第55話
「セシル。僕は、もう、限界だ。」
帰り道、ジストの背中の上で。
ルイスは魔法でドームを作り、セシルと向き合っていた。
透明なドームは、夜空を映している。
森から帰り、二人は役割を終えて、モルベール領を後にした。
セイラとジャンニの距離が、少し縮まっていたように思う。
アランが「守り人」だったことを聞かされ、驚いたが、おそらく同じように人知れず守り人契約を結び、精霊と共に生きている者は他にもいるのだろう。
(ジルダおばあちゃんとも会えた。)
自分のルーツを知り、セシルは、今は迷いなく前に進もうとしている。
目の前の、少々厄介な男と共に。
「・・限界、とは?」
やや身構えたセシルの手をとるルイス。
「魔王、ロベルト、次期精霊王、ジャンニ・・次から次へと君を奪いに来る。」
(いや、ロベルトはルイスに歪んだ愛情をもっていたからだし、他の面々も思惑ありありでしたけど?)
そう思うセシルだが、ルイスにはそんなことは関係ない。
「このままじゃ、僕はおかしくなってしまう。本当は、君を捕まえて、僕しか見れない場所に閉じ込めたい。」
ルイスの真剣な顔に、セシルはさらに身構えてしまう。
「・・それは、困ります。」
うん、と頷くルイス。
「それはしない。僕は、セシルの自由を奪いたい訳じゃないから。でも、セシルを奪おうとするやつに、せめて正々堂々と撃退する権利がほしいんだ。」
(権利ってなんだろう?)
一生懸命考えるセシルに、ルイスは言葉を重ねた。
「ねえ、セシル。君を僕の妻にしたい。」
「!」
「結婚してほしい。今まで通りの毎日でいいから、僕に、セシルの夫の称号を与えてほしい。そしたら、君に近づくやつ全員を、思う存分撃退できるもの。」
セシルはルイスを見つめる。
(私だって、ロマンスを想像したことはあったけど・・思ってたのと大分違う気がするわ・・。)
もちろんルイスが特殊なのだが、プロポーズというより、これは、洗礼式に近い。
(でも・・)
「いいですよ。」
今度はルイスが目を見開く番だ。
「いいの?」
「ダメなんですか?」
「あ、いや、ただ玉砕覚悟だったというかっ!」
セシルは優しく微笑む。
「ちゃんと言うタイミングがなかったですけど・・。」
「私、もう、ルイスのことが好きになっちゃってます。」
ルイス、フリーズ。
きゅいーん!
主の心の代弁は、竜のジストの鳴き声だった。
一方その頃。
「・・できたわ。」
バートン家では念には念を入れて、ルイスがつれてくる予定のセシルの誕生日を祝う準備が、完了していた。




