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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第1章 旅立ちは密やかに、人知れず。出会いは密やかに、導かれる。

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本日3話目ですのでお気をつけください。

「銀の天秤」は強かった。控えめに言っても、森の中では「敵なし」だ。

 森の暗い夜に僕が怯えて震えていた相手の野犬——茶色い毛皮の狼と犬のあいの子みたいなモンスターも彼らにとってはたいしたことのない相手だった。これは「チャコールウルフ」と呼ばれるモンスターらしく、鋭い嗅覚で人間の接近を把握すると、群れとなってまず人間を遠巻きに囲む。人間が気づいたときには遅い。圧倒的数の差で迫ってこられ、食い殺される。

 だけれどライキラさんの嗅覚はチャコールウルフと同等(本人が言うには「あ? もっとすげぇけど?」とのことだがダンテスさんからすると「同等」)で、チャコールウルフが人間に気づくころにはライキラさんも気づいている。向こうが群れを作る前にライキラさんが接近して倒してしまう。

 ライキラさんの戦い方はかなり尖っていた。敵だとわかると音もなく走り出し、接近するや相手の機動力を奪うべく足元にキックを入れる。少しでも素早さが落ちたら、しめたものだ。翻弄するだけしまくって、ダガーで仕留めるもよし、蹴り殺すもよし。


(……【脚力強化★】のスキルがあるのかな? あるいは【蹴術★★】?)


 天賦珠玉に関してはちょっとばかし詳しい僕は、思いつく範囲で考えてみた。

 僕は彼の動きをじっと観察した。十分過ぎるほどに。休憩時間にこっそりと真似てみるのだけれど、彼の動きをコピーすることはできなかった。僕が想像するのとはまったく違う天賦珠玉を取り込んでいるのかもしれない。

 うーむ、スキル、奥が深い……。

 あの落ち葉を踏んでも音を鳴らさないのもそうだ。なにかのスキルかと思ったけれど真似できないってことは、彼が自分で身につけたテクニックなんだろうか?

 勝手にスキルをコピーすることには少々もやっとする部分もあったけれど、僕がこの世界で生きていくのに必要なことなのだからと割り切った。完璧にコピーできるわけでもないし、むしろ足手まといの僕が多少でも「使える」ようになったほうが「銀の天秤」にとってもいいことだろうし。


「見ての通り、ライキラは口が悪いけども、動物系モンスターが相手ならば圧倒的に強いべな」

「あの……ミミノさん。ライキラさんがパーティーに入る前はどうやって戦っていたんですか?」

「わたしの魔法で敵を感知していたね。だけどそうするといざってときに魔力が足りなくなったりするし、1日の行動時間も少なくなる。だからライキラがいてくれて助かるんだ」

「そうですか……魔法か」


 敵の位置を把握するような魔法があるのだろうか。

 この世界には魔法が存在するが、「魔力」を消費する魔法は「魔法特性」の天賦珠玉に連なる8種類の魔法と、「神秘特性」に連なる2種類がほとんどだ——とヒンガ老人が言っていた。

 ほとんど、というのは「ユニーク特性」などに例外があるからだ。ミミノさんの使える【生活魔法(コンビニエント)】もそれで、僕は少量ながら水を生み出したりすることに成功していた。これは便利。


「……僕も魔法を使えるようになれば、多少は役に立てますか?」

「いいんだいいんだ、レイジくんは戦わなくとも」

「でも、タダ飯食らいでは気が引けます」

「——そうだぜ。働かざる者食うべからずってな、なんか仕事やらせろや」


 チャコールウルフを仕留め、戻ってきたライキラさんがそう言った。ミミノさんは露骨に顔をしかめる。


「子どもにやらせることないべな」

「子ども子どもっつうけどなぁ、この森の中じゃ子どもも大人もねーんだよ。なにもできねーガキは狼に食われて死ぬだけだ」

「うむむ……」

「ライキラさんの言うとおりです。自分の身を守る意味でもなんとかしたいです」

「……レイジくんがそこまで言うなら、わたしの知っている魔法を教えようかねぇ。でもな、魔法の才能がなければ違うことにするよ?」

「はい! それで構いません、ありがとうございます、ミミノさん。それにライキラさんも……」

「チッ」


 舌打ちしたライキラさんは僕らに背を向け、仕留めたチャコールウルフの皮を剥ぐようだ。「肉は臭くて食えたものではない」とダンテスさんは言っていたけれど、皮は売り物になるのだとか。

 ライキラさん……これはやっぱりアレだ。ツンデレだ。ツンデレだと思うと「しょうがないなぁ、またツンが発動したのか?」と思って微笑ましい気持ちになれるから不思議。だけど細マッチョ獣人のツンデレとか僕にはノーサンキュー。


「それじゃ、わたしの魔法について説明するね」

「あっ……」

「ん?」

「その……スキルのことについて聞いたりするのは、もしかしてマナー違反だったりしますか?」

「初対面で聞くのはマナー違反だけどな、同じ仲間内だったら構わないべな。レイジくんはなにかスキルがある?」

「……僕は、その……」


 どうしよう。【森羅万象】のことを話したら、必然的に転生の話もしなきゃいけなくなる。話して信用してもらえるだろうか? というか星10の天賦珠玉を使ったことが漏れたりしたら、必然的に僕は鉱山にいたことがバレ、さらにはそれを勝手に使って持ち出したことまでバレてしまうんだよな……。


「あっ、いいのいいの。今度レイジくんになにか天賦珠玉を買ってやるから、な? スキルがなくても気にする必要はないっ!」


 僕が戸惑っていると、「この子はスキルもない子」と認識されたみたいだ。その認識はほとんど合ってはいるんだけど、かといってミミノさんの中でさらに「かわいそう」ポイントが積み重なるのはいたたまれない。


「わたしのスキルはね」


 と、ミミノさんは地面に枝で文字を書いた。そこにはミミノさんの持っているスキルがずらりと並ぶ。


【魔力強化1・魔法適性強化1・魔力操作1・花魔法2・土魔法2・生活魔法1】


 おお……魔法型冒険者だ。やっぱり、と言うべきか。

【花魔法】と【土魔法】は「魔法特性」に連なるスキルである。

 僕は【火魔法】を少しだけ使えたけれど天賦珠玉を通じて覚えるほうが圧倒的に効率はいい。


(とはいっても、星2つの天賦珠玉を買えるお金なんてないし、今の僕にはミミノさんから教えてもらうのがいちばんいいよな)


 ヒンガ老人が言うには、星2つの天賦珠玉を買うにはおよそ大銀貨10枚。

 日本円で、10万円くらいだ。

 それで魔法を買える(・・・)なら安いようにも感じるけど、適性がなかった場合にはほとんど使えないし、貴重な枠を2つも消費してしまう。


「まずは、こうっ」


 ミミノさんが手をかざすと、木の枝に突然花が開いた。


「【花魔法】は花だけでなく樹木を扱える魔法だからねえ、こうして自然のいろいろなものに影響を与えられるんだよ」

「なるほど……」


 僕は今見た魔法の発動をしっかりと記憶する。

 そして同じように手をかざし、


「こうっ!」


【森羅万象】の力を借りて魔法を発動する——と、


「ええええ!?」


 枝からはバババッと大振りの花が3つも咲いた。


「す、すごい、すごいべなレイジくん! 君は才能が——」


 僕はミミノさんの言葉を最後まで聞くことができなかった。なぜならその場にぶっ倒れたからだ。


コロナ騒ぎがまだ一段と大きくなってきましたが、私にできることはこうしてお話を書いて皆さんに届けることだけなんだよなぁと。

だからこそ厳しい状況ながらも人と人との触れあいが温かいようなお話を書きたくなったのかもしれません。

そして物語としては次のフェイズに移り、だんだんとレイジくんが成長していく萌芽が見えてきたところです。


今この状況を思うと小説ってのはいいですね。誰にも会わずにひっそりと楽しめる。

皆さんもお気をつけください。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] スキルを覚えても適性がなければ魔法は使えないのか。じゃああのおばちゃんは運良く魔法の適性があったって事なのかな?魔法の適正があるかどうかは事前の訓練でわかるのだろうか?分からなかったら…
[気になる点] 大銀貨を1万円に例えるのなら、銀貨1枚1000円で「街」のレストラン3食分と設定したのは失敗ではありませんか? 食材を大量生産、低コスト輸送できる地球よりも、材料費がかかっているであ…
[気になる点] 森羅万象の事を話したら転生についてまで話さなくちゃならない、てのがよく分かりません。主人公は隠し事にものすごく罪悪感感じるタイプなんですかね
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