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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第4章 離界盟約《ワールド・アライアンス》

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 翌日、僕はアーシャとともに「竜人族長老会」へと向かった。

 向こうは【回復魔法】とチョチョリゲスの寄付へのお礼をしたく、こちらはようやく聞きたいことをいろいろ聞ける。

 長老会が行われる場所は、木造で、円形の建物だった。入ってすぐの1室しかなく、イスが7脚横に並べてあった。

 赤、青、黄……と7色の長老が座っている。面接会場みたいだなと一瞬思ったのはナイショだ。


「おお、よく来てくれたぬろ」


 立ち上がってわらわらとやってきた長老たちにもみくちゃにされながらひとしきりの挨拶と感謝をされ、僕とアーシャはようやく7脚に向かい合わせの2脚のイスに座った。


「畜産についての話をしてもいいかね? どうも、君にもなにか話があるようだが……」

「構いませんよ」

「実は過去に竜人都市でも畜産をしようという話はあったぬろ。だがそれが軌道に乗る前に、竜人都市は崩壊したんだ」

「……崩壊?」


 いや、ここに竜人都市あるじゃないか、と思ったけれど、


「この1つ前の都市ぬろ」

「いや。2つ前ではなかったか? 1つ前は短かった」

「それだと40年前になるぬろ……いや、そうか、2つ前か」


 長老たちがなにかそんなことを話している。


「あの、もしかして……この都市って何度も、その、崩壊しているのですか?」

「それはそうだ」


 当然だろ、というふうにうなずいている。


「ああ——そう言えば地底人とダークエルフは同じところに長く住む習性があったな。彼らは樹上や山の中と、モンスターに攻め込まれにくいところに住んでいるからなあ……」

「竜人都市は過去に、モンスターと戦って……崩壊したということですか?」

「うむ。長くても50年は保たない。短いと数年ぬろ。そうなると畜産をするよりも野生動物を狩ってきたほうがいいではないかという話になる」


 僕は驚いて言葉を失った。

 竜人都市、という名前があり、かなりの竜人が住んでいるのだから長い歴史があるのだと勝手に勘違いしていた。


(それほどにモンスターとの戦いは熾烈なんだ)


 都市を破壊されてしまうほどには……。


「すみません……僕はそこまで知らずに、なにも知らずに、チョチョリゲスの絶滅の危機だとか、畜産の話だとか……してしまいました」


 自分のあまりの無神経さに暗澹たる気持ちになりながら、僕は謝った。都市が破壊されているのに、そのたびに不死鳥のごとくよみがえっている彼らに、さらに「他の種の存続」まで気を配れというのは酷だ。


「いやいや、頭を下げなくてもいいぬろ。むしろ感謝しているんだ」

「感謝……ですか?」

「我らは食料とみれば獲り尽くしてきた。しかし巣を残しておきながら『間引く』ようにすれば安定的に肉を確保できる——それは簡易的ながらも畜産の発想ではないかぬ?」

「それは、そうかもしれませんが……」

「巣が見つかるとどうしても一網打尽にしてみたくなってなあ」


 わはは、と笑う緑の長老に、他の長老たちもうなずいている。

 僕の言ったことなど思いつきそうなものだ。でも彼らは明日にも都市が破壊されるかもしれないという危機的状況の中で、多くの食料を短時間で得る方向へと考えがどんどんシフトしていった。


「それは——多くの食料を仲間のために持ち帰りたいというのは当然のことかと思いますわ」


 アーシャが言うと、紫の長老がにっこりとする。


「ああ。だが、我らも方針の転換があってもいいぬろ。いや、巣を維持しながら安定的に肉を得るという方法は、何度都市を破壊されたとしても、引っ越し先(・・・・・)で使える方法ではないか?」


 僕はさりげなく言われたこの一言に、心を震わせた。

 この人たちは、都市の破壊すらも自然に起きうることの一部として受け入れている。

 雨が降って芽が出るのと同じことだと。

 大風が吹いて屋根が剥がれるのと同じことだと。

 陽射しが降り注ぎ、月が昇るのと同じことだと。

 モンスターに何度襲われても、その都度、方針を変え、考え方を変え、新しい発想を取り入れつつ、何度も何度も竜人都市を再建してきたのだ。


「もしこのような形の畜産について知識があれば、少しでも教えて欲しいぬろ」


 長老たちは一斉に頭を下げる。

 そして僕のような、違う種族の、見た目が明らかな子どもであったとしても、教えを請うことにためらいがないのだ。


「あ、頭を上げてください。僕らの知っていることなんてたいしたことではありませんが——」


 すごい人たちだ、と思った。

 昨日のキミドリパパや他のみんなの反応を見てもすごいと思ったけれど、長老たちはさらに人格者なのだと思った。

 僕とアーシャはそれぞれ、畜産について知っていることをありのまま、すべて伝えた——。




 話は盛り上がり、昼食を挟んで、改めて長老たちと向かい合った。

 昼食はクレープというか、ナンというか、小麦粉の生地に野菜や肉をくるんだものだった。強烈な香りがする香辛料を使っているので食欲を刺激され、僕は1つお代わりしてしまったほどだ。


「さて、今度は君たちが聞きたいことを答えようと思うぬろ」


 僕はアーシャと視線を交わし、うなずきあった。

 信じてもらえるかはわからないけれど、正直にすべてを話してみようと思ったのだ。


「実は——」


 僕は長老たちに洗いざらいすべてを話すことにした。

「表の世界」と「裏の世界」のこと。

 こちらの世界へとやってきてしまったこと。

 最初は半信半疑という感じだったが、ある一点に言及したときに長老たちの表情が変わった。


「……ちょっと待ってくれぬろ。君たちは空に吸い込まれたと言ったが、他にも同じように吸い込まれた者がいる……と?」

「ええ。大量のがれきに、軍用の飛行船が2艇は確認しました。ああ、飛行船というのは船によく似た形ですが家を数軒つなぎ合わせたくらいに大きいもので……」


 すると長老たちの数人がひそひそと話をしている。


「……どうかしましたか?」

「ふむ」


 青の長老がひげをしごきながら言った。


「実はな、先ほど我らも聞いたのだが、遠征に出ている間に反対方向の森の中で、巨大な船のようなものを発見したという情報が入ってきていたようなのだ」

「!」


 思わず僕は腰を浮かせた。


「それは——飛行船だと思います」


 飛行船があるのならば、空を移動できる。もしも向こうの世界に帰るには同じように空の亀裂に入らなければならないのなら、空を移動できるのは大きなアドバンテージだ。

 それがなくとも、移動能力を確保できるだけですさまじいメリットになる。


「君の話を聞いている限り、そのようだぬろ。明日、偵察部隊を派遣する予定だよ」

「僕らも同行して構いませんか?」

「構わないが……」


 青の長老は言葉を濁した。


「……その船のようなものはモンスターに襲われ、ほとんど破壊されていたようなのだ。見上げるほどに巨大なヤギ(・・)である『森喰い山羊(フォレストイーター)』が現れたようでな……」


 僕の脳裏に、記憶がよぎった。

 空に走った亀裂の向こう——ヤギの目が僕らを見下ろしていた……。


土日がいちばん忙しい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] さらっとアーシャが普通に喋ってますけど、慣れたんですかね? [気になる点] 巨大ヤギって不気味...
[一言] 面白いです更新ありがとうございます!
2020/08/03 08:32 退会済み
管理
[一言] どの世界でも巨ヤギは恐怖だなぁ…。^^
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