第16話
「この子が親戚の子どもっすか?」
今日はヴィンスとロベルトが来る日である。
アクタスは一応、アクト、と名乗り、セシルの親戚で、引き取り手がみつかるまで預かっていることになっている。
セシルは目の色はグリーン、髪の色はシルバーのため、血縁にしては共通点があまりにないのだが、まあ、そこはちょっと遠縁なので、ということで通すことにした。
「・・ほお。」
ヴィンスとロベルトを見たアクタスが、何かを見つけたようにそう言ったのは気にはなったが、それ以外には特に何もなく、
アクタスも言葉少なに過ごしていたため、変に思われたりもしていないようだった。
アクタスが分かりやすく反応したのは、彼らの会話にアリシア姫が登場した時である。
「・・セシルさん。ルイス様には、自分がなんとかするから言わなくていい、といわれたのですが。」
と、ロベルトが慎重に切り出す。
「近いうちに、アリシア姫がこちらにこられるかもしれません。」
カシャン、と音がしてそちらを見ると、プリンを食べていたアクタスがスプーンを落としていた。
あわてて拾おうとして椅子から転げ落ち、なんとか拾ったあとは頭を机にぶつける。
「大丈夫?」
と、替わりのスプーンを差し出しながら聞くと、
「な、何もない!」
と真っ赤な顔で否定するアクタスに、
(やっぱりアリシア姫のことは好きなのね。)
と思うセシル。ウソがつけない魔王である。
「なんでまた?」
二人に聞けば、
「捨て台詞を言いたいから、ですかね?」
と、ヴィンスから、不穏な答えが返ってくる。
「ええと。捨て台詞、とは?」
「つまり、アリシア姫は、ルイス様を諦めるそうなんです。まあ、僕らも、ルイス様の対魔王戦を見ちゃったので、可哀想ですけどまあ、しょうがないかなあと。」
苦笑いのロベルト。
「魔王城から返ってしばらくは、さすがにかなり落ち込んでたっす。抱きつこうとしたらかわされて、気絶させられて荷物扱いっすからね。女のプライドずたぼろっす。アリシア姫は、ああ見えて、結構繊細っすからね・・。」
「それで、自分の気持ちに区切りをつけるために、セシルさんに会いたいと言い始められて。まあ、もう魔王もいないわけですから外出許可が出そうなんですよ。」
二人の説明は、分かったような分からないような。
「その訪問、受けなきゃだめですか?」
少なくとも、セシルにその義務はないような気がするのだが。
「まあ、アリシア姫は、思い付いた時に、すぐ行動されますからね。逃げるのも難しいでしょうし、ルイス様も多分止められないので。」
いつ来るか分からないのだから、防ぎようがない、というわけだ。
はあ。
セシルは深いため息をつく。
(絶対ろくなこと言われないじゃない。)
しかし、アクタスは見ていられないくらいそわそわとし始め、ヴィンスとロベルトが帰ったあとは、
「この髪型は子どもっぽい。切ってくれ」だの、「アリシア姫はイチゴが好きなんだ。仕入れとこう」だの、挙げ句の果てには、「やっぱり出迎えは椅子の上か?くそ、身長が低すぎる!」だの言い始め、
(面倒なことに・・。)
と、セシルは2倍ため息をつく羽目になるのである。
ちなみに、アクタスは、衣装くらいなら魔力ではなく体の構造上いろいろ変えられるらしく、奥の部屋に込もって一人でファッションショーを始めてしまった。
絶対に面倒なので、とりあえず夜に来たルイスには知らないふりを通しておく。
「何もなかった?」
心配げに聞かれて、
「大丈夫です。お疲れ様でした。おやすみなさい。」
とにっこり返せば、ルイスはまた、シャワーと髪の乾燥だけ見届けて帰っていった。
そして、翌日。
(早いわね、アリシア姫。)
もちろん突然に来たアリシア姫は、相変わらず露出多めのドレスでセシルの家のソファーに腰かけた。
読んでくださりありがとうございます!
ポイントが100を越えて、気合い新たに連載中です。
完結済み小説も、じわじわと読んでくださる方が増えて、作者感涙です。
魔王の運命やいかに?
緩い感じが続きますが、引き続き応援よろしくお願いいたします!




