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限界超えの天賦《スキル》は、転生者にしか扱えない ー オーバーリミット・スキルホルダー  作者: 三上康明
第3章 黒き空賊は月下に笑う。赤き魔導は星辰に吠ゆ。

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 いや、いやいやいや、なんでなんでなんで!? なんでクルヴァーン聖王国から来たってこと知ってるの!? ていうか「国難」って話がだいぶ大きくなってるんですけど!

 ちょっと待て、落ち着け僕。向こうが情報網をしっかり持ってて、僕のことを調べ上げたとしてもやましいことなんて……。


 スィリーズ伯爵家のお嬢様の誘拐未遂。

 エベーニュ公爵家の100人と交戦(道路破壊のオマケつき)。


 あぁ〜〜出がけにやらかしただけでも、やましいところがあるぅ〜〜!!


「——クッ」


 僕がなんと答えるべきか頭の中でぐるぐるぐるぐる考えていると、


「クハハハハハッ! なんだえ、その顔は。はぐらかすにせよ、認めるにせよ、そのような動揺は見せぬものよ。それではあたかも『そこは自分の弱点』と言っているようなものぞ。クハハハハハ」


 皇帝は手すりをバンバン叩きながら笑っている。

 その様子にきょとんとしたのは僕だけじゃない。斜め後ろにいるアナスタシア殿下も、秘書っぽい人も、居並ぶ偉そうな人たちも虚を突かれたように皇帝を見ていた。


「ああ、笑ったぞ。笑った笑った——そう、構えるでない。今のはちょっとした意趣返しと、かま(・・)掛けよ。お前が腹に一物抱えておるのなら、揺さぶりをかければなにか出るだろうと思っておったが——はてさて、ただの14の子どもであるようだえ。安心もするが……いや、それはよかろう」

「…………」

「さあ、これで話は終わりよ。下がれ」


 どうするべきか、迷った。どうやって僕のことを知ったのかとか、クルヴァーン聖王国になにか言われているのかとか、気になることはいっぱいだ。だけどここは黙って下がるのが得策だろう。

 すでにアバなんてじりじりと後ずさりしてるし。

 僕とノンさんは立ち上がり、深々と一礼して謁見の間を出た——。




「つっかれたぁ〜〜〜〜〜〜〜」


 気の抜けないやりとりが終わり、魔導自動車で迎賓館に戻り、僕とダンテスさんの部屋に戻ったところでようやく心が緩んで一気に疲れが出た。ばふっ、とベッドにダイブする。迷宮での疲れも残っているのに、そこに加えて皇帝との謁見だからめちゃくちゃしんどかったよ……。


「お疲れ様でした、レイジくん。精神安定の【回復魔法】を掛けましょうか?」

「お願いできますか……? ていうかノンさんこそ大丈夫でした?」

「最初のまぶしさにはびっくりしましたけれど、あとはレイジくんが全部やってくれましたから——ではこちらにどうぞ」


 ベッドに座ったノンさんは、膝をぽんぽんと叩いた。


「…………?」


 膝? 膝がなんですか?


「ここに頭を載せてください」

「へ!?」


 がばりと跳ね起きる。いや、膝枕? 膝枕ですか?


「さ、早く。ここに頭を載せていただくのがいちばん効き目があるんですよ」


 精神を安定させるという【回復魔法】への期待はあるし、しかしながら明らかにその場はノンさんの太ももであって、もしこんなことをやっているのが露見したら彼女の父であるダンテスさんからヤクザキックされるという恐怖が襲いかかってくる。

 かといって断るのも——。


「あっ……やっぱり私の膝に頭を載せるなんてイヤですかね……?」


 うおおおお罪悪感が仕事をしすぎるぅ! あとノンさん、その上目遣いは反則ですよ! あなた今、いつもはしないメイクまでしてるんですからね!?


「そ、そそ、そんなことはありません、整髪料がドレスについてしまっては申し訳ないと……」

「そう言えばそうですね。手ぬぐいを敷きましょう。さ、どうぞ」


 僕が放った土俵際いっぱいの言い逃れは手ぬぐい一枚によって封殺され、あれよあれよと言う間に僕はノンさんの膝に頭を載せられた。

 ダンテスさん、これは不可抗力です。ノンさんからの申し出だったし、僕は抵抗をしました。ですがこの誘惑は抗いがたく——じゃなかった、その場の雰囲気がそうさせてしまったのです。

 ふわん。

 というのが最初の感触だった。次に感じたのはめっちゃいいニオイする……。そしてノンさんの膝は柔らかくて、温かくて、僕の目の前には——ノンさんの大きなふたつの胸が——。


「あ、あああ……」

「では精神安定の魔法を掛けますね」


 精神が安定するわけあるかァ!

 人間、徹夜を続けたりとか、極度の疲労が与えられると、一時的に興奮状態になったりするものだけれど今の僕はまさにそれだ。この興奮は疲労のせいであって他になにか要因があるわけではけっしてない。僕の名誉と、ダンテスさんの心の平穏のために申し添えておきます。


「ああ、ああああ、あ……あっ……」


 ノンさんの手が僕の胸と頭頂部に当てられ、魔力が通っていくと、すぅぅぅ——と急速に心が落ち着いていくのを感じた。


「あうぅ?」


 すごい……興奮が消え去っていく。

 これが、母性なの……? ママに甘えたい気持ちなの……?


「……どうですか」

「しゅごいでしゅ」

「うふふ、赤ちゃんみたいですよ」


 ママァ!


「こちらです、殿下」


 そんなとき、いきなり僕らの部屋の扉がガチャリと開いて、そこにはマッカーサー元帥のサングラスを外したアナスタシア殿下が立っていた。


「あ」

「あ」

「あ」


 膝枕されている僕らと、殿下の視線が交差した。




「……と、いうわけで、精神安定の魔法を掛けてもらっていたんですよ。ほんとにほんとです。なにもやましいことはありません」


 なんだかわからないけど、めちゃくちゃ言い訳がましい感じで僕はアナスタシア殿下に弁明していた。いやさ、殿下は僕らを見て目を見開いただけだったけど、彼女についてきたいけ好かない執事っぽいレフ人——ムゲさんの商会にもついてきてた人——が目を吊り上げて、「伝統ある迎賓館で乳繰り合うとは何事かッッ!」なんて叫んできて大騒ぎになったんだよ……「乳繰り合う」て。今どきそんな言葉使う人いるのか、ってくらい時代後れの言葉で、ノンさんから「『乳繰り合う』とはどのような意味ですか?」なんておっとり聞かれてめちゃくちゃ困ったんだが?

 それはさておき、せっかく来てくれたアナスタシア殿下も不機嫌になってツーンと横を向いちゃうし、ノンさんは善意の塊なのできょとんとしたままだし、結局弁明するのは僕の仕事というわけです、はい。


「……まあ、偉大なる皇帝陛下に拝謁できることは名誉であることながら、貴様のようなヒト種族にとっては精神面に深刻なダメージがあることも理解はできる」


 と、ほんとに理解してるのかどうか怪しいことを言っためんどくさい執事。ふー、とアナスタシア殿下はため息を吐いて執事にメモ紙を書いて見せた。


「!?」


 執事はピキリと固まったけれど、殿下が何度もメモ紙をつんつんと指してみせると歯ぎしりしながら部屋を出て行った。ちらりと見えた感じ、僕らは迷宮を踏破した英雄であり失礼は許さない、部屋を出て行って、みたいなことが書いてあった。

 殿下強い。


「ええと、それで……殿下はわざわざルルシャさんのことでこちらに?」


 部屋にいるのは殿下と、殿下の味方らしい従者が離れたところに立っていて、あとは僕とノンさんだけだった。

 殿下はにこやかにうなずいた。


『ほんとうにありがとうございます。でもどうして、ここまでしてくださったんですか?』


 その質問に答えるに当たっては少し迷った。

 でも、


「……殿下から手紙をいただいたからです」


 僕は正直に話した。届いた手紙の最後に、ペンを置いた後に離したような痕跡があったこと。そこから推測したのは——殿下はルルシャさんを助けたいけれど、僕らにこれ以上の働きをお願いすることができなかったのではないかということだ。

 なんだか恩着せがましい気がした。でも、正直に話さなければ話さないで、信用されないような気がしたんだ。この人は数少ないルルシャさんの味方なのだから、少なくとも僕は誠実でいたい。


「もちろん、ただの推測に過ぎませんでした……でもバッグをお渡しして、それだけで『後は任せた』じゃ、僕の心も済みませんでしたし、なにより迷宮攻略はルルシャさんを助けるための後押しになるだろうとは思っていたので——それでチャレンジしたんです」

「…………」


 アナスタシア殿下は呆然として僕を見ている。


「……あの、殿下? もしかして僕らのしたことは、差し出がましかったですか?」

「…………」

「殿下!?」


 僕は思わず叫んでしまった。殿下の両目から涙がこぼれたからだ。


ノンさんに膝枕されたい、ノンさんにあやされたい、ノンさんにバブゥしたい、というしょうがない僕チャンたちは本作の「ブックマーク」&「評価」をポチッとよろしくお願いします。





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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のポチポケが複数回である事から、評価を取り消していることがわかる。(捻くれ者) ・・・おまえ(作者)が癒されたいだけじゃねーか!!
[一言] イイネイイネイイネイイネ
[気になる点] 文章を読んでいて、作品の登場人物が話し動いているのではなく、何よりも作者が前面に出てきているなぁ、と感じる。 [一言] 後書きを見て、シンプルに作者怖いなって思ってしまった。
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