第25話
「セシルさん、お久しぶりっす!」
ヴィンスの声がして、セシルは出迎えた。
「あれ?お一人ですか?」
いつもと違う光景に、セシルは尋ねる。
「いや、そこまで来てるんすけど、なんか入ってこなくて。・・ロベルトー?どうしたー?」
ヴィンスに続いてドアからひょっこり顔を出すと、家の敷地の境目で顔を歪めているロベルトが目に入った。
「すみません。なんだか、今日は、体の調子がおかしいようです。」
そう言うロベルトを見て、セシルははっとする。
(闇の魔力・・!)
それは一瞬のことだった。
うっすらとだが、ロベルトから闇の魔力の気配がする。
「さっきまで何もなかっただろ?森で何かあったなら、セシルさんに見てもらったほうが・・。」
心配して、そう言うヴィンスを制してセシルが問う。
「結界が通れないのでは?心当たりはありませんか?」
ロベルトは、一歩下がり、改めて歪んだ顔でその場にうずくまった。
ただし、今度は『歪めた』顔である。
「・・っ!ロベルト??」
ヴィンスがロベルトに駆け寄る。
セシルには一瞬、何が起きたのか分からなかった。
「・・麻痺。」
ロベルトのいつもより低い声。
びくん、とその場に静止するヴィンス。
一閃。
崩れ落ちるヴィンス。
「・・え?」
かすれた声と、ヴィンスか、飛び散る血が同時。
返り血を浴びながら、ロベルトは穏やかな顔でセシルを見た。
「・・ああ、大変だ。ヴィンスが怪我をしてしまった。」
内容にあわない薄ら笑いを浮かべながらロベルトが言う。
「あ・・あ・・だめ、血が・・。」
パニックになるセシルにロベルトは重ねる。
「僕も動けそうにありません。セシルさん、『結界から出て来て』手当てしてもらえませんか?」
(ここから出れば、どうなるか分からない。でも、ヴィンスさんの止血をしないと・・。)
「分かりました。止血薬を取ってきます。」
セシルは意を決して家に戻り、自らの足で相手の手に落ちた。
「テレポート。」
ロベルトにより、三人はほの暗い部屋に移動する。
「・・セシル・・さん。すみません・・。」
苦しそうに息をしながらヴィンスが言う。
「大丈夫。止血します。ちょっと痛みますが、我慢してくださいね。」
処置をするセシルを、ロベルトはぼんやり見ている。
(どうしよう?ここはどこかしら?)
止血しながら、セシルは部屋の中に目を走らせた。
見たところ、もう使われていない部屋のようだ。
調度品はほとんどなく、椅子とソファーが申し訳程度にあるだけの、灰色の部屋。
「ロベルトさん。ヴィンスさんをソファーに運ぶのをてつだっていただけますか?」
セシルがそう申し出ると、ロベルトはこちらを一瞥し、くいっと指を動かした。
ヴィンスの体が浮き上がり、ソファーに荒く落とされる。
「うっ!!」
呻くヴィンスに駆け寄り、傷の処置をし直してから、セシルはロベルトを見た。
「・・ロベルトさん。なぜ、こんな・・??」
ロベルトは、虚ろな目でこちらを見る。
「あなたは知らなくていい。ああ、一つだけ言うとしたら・・僕は、あなたが嫌いなんですよ。」
セシルの背筋に悪寒が走る。
(ロベルトさんが、闇に染まっていることは確か。でも、いつ?なぜ?・・どうすれば・・!!)
セシルは無表情のロベルトをただ見つめるしかなかった。




