第22話
静かに下りた夜の蚊帳を、一筋の光が切り拓く。
朝を告げるその瞬間は、皆が目を細めてその方向を眺めた。
2日目の行軍は終わりとなり、まとめて用意された食事を食べる。
そして皆が眠るためにそれぞれのテントに戻り、残った俺達がそれらを全て囲うような大布を掛けた。
今日は俺達が寝ずの番の日である。
「……どうすれば、いい?」
「そうだなぁ」
「無難にソウ、トキ、私でいいんじゃないかしら」
「……?」
現在決めているのは起きている順番。
三人で寝ずの番を行うときは、ローテーションを組んで行うのが普通だ。
番をする時間が12時間あるとして、一人目が初めから5時間目位、二人目が4時間目から9時間目位、三人目が8時間目から最後までと行った形だ。
この場合は一人目がソウ、二人目が俺、そして最後にユエと言う形だ。
まあ、ユエが言った順番が一番無難だろう。
そういう風にソウに説明する。
「変えるとしても俺とユエの順番か」
「……なんで、私は最初?」
「起きないだろ、ソウは」
「起きないわね、ソウは」
「……むう」
唸ってもソウが起きないのは分かりきったことだ。
寝起きの悪いやつに、途中から起きて番をさせるわけにはいかない。
そうと決まれば、
「じゃ、俺は寝るからユエは色々教えてからでよろしくー」
「え?何言ってるのよ、貴方が」
「三人目が一番寝れるだろう?」
「ぐ、確かに」
「そこまで考えての割り振りだったと思うんだけどー」
「ぐぐぐ」
「ユエがやだって言うなら仕方ないなー」
「わ、分かったわよ!そのねちねち言い続けるの止めなさい!」
「じゃあよろしくー」
よし勝った。
ユエから言質を取った俺は、悠々とテントの中に戻ろうと振り返る。
「……トキ、教えてくれないの?」
「む、」
ソウがじっとこちらを覗きこんでくる。
そうやってじっと見つめられると……弱い。
「と言う事で、寝ずの番の流れに付いて解説しよう」
「あれ、寝るんじゃないの?」
ユエが何か言っているが、こういうのは放置するに限る。
「番をするに重要な事は主に2つ」
「……ん」
「あ、スルーして始めちゃう」
「一つは寝ないこと。これは当然だな。寝たら何のための番だか分からないし」
「……寝ないのは平気」
ソウは寝なければいくらでも起きていられるが、寝ると起きないと言う不思議体質だ。
寝起きが悪すぎて信用は無いけどな。
「寝ない間にもいくつか注意事項もあるわよ」
「……なに?」
「魔法をなるべく使わないことと、大騒ぎしないことね」
「こうして隠れているのに魔物に見つかったら意味がないからな」
「……ん、まかせて、ぼんやりしてる」
「いや、辺り警戒しろよ?」
いくら静かにしてても見つかる時は見つかるのだ。
そう言うときのための寝ずの番である。
「と言う事で、もう一つの重要な事は、何かがあったら真っ先に誰かを起こすこと」
「魔物に見つかった時や、トラブルがあった時ね」
「基本的には近くにいる俺やユエを起こしてくれ」
「小石くらい当ててくれれば起きるから」
「……わたしは、起きる自信はない、よ」
知ってる。
「ソウが寝てる時に何かあったなら、迷わずこれを使うよ」
「……それ」
「なんでそんなの持ってるのよ」
懐から出したのは数枚の葉っぱが入った麻袋だ。
袋には印が一つ、瞳に雷のマークが書かれている。
「……『目覚めの草』」
「そのとおり」
「でも滅茶苦茶不人気商品よね。それ」
「でも実際目覚めるからな」
取り出したのは『目覚めの草』と呼ばれる魔法道具。
口に拭くませれば、どんなに深い眠りに落ちていても覚醒させると言う、所謂眠気覚ましだ。
確かにどんなに眠くても一発で目が覚めるんだが、とても苦い。
あまりにも苦すぎて付いた別名が『激苦草』だ。
その味の所為であまり人気はないが、その効果だけ見ればとても高い。
「……使った事無い」
「そうか。じゃあ、食べてみな」
いざと言うとき、この味に慣れておかないととっさに動けないからな。
少しだけ葉っぱを千切り、ソウに渡してみる。
ソウは何も疑いもせずそれを口に含み……とても渋い顔をした。
「……っ、……っ!」
「あーほら水、飲みなさい」
「……っ」
おー、すごい勢いで水が減っていく。
「その苦味で目が覚めるわけだ。起きなければそいつを食わせるからな」
「……やだ」
「なら普通に起きてくれ」
「……むぅ」
いや、唸られても。
起きなければ容赦なく使うからな?
「さて、夜番についてはこんなところか?」
「……ん、分かった」
ソウに番を任せて、俺とユエは寝る支度を始める。
一応、少し早めに起きる準備はしておくか。
「……おはよう」
「……ん、おはよう」
昼前ごろ、再び目を覚ました俺は目の前の顔、ソウに挨拶をする。
丁度起こそうとしていたところらしい。
「悪いな、今起きる」
「……ん」
ぐっ、体を伸ばして目を覚ます。
そしてソウの座っている丸太の隣に腰掛ける。
あとは軽く会話で意識をはっきりとさせよう。
「どうだ?暇だったろ」
「……そうでもない」
「うん?何してたんだ?」
「……ないしょ」
「むむむ、まさか魔法とか使って遊んでたんじゃ」
「……してない」
「気になるんだけど」
どうやらソウは教えてくれる気は無いようだ。
まあ、俺もユエも起きて無いし、音が出たり魔力をつかったりはしていないみたいだ。
ならば問題ないだろう。
「……トキ」
「うん?」
「……わたしは、迷惑?」
「何だ急に」
「……ぼんやりと、考えてた」
そりゃあいちいち色々と教えないといけないのは面倒だけど。と、
僅かに不安そうなソウの頭に手を載せる。
「昔の言葉でな、旅は道連れ、なんて言葉があったらしいぞ?」
「……どういう、意味?」
「仲間が居たほうが楽しいって事だ。一人で旅するよりはね」
「……トキ、楽しい?」
「一人で居たときよりは充実してるさ。こうして話せるだけで大分違う」
「……ん」
きっと、一人で居るより何人かで居るほうが楽しいって言うのは、ソウが誰よりも知っている。
まあ、一人のほうがいいって思うこともあるかもしれないけど。
「安心した?」
プイとそっぽを向いてしまうソウ。
そしてそのまま寝床に入る。
「……もうねる」
「おー、お休み」
「……おやすみ」
さて、俺も辺りを警戒するとするか。
とまあ、そうそう何かあるわけでもなく、順調に俺の番は終わり。
「ほら、お前の時間だぞ」
「んー?」
なにやら寝ぼけた様子のユエを揺さぶる。
「小石当てる位で起きるんじゃなかったかー?」
「……夜這い?」
「よし、ちょっと口あけてろな」
俺は目覚めの草を取り出した。
「起きる、起きるからっ」
「ったく、最初から素直に起きればいいものを」
「貴方の顔を見るとどうしても」
「どうしても、何だって?」
目覚めの草を構える。
「……どうしてもほめたくなってしまうのよねー」
かっこいいわー、なんて平仮名で言ってくる。
そんなレベルのほめ言葉なら無いほうがましだ。
「まあそんなことはどうでもいいわね。どう、異常は無い?」
「ああ、問題は無いよ。引き続き頼む」
「分かったわ、お疲れ様」
ユエは軽く伸びをすると、先ほどまでソウが座っていた辺りに腰を下ろす。
「ん、どうかした?」
「いや、ユエはこの見張りの時間とか何をしてるのかと思ってな」
「私?うーん、大抵は本を読んだり考え事をしたり、かしらね」
「やっぱりそんな感じか」
ソウが気になる事を言っていたのでちょっと気になったのだ。
俺が考え込んでいると、ユエが思い出したように付け加える。
「後は如何に寝ている仲間にラクガキするか、とか」
「おい、信用して寝れなくなるような事言うの止めろ」
「大丈夫よ、普通は気づかれるからやらないわ」
気づかれなければやるって言ってる辺り信用は出来ないな。
「ソウは平気そうだった?」
「そちらも問題なし、だな」
「一応私が暫く話し相手になってはいたから、知ってはいるけど」
先程はさっさと寝ようとしているように見えたが、一応少し起きていてくれたようだ。
「初めは私も寝ないように必死だったもの」
「ソウはそんな感じは無かったけどな」
「確かに」
多少雑談をして、俺は再び眠りに付く準備に入る。
「じゃあ後はよろしくな」
「任されたわ。ご飯でも作って待ってるわよ」
「頼んだ」
さて、もう暫く寝るとするかな。
作者 「はい皆さんこんばんわ、後書き対談のお時間です」
トキ 「ばんわー、よろしく」
作者 「最近思うように話が進まないですね」
トキ 「会話ばかりなイメージだな」
作者 「暑いと思考が止まる性質なので」
トキ 「クーラーつけろ」
作者 「車のクーラー壊れてまして」
トキ 「……車と言う名の蒸し風呂だろ、それ」
作者 「自分で治そうとしてもさっぱり」
トキ 「専門店行けよぉ」
作者 「本格的な夏になる前に行きます」
トキ 「ほら、さっさと本題はいるよ」
作者 「はーい、と言う事で、今回は寝ずの番のトキのお話です。
トキ 「ん?別バージョンがあるのか」
作者 「覚えていれば次回、ソウ&ユエの視点で書きましょう」
トキ 「おぼえてないな」(断定
作者 「……さて、今回は特に気になることは無いですかね」
トキ 「『目覚めの草』は?」
作者 「それも本編で解説した通りですかね。補足するならあれは一枚でも持っていれば地面に植えて無限にふやせるってくらいです」
トキ 「商売上がったりじゃね?」
作者 「ストックしてもち歩く人もそんなに居ないですから、意外と需要あるんですよ」
トキ 「効果があっても味で不人気ってむなしいなぁ」
作者 「まあ、全てがうまくいった人気商品なんて早々無いですよ」
トキ 「ちなみに、俺はいざというときのために大体持ち歩いている」
作者 「いざってどんなときです?」
トキ 「遺跡トラップとかで意識朦朧や、睡眠なんてモノがあってな」
作者 「遺跡って、入るんですか?」
トキ 「一応な。いろんな望みを掛けて」
作者 「へぇ、と、これで解説と次回予告は終わりましたね」
トキ 「今回はさらっとだな」
作者 「ちょっと病院にいってこないとなので」
トキ 「……また風邪?」
作者 「後頭部に出来物が」
トキ 「……次回、あるよな?」
作者 「ありますよ!?殺さないでください!?」
トキ 「いや、だって後頭部って」
作者 「ネットで調べたら問題なかったです。……たぶん」
トキ 「突っ込まない、突っ込まないぞ俺は」
作者 「と言う事で今回はこの辺で」
トキ 「まあ、早く病院行った方が良いしな」
作者 「次回も、終わらない夢の中でお会いしましょう」
トキ 「お疲れ様でしたー」
作者 「と言う事で準備して行きます」
トキ 「ほんとになんでもなければいいけど」
作者 「まだやる事があるから死ねません」
トキ 「何でそうやってフラグを建てるかな!?」




