天界の掟
天使は神によって名を与えられたしもべだ。与えられる名はすべて異なり、神の名前を切り離して与えられる。天使は自分でエネルギーを変換、生成する力に乏しく、神の名の加護がなければ、長くは生きられない。天使は二つの下界の循環を仕事として天使は誕生した。しかし、天使は非常に優秀な下僕だが、大きな欠点があった。神をある程度模して作られたために精神を持っていた。さらに食事と睡眠を取らなければその加護を維持できない。神はさらに名を切り離し、天使に社会を形成させた。
社会が形成されれば掟ができる。
神に逆らってはならない
神郷の宮殿には大天使以外近づいてはならない
レーレの下界に降りてはならない
他の天使に危害を加えてはならない
それら含め108の掟がある。
大天使はルシアという名を持ち、光の加護を持った天使だ。大天使が天界を統べ、先導する。
カルナは転生の名の加護を持った天使だった。だから君みたいな人を転生させることが仕事だったんだ。
過去にも歴代のラインカルナツィオーンの中にも人を殺めたものを転生させた者もいたが、少し罰せられるくらいで、名を奪われるなんてことはなかった。
カルナはよく、レーレの下界に降りていた。それがばれるや否や謹慎処分とかはよくあったものだ。天使にもヤンチャなやつはいる。遊びに降りて罰が下されるのはよくあることだった。
雲行きが怪しくなったのはつい1年前くらいだ。大天使とカルナが揉めていたのを見かけた。内容はわからなかったが、必死にカルナが大天使に抗議をしているように見えた。すぐに警備に取り押さえられ、また謹慎処分となっていた。
その一件以来、カルナは他の天使から避けられ始めた。手のつけられない異常者だと。本人は表情一つ歪めずに仕事に従事していた。
僕は移動を命じられ、こちらの下界の担当に回され、カルナの隣にいてやることすらできなかった。
そして、彼女は下界に落とされた。
「すまなかった。かなりくどい話になってしまった。」
「………それに聞いた話だと。ルシアさんは……」
「あぁ。加護を失った。だが、それは大した問題じゃない。」
「どういうことですか?」
「天使が生きるためだけなら、こちらの下界で魔力と言われる力を取り込めば加護の力を維持することができる。」
「その大きな問題は二つある。一つは名を失った天使は常に何かに感知されていないと、存在が消滅しまうこと。だが、幸いにも天使自ら知覚することにもそれには適応される。つまり、カルナが気を失わない限り、消えることはない。」
「だからルシアさんは寝てなかったんですね。無理をしてまで………」
「そうだな、そしてもう一つ。これが一番重要だ。次期に、新しく神からカルナと同じ名を与えられた天使が生まれる。」
「それの何が問題なんですか?」
「もし、その名を冠し、加護を持っていたものが存在しているなら、新しく生を得た天使の加護は不安定で不完全になり、異形の姿となる。その天使は完全なる加護を得ようと、同じ名を持っていた天使を殺しにくる。」
あぁそういうことか。ルシアさんがどこにいても、ずっと歩みを止めようとしなかったのは自分の命が狙われていることを知っていたからか。
「…………今もその天使はルシアさんを殺しに動いてるということですか?」
「いや、まだだ。ラインカルナツィオーンの名を冠する天使は生まれていない。本当は今日はそれを伝えるために来たはずだったんだけどな。」
「それは…………ツァイトさんが悪いんじゃないですか?」
「本当に申し訳ありませんでした。」
「とにかく、その殺しにくる天使はどうするんですか?」
「3日後。天使は孵化し、殺しにくるだろう。だから僕は3日後、もう一度下界に降りて迎え撃つ。奴はカルナの通った軌跡を通ってくるだろう。僕はカルナを守らなきゃならない。片思いの以前に、親友だからな。」
「3日後。頼みます。僕はどうしたらいいですか?」
「しっかり睡眠をとって、カルナのそばにいてやれ。」
「わかりました。」
「じゃあな、また3日後。カルナによろしく伝えといてくれよ。」
そう言うと、ツァイトさんは散るようにぼやけていき、やがて消えた。
さて、一旦宿に戻るとするか…………
「あれ………ここ、どこ?」
僕は見知らぬ暗い部屋の中、1人でつぶやいた。




