大魔法使いとかはあんましいらないとです!(ニッコリ)
上等そうで暖かなマント。
肩には兎。
選ばれし勇者は、今まさに魔王城へ続く森へ入ろうとし………
「____ま、待ちたまえっ!君!」
「あ、ぶどう君」
後ろからピョコピョコとやってきた少年は、どうやら大魔法使いとやららしい。
ちっちゃいし、あとちっちゃいし、ちっちゃいのに凄い人なのだ。
「…で、何?どうかしたの?」
「そ……そうだな。お前達、どうせ旅するのも初めてだろう?なんだったら
この俺が道案内してあげても 」
「あ、カーナビなら間に合ってます。」
「ナニッ?!」
何せ私の肩にはこの世界の創造主がいるのだ。
カーナビくらい…っていうか、多分脅せば瞬間移動くらいさせてもらえるだろう。
(すでにゼウは何扱いされても無反応になったようだ)
「じゃ…じゃあ料理とか、」
「出せます。」
「テント張ったり!」
「おうちが建てられます。」
「食べ物毒味係!」
「間に合ってます。」
「後支援!」
「募集はしておりません。」
あ、うずくまった。
「おいキミカ、いいのか?あっちは大魔法使いだぞ?連れて行くくらい…」
「頼りにされてるって分かって嬉しいくせに。」
「んなっ!」
兎だから頬が紅潮してるとかよく分かんないけど、なんかオーラがお花に
なっている。あと体がウキウキしている。
「そうだ!呪術!相手の動きを封じたりできるぞ!これでどうだ!」
「あ~…確かに道塞ぐモンスターは完全無視しようとは思っているし、
追いかけられると面倒くさ……困るから、それは便利かもだけど…」
「危ないっ!」
唐突にぶどう君がローブから杖を出し、私の背後の“ナニカ”に向かって
炎の竜を発した。
低いうめき声が響き渡り、振り返った時に確認できたのは、大きな躯だけだ。
「……ひ、や?」
「あちゃ~魔王も警戒態勢って事か。あれBランクのモンスターだぞ?大丈夫かキミカ~」
ぽんっ、とシャボン玉が弾けるような音がする。
ぶどう君はクルクルと杖を回したあと、手品のように消してしまった。
ちなみにドヤ顔で。
「危ないところだったな!俺がいなければどうなっていたことか!」
「いやシールド張っておいたから別に平気なんだが。」
「ぐっ…なかなかやるな使い魔め!」
使い魔と言われ、兎が少しだけ縮こまる。
「なあキミカ…そろそろ元に戻って良いか?この体、動きづらくて」
「ぶはっ!」
「なぜ吹いた?!」
いや、別に人間verのゼウが四つんばいで えっちらおっちら動いてる姿を
想像したわけじゃないんだよ?ただの思い出し笑いだよ…?
ずっと私がプルプルしているので、向こうは勝手に戻ったらしい。
ぶどう君が腰を抜かしている。
「え…?き、貴様さっきまで兎に…」
「えっと、紹介するね!この世界の創造主、ゼウスです☆」
ぶどう君は滑稽なポーズのまま固まっている。
まあそうだよね。
目の前の兎が神様だとか言われても「はいそうですか」とはならないよね。
むしろ通報するレベルだよね。
「通報するのかっ?! じゃなくて…えっと、まあ別に信じなくてもいいから。とりあえず
今はこいつの良いように使われてるし。」
「…………いや」
「ん?」
「お前、神様なのかっ?!凄い!初めて見たぞ!」
信じました。
「というわけで~ゼウくん………」
「瞬間移動させろって事だろ?もういいよ別に…ほいっ」
つきました。
キミカからぶどう君に対する第一印象は「ちっちゃい」で、
今のイメージも「ちっちゃい」です。