をまき散らした後、静かに散った。
「おぉ!」
「ね?簡単でしょ。」
コクコクと忙しなく頷いて、私は「もう一回!」と満面の笑みでクロエに再戦を申し込んだ。
笑顔でそれを了承してくれたクロエは「次は負けないよ??」と口角を釣り上げる。
「「シェニアス!」」
合図の後に私の手の上には火の玉が浮かび上がる。不思議な事に全然熱くない。ふしぎー。
クロエの手の上には綺麗な水の球。むっ、ということは・・・・
「僕の勝ち~」
その言葉を合図にするかのように水が私の火の前に移動してきて、ジュッというリアルな音と共にその存在を掻き消した。
チクショウ、負けた!!
水は火を消したあと、クロエの手の上に小さな虹の橋をかけて音もなく消える。
何回目かも分からない程の戦術遊びは、また私の負けという屈辱的な形で幕を閉じた。
ニヤニヤと意地悪く笑うクロエに、唇を尖らせた私は一生懸命自分の心を閉じようと躍起になった。
クロエは私の心を読んで次に出す手に勝てる手を出してくるのだ。
ズルイ、反則だぁ!と叫ぶ私の心に
「耳元で叫ばれるのを無視する方が難しいと思わない??」
となんともご尤もな返事が返ってくる。
く・・・・悔しいぃぃぃぃい!!
ギリギリと歯を鳴らした私は、頬を膨らませてもう一度!!とクロエに手を向ける。
慣れたもので、涼しい顔をしたクロエは「次は何を出そうかな~」等とのたまう。
死ね、滅べ、私が何を出すか分かってるんだから悩む必要なんかないでしょう!!!!この鬼畜!!
と心底怒鳴ってやりたい。いや、もう心の中で怒鳴ってるから聞こえてるかもしれないけど。。
「シェニアス!!」
勢い込んで呪文(?)を唱えると、私の手の上には火の球。クロエの手の上には謀ったように水の球。
・・・イラッとしてしまった私を誰が責められるだろうか??
いや、誰も責められまい。
クロエの手の上の水の球が私の火を消そうと迫ってくるのを、ちょっとぶちギレた私の頭は「消しとべ、こんのクソ水!!」と、まぁ・・・ちょっとばかり物騒な事を考えてしまいましてねー・・・。
私の苛立ちに呼応するかのように、火の球は唐突にボッ!とその威力を増してクロエの水を瞬時に蒸発させてしまった。
・・・・・・・やっべ
と思った瞬間にはもう遅い。
私の手の上のちょっと大きくなりすぎた火球は、存在を主張するように火の粉をまき散らす。
私は熱いとは全く思わないのに、ベッドのシーツには火の粉が飛んだ証拠のように焦げ跡が点々と・・・・
点々と・・・・
の・・・のおぉぉぉぉおお!!
シルクの様な手触りのサラサラシーツに無残にも黒い焦げ跡がいくつも生まれ、私はギャァァァァアア!!とおよそ女の子らしくない悲鳴を上げた。
パニックに共鳴して更に火の粉を散らそうとする火球に更にパニックになる私。
最悪なイタチごっこだ。
「しょうがないなぁ、もう」
そんな私に救いの手を差し伸べたのは、この状況を生み出したキッカケのクロエだった。
・・・・って、責任転嫁はいけませんね。ハイ
悪いのは、子供な私。負けず嫌いでただの遊びに無駄に対抗意識を燃やしてしまったこのワタシ。
だからって、シーツまで燃やすつもりは全然なかったんですけどね!!
私が作りだした火球よりもさらに大きな水球を作りだしたクロエは、
「これだけの水があれば、勿論火は消えるよね??」
という何とも意味の分からない質問をしてきた。
あたりまえじゃん、何言ってんのー??と今の状況も忘れて首を傾げる私に、フッ・・・と鼻で笑ったクロエは火球に水球をぶつけて何の問題もなく鎮火させた。
「言っただろ?神術はイメージだって。だからイメージの力さえ強ければ、どんな状況でも神力の量が多い方が勝つんだよ。」
つまりは、私が今チラッとでも『こんな水ではこの火は消せない』と思っていたら、火は消えなかった・・・ということ??
「そういうこと。シェスタの神力は神界最高だからね。イメージされたら僕なんかじゃ全然敵わないんだよ」
・・・・なんて、デタラメな。
焦げ穴が出来てしまったシーツに「あぁ・・・・戻らないかな、コレ・・・」と現実逃避しながら、フフッ・・・・と自嘲気味に私は笑った。
「もーどーれー」と地の底から這い出てくるような低い声でシーツに唸ると、嘘みたいに焦げ穴は綺麗に消えていく。
・・・馬鹿みたいに簡単だった。呼吸するよりも簡単で、心臓を動かしているのと同じくらい自然に出来た。
まさかの私最強伝説だ。・・・こんな力はいらないというのに。
がっくり項垂れた私は、シーツの上に手をついてハァ・・・と溜息を吐いた。
「戻ってきた??」
「うん・・・、ゴメンナサイ」
しばらく自嘲と自己嫌悪の海に溺れていた私は、クロエの平然とした声に悄然と頷いた。
シーツは綺麗になっても、やったことに変わりは無い。
無自覚とはいえ、力を暴走させてしまったのだ。もし、相手がシーツじゃなくて命あるものだったら・・・と思うと戦慄してしまう。
「予想内の出来ごとだから大丈夫だよ。ちょっとね、自覚して貰おうと思って」
「・・・うん?」
「シェニエスタの力は強い。だから、自覚して欲しかったんだ。」
記憶の無い今の君なら負けず嫌いが発動して、暴走するんじゃないかとは思ってたんだよねー。予想どーり!
と平然と言ってのけるクロエ。
ぶん殴ってやりたい・・・・・!とつい思ってしまう。そういうのは、是非口で言って欲しかった。
教えてもらう身なんだから、贅沢な・・・と思わなくもないんだけど、ちょっと精神的に傷つくものがあるんだよねー・・・。
しょげた私に、「まぁまぁ」とクロエは目を細める。
「聞くより見る方が早いでしょう??それに、僕が言っただけじゃ君はきっと信じなかった・・・違う?」
「・・・違わない」
確かに、言われてみればそうだ。
「君の力は最強なんだよ!」と言われたところで誰が信じられる??少なくとも私は信じられない。
そこで、きっと「私は最強なんかじゃない」とか「力はそんなにない」とかイメージが固まってしまったら目も当てられない。
そんな先入観を持ってしまったら、力が暴走した時にきっと恐ろしい事になる。
「そういうこと。だから、それを君は知る必要があったんだ。」
今なら分かる。わざと挑発するような事を言ったクロエの考えが。
私の事を思って、憎まれ役をやってくれたんだね・・・・。
「ありがとう、クロエ」
ポツリとお礼を言うと、クロエは素晴らしい慈愛に満ちた微笑みを浮かべて
「ううん。君が負け続けるのを見るのはとても楽しかったし、逆切れして慌てる君を見るのも物凄く面白かったからお互いさまだよ」
と、毒を吐いた。
そっちが本音だろう、お前!!
読んでくださりありがとうございました!
いつもより500字程長めなので、それでアーシェ達の件に関しては見逃してくださいorz
次には・・・次にはきっと!!
・・・というか、今更ながらに思いましたが、クロエ水しか出してないですねーアレ??