Ep.3-26 〝粛清〟
カキィィィィィィィィィンッーー!!
ゴゴッーードバッーー
ダダダダダダダダダダダダダダダッーー!!
クルッーースタンッ、
「ハァッーー!!」
折れかけのレックスの剣とロブルスの剣がカチ合う。
弾き飛ばしーー追撃し、反撃され、攻められては受け身を取り、翻ってカウンターを斬り込み、そのモーションの間に振りかざされる剣をパリィして隙を狙う。
そうして一進一退の攻防が続く中、セシリアは魔法を撃ち込む隙間を狙っていたのだがーー
「あいつ……やっぱりそうだ。ユウキさんの時とは動きが全く違うーー!!こんなふざけて……」
先程までの動きをずっと見ていたセシリアには一目でわかったーー。ロブルスが全く本気を出していない……いや、レックスをからかうようにあえて同じレベルに落として遊んでいる事にーー。
「こんな状況で魔法を撃っても同士討ちになるよう仕向けられて終わりーー。あいつの魔気はまるで乱れていないーー」
セシリアの魔法使いとしてのセンスは本物だ。ポピィでさえ《上限色覚》状態に入らなければ見えなかった魔気の流れが、彼女には見えていたのだーー。それは本来、よほどの修羅場を潜り抜けなければ身に付かない技術ーー。
故に、セシリアは戦慄していたーー。ロブルスが纏う、魔気のおどろおどろしさと、その魔気がどれほど濃く……どれだけ底知れない総量値であるかをーー。
カキィィィンッーー
「どうしたレックス……お前の力はそれが限界なのか……?」
耳元で囁き、挑発をあおるロブルスに……レックスはわなわなと怒りを露わにする。
「ゼルーーこの三年間。ずっと俺は……俺たちは、お前を仲間だと信じていたーー!!なのに何故……何故なんだ!どうして俺たちを騙して、こんな回りくどい事を……セシリアまで巻き込んでーー!!」
そんなレックスの問いに、口元を覆い隠しながら、別の感情で震えて答える。
「どうして……?確かに、お前達でなくともよい……誰でもよかったのだ!!魔王軍の為に表から動くには個人だと少々面倒でな……パーティーを組めば〝聖国上層部〟に疑われにくくなり、他の奴らの目も欺けるーー。まぁ、強いて言うならそんなところだ」
「魔王……軍、だとーー!?」
驚愕の真実に目を剥いてガタガタと震えるレックス。
「セシリアは……セシリアをパーティーに入れたのは何故だ!?……思えば彼女をパーティーに誘ったのはお前だったーー。一週間前、そろそろうちのパーティーには魔導士が必要だからと……なぜ、必要もないはずの彼女まで巻き込んだ!!答えろゼルーー!!」
その問いに、レックスの目を真顔で見つめながら答えるロブルス。
「何故……?決まっているだろう。あれだけの素質を持つ魔法使いを……我ら魔王軍の脅威となりうる存在を野放しにするとでも……?お前にはわからないだろうなレックス……。セシリアが持つ、底知れない〝才覚〟をーー。〝あのお方〟の占いの通りであったーー。丁度頃合いだったのだ。そこにいる〝赤髪の小娘〟を〝粛清〟し、並びにセシリアを葬り去るーー。ついでに目撃者である貴様らを違和感なく消し去るーー。そのためにはこのダンジョンに潜む〝邪竜〟を利用するのはうってつけだったーー。それが俺の目的だ……」
恐ろしく用意周到に練られていた計画に、ゴクリッーーと生唾を飲み冷や汗をかくレックス……。結果的に〝邪竜バルトロス〟はユウキ達によって倒されたが、その万が一の為の保険こそがロブルスの存在だったのだーー。
《魔将十傑》〝第七将〟ーーロブルス・J・クロフォード。その存在は、レックス達にとってあまりにも手に余る存在だったーー。
「そろそろ終わりにしてやろうレックス……。今まで世話になった礼として、冥土の土産話をしてやったのだ。さらばだ……我が〝元・友人〟よーー!!」
「くっ……ここまでかーー!!」
「レックスッーー!!嫌ッ!!やめてぇぇぇっ!!」
スパッーーと、レックスの首元にロブルスの魔剣の切先が触れるーーその刹那だった。
パキィィィィィィィィィンッーー!!
ほんの僅かーーほんの一瞬。瞬きすら許さぬ合間の出来事。死を覚悟したレックスとそれを振りかざすロブルス、大声で静止の涙を流すセシリアの元へと駆け付けたのはーー。
「ッーー!!貴様は……!!」
「ーーッ!!君……は………」
「っーー……ポピィ…………さんーー!!」
そこにいたのは、一瞬の間にユウキの落とした短剣を拾い、二人との間合いを詰め、レックスの首元とロブルスの剣先の間に、自身の短剣を挟み込むポピィの姿だったーー!!
《転生した鍛冶師の娘》の内容がわかりやすいようにキャラクターやストーリーの概要などをまとめた新エピソードを投稿しました。よければ作者の作品ページからご覧ください。




