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すみませんんんんんんミルコの名前をミミノに変えました。諸事情で。申し訳ない。(平謝り)
……さて。
別途連載しておりました「学園騎士のレベルアップ!」が本日から双葉社がうがうモンスターにてコミカライズ始まりました〜! やったぜ。
小説とは違う魅力があるコミカライズも是非お楽しみください。
あと、今日はこのオバリミ3話更新しているのでお気をつけください。
「でっか……」
領都ユーヴェルマインズは高く積まれた石による城壁がぐるり取り囲んだ都市だった。僕が左右を見ても、どこまで広がっているのかわからないほどの壁だ。
中に入りきらない家が城壁の外に並んでいるけれど、これは単なる住居だけではなく領都を目指してやってきた旅人を相手にした商店や宿でもあった。
そんな商売が成り立つほどに、領都に入るには時間が掛かる。城門が豆粒ほどに見える位置からずらりと人々が列をなしている。
並んでいるのは旅人、商人、引っ越しのように家財を持ってきた人たち——と様々だ。時々列をすっ飛ばして駈けていく領兵の馬を、みんな恨めしそうに見ている。
「ん〜〜これだと入れるのは明日になるべなぁ」
「チッ、しょうがねー。そこら行って獣でも仕留めてくら」
ライキラさんがそう言って列から離れようとすると、
「おっ、獣人の兄ちゃん、狩りかい? ハマダラ鳥を仕留めたら譲ってくれよ。金ははずむぜ!」
と前に並んでいた商人が声を掛けた。
「あぁ? やだよ。アンタ、こすっからそうな顔してやがる」
「おいおい、商人なんてこすっからくてナンボだろう」
「言うじゃねーか。まあ、見つかったらな」
そんなこと言いながらライキラさんは草原を突っ切って森を目指した。
獣人にも差別がある……みたいなことを覚悟していたのだけど、この商人さんは特に気にしたふうもなかった。
「ハマダラ鳥というのはな、身体に草の葉をくっつけた鳥で地を歩いている。だが擬態がなかなか見事で、これを仕留められるのは嗅覚の優れた者だけなんだ」
ダンテスさんが教えてくれる。するとその横で、娘のノンさんもうっとりとし、
「ハマダラ鳥は冬を越えてから夏にかけてとても脂がのるんです。美味しいんですよ……せめて1羽、いえ、贅沢は言わないので脚1本でも獲ってきてくださるといいんですけど」
脚1本とれたらすでにその鳥は死んでいるか動けないのでは……?
「まあ、待つべな。こういうときのライキラはきっと期待に応えてくれるものだ」
「お。それは楽しみですなあ」
気がつくと商人と販売交渉をしていたミミノさんがそんなことを言い、商人もにこやかに言った。
結果、1羽どころかなんの成果も得られずにとぼとぼとライキラさんが帰ってきたのは夜も更けてからだったけども。
食べてみたかったなあ、ハマダラ鳥。
変わらぬ干し肉を食べて僕らは野宿だ。干し肉美味しいです。
朝日が昇ると、夜間には閉じられていた城門が開く。お昼を過ぎたころ、僕の目にはそびえ立つような城壁と城門が見えてきた。城門、とは言っても、部材の1本1本が丸太を使った木の柵を下ろしていただけのようだ。
中に入るのが遅いのは税金の徴収が行われているからだ。旅人はひとりあたり銀貨1枚でおよそ1,000円ほどの金額を払う。商人は商品内容に応じて税金が掛かるので——商人の商品査定に時間が掛かるらしい。
分けてくれればいいのにねえ……。空港の税関だって外国人と国民とで分けてるしね。
「次」
ようやく僕らの番だ。
鉱山兵とよく似た、とんがった兜をかぶった領兵が僕らを呼んだ。彼らは身体には鎖帷子を装備していて、武器は短槍だった。
「パーティー『銀の天秤』です」
「なんだ冒険者か。さっさと通れ」
ミミノさんが鉄製のカードのようなものを差し出すと、領兵は一瞥しただけで僕らを奥へと通す。んもう、こんなんで済むならさっさと入れてよね。
それにしても、これでやっと領都だ。こっちの世界にやってきてから初めての大都市だ——。
「——ちょっと待て」
横を通り抜けようとした僕の腕が、つかまれた。袖が少しめくれて入れ墨の痕がはっきりと見えてしまっている。
マズイ——。
僕は心臓が跳ね上がった。
ライキラさんがそろりと脚を動かし、ダンテスさんが腰の短刀に手を掛けるのが横目に見えた。
そしてその向こう、先頭を進んでいたミミノさんが、大きく目を見開いて領兵を見据える——ぞわりと彼女の魔力が、彼女の髪の毛を持ち上げていく。え、待って待って待って! なにしようとしてるの!?
ダメだよ! 僕のためにみんながトラブルに巻き込まれるなんて!
「……なんだ奴隷か」
と思っていると、領兵はその程度の反応だった。
「子どもだから冒険者ではないだろうとは思ったが……奴隷は旅人と同じく銀貨1枚の税金が掛かる」
「そうなのですね、知りませんでしたわ」
するりとみんなの前に出てきたノンさんが、領兵に銀貨を手渡し、その手をそっと温かく包んだ。「お、おう」なんて言いながら領兵はちょっと顔を赤らめ、ノンさんの胸をガン見していた。
「君は修道女では……?」
「はい。ですが今は冒険者として活動する特別な許可を教会から得ております。こちらが私の冒険者証です」
「う、うむ。確かに」
「お務めご苦労様ですわ。さ、行きましょう」
ノンさんに促されて歩き出した僕らは、入ってしばらく進んだところで道を曲がって路地裏に入った。
「——お父さん、ライキラさん、それにミミノさんも! なんですかあの殺気は!?」
ノンさん、怒る。
だよね。あれ、確実に殺気だったよね?
「いざとなったら『パーティーで購入した奴隷だ』と主張する約束だったでしょう!? それを、ちょっとした計画外のことで殺気を出すなんて! もう!」
「す、すまん。出だしがうまくいったもので、つい……」
「……悪りぃ」
「…………ごめんなさい」
「あそこでもめ事になったら領兵全部と戦うことになったんですよ! たぶん、殺気には何人か気づかれてたはずですよ!」
知らなかった。みんなはちゃんと僕について呼び止められたらどうしようかということまで話し合っていてくれたんだ。
ダンテスさんはぺこぺこと謝り、ライキラさんはばつが悪そうにそっぽを向き、ミミノさんは今にも泣きそうだった。
「わ、わたしのせいでレイジくんを危険な目に遭わせたかもしれなかったんだべな……」
「ちょっ、ミミノさん、大丈夫ですから、大丈夫、ちゃんと街に入れましたし! ね? ノンさんも怒ってるわけじゃないですよ」
「もっ、もちろんです。……ごめんなさい、私もちょっと動揺していたようです」
ノンさんもぺこぺこと頭を下げた。その仕草があまりにダンテスさんにそっくりで、ふたりはやっぱり親子なんだなとしみじみ感じた。
僕は——幸せ者だ。こんなにもいいパーティーに拾ってもらえて……。
じーんとしている僕は、ここからさらに幸せが待っているとは思いもしなかった。
なんと泊まる宿には温泉がついていたのだ。
さあ、次は温泉回だ!(立ちふさがるR-15規制)




