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第54話

「これは・・?」

『契約の指輪だ。実物を初めて見た。』

『これで僕たちの、初めての守り人ができるんだね?』

セルシオとフィンネルの弾む声。

だが、セイラの表情は硬い。

「契約・・ジルダ様と同じように・・。」

表情が硬いのは、ジャンニもだった。

「セイラは、モルベール家の血筋ではない。なぜ・・。」


「ルイス?」

突然腕のなかに包まれ、セシルはルイスを見上げる。

ルイスは、少しこわばった顔をしている。

(ルイスも気づいているんだわ。)

セシルは察した。


契約を結ぶ条件は、次期精霊王と言葉がかわせること。

なぜか分からないが、ここには契約の指輪と、条件に合う人物が二人。

契約は、セイラでも、セシルでも結べる。

(でも、なぜ?)

セシルは、ジルダの血筋だ。

血の力で説明はできる。だが、セイラは?


「分かりました。私が参ります。」

思考を妨げて、セイラが前に出た。

「セイラ・・。」

ジャンニの戸惑う声。

(ここで、契約をするということは、ジルダと同じ運命を受け入れるということ・・よね?)

セシルは、考えを巡らせる。

(だけど、たぶんセイラは・・。)

ジャンニの役に立ちたいと言ったセイラの顔が頭をよぎる。

セイラは、精霊王の妻になるべきか。その答えは、あの顔だけで否、だ。

(でも、私は代わりはできない。)

セシルにもまた、大切な人がいる。セシルは自分を後ろから守る温かい腕に手を添える。


「契約を結べる人物の条件は、もしかしたらモルベール家当主を愛する者であること、なのではないでしょうか?」

セシルは思いのままにそう、口にする。

ジルダは、領主の妹だった。兄を大切に思っていたからこそ、契約を決意した。セシルはその血を引くもの。

そして、セイラもまた領主であるジャンニを大切に思っている。

「ジルダさんは、領主への思いは家族愛で、恋ではありません。だから、精霊王との婚姻も成立した。でも、セイラさんは?セイラさんは、次期精霊王の妻になってはいけない気がします。」

本人たちより早くその思いを暴くのは、本来やるべきではない。だが、今は必要だと思った。

『言いたいことは分かる。我らは、契約さえ結べればよい。』

セルシオが言った。

あまりの受け入れの早さに、セシルは意外な顔で見てしまう。

フィンネルがぴょん、とセルシオのそばに降り立った。

『僕らの生きる時間は果てしないんだ。寄り添ってくれる伴侶に憧れはあるけど、いそいでないよ。』

急に大人びたことを言う姿に、フィンネルもまた、精霊王の器なのだ、と改めて思う。


セイラは大きく息をついて、指輪を手に取った。

「新たな精霊王と、新たな契約を。ジャンニ様と精霊王の架け橋を、私にさせてください。」

セイラの声と共に、セルシオとフィンネルが光に包まれて、光が消えた時にそこにいたのは、美しい青年と、少年だった。

(二人とも?)

二人は視線を合わせ、セルシオがセイラの左手をとり、フィンネルが指輪を受け取り、セイラの左手の人差し指にはめた。

『薬指は、やめておくね。』

という言葉と共に。


その瞬間、セシルには、不思議な光景が見えた気がした。

それは、そう、遠くない未来。

寄り添うジャンニとセイラ、そして、二人によく似た少女が、セルシオ、フィンネルと親しげに笑い合う光景。

なんとなく、それは、実際にいつかやってくる現実に思えた。



こうして、モルベール領の案件は、終わりを迎えたのだった。


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他にもいくつか書いています。よろしければ、ご一読ください! ヒロインは誰も攻略したくない。~シナリオに逆らい続けているのに、逆に攻略されそうになっています~ https://ncode.syosetu.com/n2812gp/
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