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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第4章 離界盟約《ワールド・アライアンス》

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     ★  ダークエルフ集落  ★




 飛ぶ鳥を射貫くのは非常に難しい。ましてやその巨体が自分目がけて飛んでくるような状況下なら、なおさら手元が狂う。

 さらには1羽への集中射撃ならば仕留められたものの、全方位から滑空してくる初夏鳥を相手にするのは不可能だった。


「右ィ!」

「ダメダ、当たらん!」

「伏せろ!」


 例えるなら大型車だけが走る高速道路に突っ立っているようなものだ。しかもその大型車は四方八方からやってくる。

 いくら屈強なダークエルフとはいえ、相手のサイズが自分たちの数倍、数は数十倍となれば翻弄されなぶり殺しにされるのは当然の結末だった。

 暴風に巻き上げられて転び、羽根先が当たって腕を折り、爪を引っかけられて空中に放り出される。

 初夏鳥は炎を纏っているので周囲はたちまち乾燥し、ひりつくような熱気が立ちこめる。

 もちろん初夏鳥とて無事ではない。個体同士がぶつかってぴくりとも動かなくなったものもあれば、木に激突してふらふら飛び去ったものもある。

 それでも初夏鳥は攻撃を止めない。

 ここにいる者どもを根絶やしにしてやる——という、個ではなく群としての意思を感じる。

 倒すか、倒されるかなのだ。

 その二者択一で言えば、ダークエルフは極めて劣勢だった。


(魔法、私が魔法を使えば、倒せるかもしれません)


 アナスタシアは自分の【火魔法】が並々ならぬ威力を持っていることを自覚している。

 同じ火を扱っている初夏鳥であっても、自分の魔法は通用する可能性が高い。


(でも——ハイエルフの私が、【火魔法】を使ったら……)


 ダークエルフたちはどう思うだろうか。

 森の住人にふさわしくない、強烈な炎を自分が発したら……。

 それでも、座して死を待つくらいなら……。

 いや、調査に出ているダークエルフたちを待てば……。


「チクショウ! 薄汚い火で家を燃やすんじゃない!」


 樹上集落ではいくつかの小屋が煙を上げていた。滑空する初夏鳥の炎が引火したのだろう。

 見れば、焼き切れているロープもいくつかある。

「薄汚い火」という言葉が、アナスタシアの胸を刺した。

 出かかった声がそこで縫い止められた。


「大丈夫、ハイエルフ様はアタシたちが守るから」


 アナスタシアのそばに立って冷静に矢を放っているニッキが言う。


「もう少し待てばノックたちが帰ってくる。そうしたら、こんなヤツらブチ殺してやるさ」


 ニカッと笑ってみせたニッキの横顔を、通り過ぎた初夏鳥の炎が照らし出す。

 だがノックたちが帰ってくるのはどれくらい先か。調査に手間取っているのなら夜遅くということもあり得る。

 逆にダークエルフたちはどれだけ持ちこたえられるのか。


(レイジさん……!)


 神に祈る思いで、レイジの名を心に叫んだ。

 しかし彼は昨日の早朝に出て行った。自分たちが竜人都市からダークエルフ集落までやってくるのに掛かった時間は、2日半。なにかを忘れたとか、予想もしなかったような事情でもない限りレイジが来ることはないとアナスタシアの冷静な部分が推測する。

 レイジは来ない。

 そう認めるのが、イヤで、アナスタシアは唇を噛む。


「ハイエルフ様!」

「!?」


 ニッキの鋭い声で我に返ると、初夏鳥がこちらに向かって一直線に飛んでくる。

 横から強い力ではね飛ばされる——ニッキの力強い腕がアナスタシアを遠ざけたのだ。

 ニッキは横目でアナスタシアを見た、ニヤリ、と笑ったように見えた、と思うと、


「ニッキさん!!」


 直後には初夏鳥が突入してきてニッキの身体ごと空へと舞い上がる。彼女の手にしていた弓が地面に落ちてくるんと回って倒れる。


「おらあああああああ!!」


 ニッキは初夏鳥の左羽根の根元に食らいついていた。初夏鳥の炎が彼女の肌を焼く。けれどそれに負けず、腰からナイフを引き抜いたニッキは、初夏鳥の目にナイフを突き刺した。


『ギィィッィイイイイ』


「生意気に苦しがってんじゃねえよ!」


 抜く、刺す、抜く、刺す、抜く、刺す。

 イヤイヤと首を振って嫌がる初夏鳥は、炎をさらに燃え上がらせて、錐もみ状に飛んでさすがのニッキも中空に投げ出された。

 すでにニッキは大木の上空にあった。


「あぁっ……!」


 初夏鳥は回転しながら墜落していくが、ニッキの身体は離れた大木に突っ込んでいき、葉に隠れて見えなくなった。

 落ちて、こない。

 生きているのか死んでいるのかわからない。


(私を、かばってくれた……私の身代わりに、なった……)


 地べたに尻餅をついたままのアナスタシアは、ニッキを思う。


(私のために、ニッキさんは……!)


 自分はなにを気にしていたのか。

 嫌われること?

 恐れられること?

 蔑まれること?

 憎まれること?


(なんという、なんという自分勝手な……!)


 声を封印されても、ただの「お飾り」として扱われても、自分はハイエルフの王族だという誇りがあったではないか。

 だからこそ、空からモンスターが降り注ぐレフ魔導帝国で魔法を使い、レイジを守った。


(あのときの思いを忘れたの?)


 ダークエルフたちが自分をハイエルフと扱ってくれることにいい気になっていた?

 レイジがいつも守ってくれるから自分はなにもしなくていいと思っていた?


「私は、アナスタシア」


 違う。

 この魔力は誰かを守る力。

 王族である誇りがあるのなら——いや、自分のために戦ってくれた族長やダークエルフたち、自分のために盾になってくれたニッキに寄せる想いがあるのなら。


「ハイエルフの王族にして、エルフを率いる者!!」


 嫌われようと、恐れられようと、蔑まれようと、憎まれようと。


「我が魔力の餌食となれ——」


 敵対するすべてを、焼き尽くす。

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― 新着の感想 ―
[一言] そう、この展開を待ってました! アナスタシアが奮起する展開を!! 続きがたのしみです!
[一言] 爆裂魔法とかを習得しそうで怖い
[一言] 我が名は、メグミ○?
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