第33話 ロベルト編完結
「まあ、よい。」
アリシア姫はそう言って、茶菓子として並ぶクッキーを口に入れた。
「今回の件で、ルイスは反乱を食い止めた功労者であるとともに、今後、ちゃんと手綱を握っておくべき者であると、国王も認識している。そなたはその重要な鍵じゃ。」
じゃから、とアリシア姫が続ける。
「そなたには、賢くなってもらわねばならん。わらわがこの国、この世界のことを教えてやろう。・・女としてのあれこれ、も、の。」
「いや、結構です・・。」
嫌な予感しかせず、セシルは瞬で断る。
(断っても無駄だろうな)
と思いながら。
「さあ、そろそろか。」
アリシア姫が呟くようにそう言った時。
「セシルーーー!会いたかった!」
「きゃあああ!」
後ろから抱きつかれてセシルは声をあげる。
「まったく。同じ王宮内の歩いていける距離で、テレポートを使うでない。魔力がもったいなかろう?・・まあ、魔力無尽蔵のお前に言ってもしょうがないが。」
呆れたように言うアリシア姫に、ルイスは口を尖らせた。
「みんな、僕を応援しているの?それとも邪魔したいの?とりあえず早く帰りたいんだけど。」
「・・心臓に悪いので、離れてくれませんか?」
セシルは小声で訴える。
「ルイスよ。今帰ったところで、そなたらは大して進展せぬぞ。」
ツンとした顔のアリシア姫。ルイスは怯まない。
「残念ながら、その予言は当たらないね。僕らはすでに大きく進展しているから。」
「・・とりあえず、腕を離してほしいのですが。」
セシルは、ちょっと声を張ってみる。
「調子に乗って、嫌われるのはこりごりじゃろう?」
「いや、たぶんあの時は、ほぼアリシア姫が原因だから!」
「・・腕を、離して。」
セシルの低い声に、初めてルイスは飛び退いた。
「ごめん、セシル!怒ってる?!」
子犬のような目で上目遣いでセシルを見上げるルイスに、カルドフとロベルトを水攻めした時の残忍さは、欠片も見当たらない。
「・・はあ。」
(そもそも相手がこの人の時点で、普通の恋なんて、無理よね。)
セシル、悟りを開く。
「アクト・・くん。」
気を取り直してセシルはアクタスに向き合う。
ちらりとこちらを一瞥するアクタス。
(魔王ってばれちゃいけないから、多くは語れない。けど。)
「ありがとうございました。その・・本当に心配してくれて。」
それから見た目5才児の小さな手をそっと握る。
「・・無事で良かったな。」
ムスッとした顔で答えるアクタス。
アクタスとて、異変を察知しながらおいしいタイミングをはかっていた、とは言えない。
しかも、おいしい部分はルイスに持っていかれたとあらば、触れたくもない。
だが、それだけではなく、
(我が輩も大概単純だな。)
自分の手を包み込む柔らかいセシルの温もりに、完全にほだされている魔王アクタス、なのだ。
「妬けるのう。」
からかうような言い方をするアリシア姫。
ただ、その言い方には余裕もある。
(アクタスさんとは上手くいっているみたいね。)
セシルはふっと笑ってから、言った。
「では、もう帰っても?」
「そうじゃな。またわらわの方から呼ぶゆえ、くるがよい。」
(呼ばないでほしいなあ。)
切実に願うが、たぶん、近いうちに呼ばれるのだろうな、と思う。
「じゃあ、家まで送るよ。」
満面の笑みで肩をだくルイスに、今は甘えることにする。
「お願いします。」
そう答え終わるか否かのタイミングで、
「テレポート」
と詠唱がされ、二人は消える。
「まったく。ルイスはせっかちよのう。あれではセシルがついていけずに、また逃げてしまうぞ。」
呆れたように言うアリシア姫に、アクタスはムスッとしたまま激しく賛同していた。
ちなみに。
「送ってくれて、ありがとうございます。」
「うん。今夜はセシルのこと、たくさん抱き締めるから。」
「えーと、もう帰る時間ですよ?」
「え?」
・・帰宅後のセシルとルイスは、いい感じに通常営業。
ルイスは笑顔を張り付けたまま、結局帰宅した。
思ったより、セシルのガードは固いです。
二人を進展させるために、ルイスに頑張ってもらいたいので、次からルイス頑張る編で行ってみます。
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