第24話
「これは・・?」
セシルはその石の欠片を光にかざす。
光を一切通さない、純黒。
「我が輩の核の欠片だ。」
アクタスが言った。
6000年以上、形を保っていたその核は、勇者ルイスによって破損した。
これまでには存在しなかった核の欠片。
核自体には闇の魔力はないが、長くアクタスの一部だったその石は、彼と強いつながりを持っている。
「セシル。勇者は、誰からどのように狙われようと、恐らく傷一つつけられることはない。だが、そなたは違う。勇者の唯一執着するもの。その使い道は計りしれぬ。」
アクタスは言う。
「そなたは狙われやすい、ということだ。だから、我が輩の欠片を身に付けておけ。いざというときは行ってやる。」
アクタスが欠片を両手で包み込み、開くと、ゴツゴツしていたその欠片は、きれいな球体になり、ネックレスに加工されてセシルの胸元に納まった。
セシルは目を見開いた。
「私がいただいてよいのですか?」
アリシア姫に渡すなら分かる。
自分がもらって良いのだろうか?
「アリシア姫は、我が輩が常に側で守っておる。護衛もいるし、なにより姫をさらうのはなかなか困難だ。」
・・以前さらった時、何かあったのだろうな、と察する。
「ありがとうございます。」
素直に礼を言って微笑むと、
「我が輩とて、お気に入りを傷つけられるのは我慢ならぬだけだ。」
と、アクタスはふい、と横を向いた。
耳がうっすら赤くなり、照れているのが分かってニヤニヤしてしまう。
6000歳を越えていても、見た目は五歳の少年。
失礼ながら、可愛い。
「まあ、一番は、隙を見せないことだ。」
こほん、と咳払いしてアクタスがそう言ったとき、にぎやかにアリシア姫とルイスが帰って来た。
「用はすんだのか?」
と尋ねるアリシア姫に、
「うむ。」
とアクタスが答える。
「何の話かな?」
とルイスが聞きたがったが、セシルはなにも言わずそっと胸元を押さえた。
(まあ、いつか分かるだろうけど、面倒だから、説明はその時でいいかな。)
王宮での時間は、そこでお開きとなった。
帰りも町を歩き、たまには・・とルイスがレストランに誘う。
(外食なんて、いつぶりかしら?)
祖母と来たとき以来か。
その頃は、たまに町で食べるオムライスが何よりのごちそうだった。
ルイスとテーブルを囲みながら、セシルは久しぶりのオムライスに、少し感傷にひたりながら、ディナーを楽しんだ。
「セシル。明日は久しぶりに遅くなりそうなんだ。」
家に送り届けてくれたルイスが、去り際に言う。
どうやら、アリシア姫に連れられて王に会ったとき、依頼があったらしい。
「分かりました。ヴィンスさんとロベルトさん、久しぶりですね。」
セシルは答えながら、アクタスの言葉を思い出していた。
「ロベルト、という男に気を付けろ。あやつは、近い将来、闇に染まるぞ。」
予言めいたその言葉は、思いの外早く、現実になる。




