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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第4章 離界盟約《ワールド・アライアンス》

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 僕の言葉をただの戯れ言だと判断したのだろう、彼女が振り下ろす剣は速度を増した。


「速いなあ! 適当に振っているだけだったから、単に天賦を得ただけの人かと思ったけど、ちゃんと剣術できるんじゃないか!」


 飛来する斬撃を飛び越え、くぐり抜け、横っ飛びでかわしながら僕が叫ぶと、


「っ! うるさい!」


 イラついたようにスーメリアの剣速は増す。

 でも、それだけだ。

 最初からかわすつもりで見ていればたいしたことはない。


「——うわあっ」

「——スーメリア! バカかよ!? こっちへ向けるんじゃねえよ!」


 僕が走り回っているのでとばっちりが地底人たちへと向かったらしい。


「うるさい、黙れ、ハァッ、うるさい、ハァッ、ゼェ、黙れ、ハァッ、黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!」


 横薙ぎに振るわれた斬撃をひらりと飛んだ僕が着地するとき、


「!」


 スーメリアは猛ダッシュでこちらへ突っ込んできた。


「アアアアアアアアアア!!」


 大上段からの振り下ろしはなかなかの速度。

 でもまあやっぱり、それだけだ。

 コンパクトにまとまった曲刀の剣筋はなかなかよいけれど、僕だって、クルヴァーン聖王国のトップレベルである聖王騎士団の訓練をこの目で学習してきたのだ。

 それなりの修羅場だってくぐってきたのだ。


「——うおっ、アイツすげえ!」

「——スーメリアっつったらあの、『剣の申し子』のスーメリアだろ?」

「——天賦がなくともつええって話だが、それをかわし続けるアイツは何者なんだよ……」


 次々に繰り出される攻撃は、二刀流という特性もあって手数が非常に多い。

 だけど見切ることは問題ない。彼女の手の長さ(リーチ)、踏み込み速度、リズム……僕はステップを踏むようにかわしていく。


「ハァッ、ハァ、ゼェ、ハァッ!」

「こんなものなの? まだまだなんだろ! 本気出せよ!」

「!!」


 苦しげなスーメリアはますます速度を上げる。僕は【舞踏剣術★★★】という天賦を学んでいる。これはその名の通り、踊るように戦う剣技で、速度が上がれば上がるほど、僕のステップもキレを増す。


「——な、なんなんだこれは……」

「——俺らはなにを目撃してンだよ……?」


 近寄れない地底人たちの呆れたような声が聞こえてきて、そこに、「何事だ」「元帥!」なんていうやりとりまで混じってきた。

 元帥——ということはお偉いさんが出てきたってことか。


(じゃあ、そろそろ終わりにしなきゃいけないかな——)


 僕がスーメリアへと一歩踏み込もうかと思ったときだった。


「!!」


 振り下ろされた右手の一撃を、半身を開いてかわした瞬間、剣がピタリと止まったのだ。


「フッ」


 汗だくのスーメリアが笑った——いや、ほんのかすかに口の端をゆがめただけに過ぎなかったのだけれど、笑ったのだ。


「死ね!」


 笑顔で言うにはその言葉はどうなの? と言いたいところだけれど、左手の曲刀をこちらに向かって突き出す——そこには斬撃をのせてある。

 この至近距離、斬撃ならば広範囲の攻撃が可能。僕は正面から受けなければいけない。

 最初の1回以降、僕が剣で受けていないのに彼女は気づいているのだ。

 もう、剣で受け止めることができないのだと。

 そして魔法では受け止めきれないのだと。


(頭まで回るんだ。すごいな、この人——)


 だけど、僕はさっき言った。

 僕なら「両方クリアできる」と。

 君の能力を理解し、君以上の能力を持っていると。


「僕だって使えるんだよ」


 僕の振るった短刀には、無数の細かな斬撃がまとわりつき、それをひとつの塊として射出する。

 それは寸分違わず、彼女と同じ斬撃だ。


「!?」


 スーメリアの顔が驚愕に染まる——瞬間、斬撃同士が激突し、無数の爆薬が誘爆するかのように衝撃波が膨れ上がる。

 耳元で風船を割られたような爆音とともに周囲の空気が震える。

 だけど——そのときには僕らは10メートル以上離れた場所にいた。


「ふう……」

「!?」


 湧き起こった暴風が僕のフードを飛ばして顔が出てしまう。

 僕の【花魔法】でツタを伸ばし、近くの廃墟——スーメリアが破壊した倉庫だけど——へと爆発の直前に移動した。

 あの瞬間、虚を突かれたスーメリアは隙だらけになっていて、彼女の襟首をつかんでいっしょに避難するのは簡単だった。

 なにがなんだかわからない——という彼女の頭を、僕は両手でがしっとつかんだ。


「覚悟しろ」


 ハッ、と凍りついたスーメリアに、僕は全神経を集中させる。

 僕は彼女の身体から引き抜くことをイメージする。

 天賦珠玉を、抜くのだ。

 つかんだ、と思った。あとはこれを引っこ抜くだけなのだと思った。

 だけれど、


「あ、あああ、ああああああああああああああ!?」


 白目を向いて、大声を叫ぶ彼女の口からはよだれが垂れる。

 固い。根を張った木を抜くように固い。


「がああああ!」


 武器を取り落とし、僕の手首を両手でつかみ爪を立ててくる——めちゃくちゃ痛い。

 めり、めりり、と少しずつ天賦珠玉が彼女の額から出てくる。

 淀んだ水たまりに張った油膜のような、虹色の天賦珠玉だ。


(ごめん、我慢して)


 心で謝り、僕はさらに引き抜く。

 さっき、彼女の天賦を真似して斬撃を放ったとき——僕はこのデタラメな力の反動を感じ取った。

 脳の中に、割り箸を突っ込まれたような鋭い痛みと強烈な不快感。

【森羅万象】によればそれは、「記憶の喪失」につながるものだという。

 だけれど僕には【森羅万象】があり、「忘れられない」体質であるためにその反動と抗うことになって拒絶反応が起きていた。

 もし【森羅万象】がなければ、単にふわっとした快感が与えられただけらしい——。


(人間性を喪失させる天賦は、害毒だ)


 それで強くなったとして、いったいなにが残るのか。


「うおおおおおおッ!」

「ああああああああ!?」


 僕は天賦珠玉を引っこ抜いた——そこには、【狂乱王剣舞(インセインブレイド)★★★★★★】と書かれてあった。

 白目を剥いたスーメリアは前のめりに倒れ、僕は彼女を支えながら地面に横たえた。


【問い】天賦珠玉【狂乱王剣舞★★★★★★】をどうするべきか?


ア)持って帰る

イ)壊す

ウ)自分で使う

エ)キミドリゴルンさんに使う

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あとがきの4択で笑った
きみどりごるんさんに使おう!
[一言] エ以外あり得ないから
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