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『全属性勇者は魔王がいない世界で、殺された勇者の代わりに怒る』  作者: 南蛇井


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5/12

『全属性勇者、善行をやりすぎて怒られる』

坂上健吾には、今やノルマがあった。


・善行:週3回以上

・報告書:簡潔に

・過剰な影響は禁止


(善行に“過剰”って概念あるんだ)


 最初は、控えめにやった。


 崩れかけた橋を直す。

 井戸を浄化する。

 畑の水はけを良くする。


 ――怒られなかった。


(よし、ラインはここだな)


 調子に乗ったのが、良くなかった。


 ある日、干ばつの村を見つけた健吾は思った。


(これ、まとめてやったほうが効率よくない?)


 火で地熱を調整し、

 水を呼び、

 風で雲を集め、

 地で水路を作り、

 光で作物を育て、

 闇で害獣を遠ざけた。


 一晩で、豊作確定。


 村人は泣いて喜んだ。


「神様です!」

「いえ、無職です」


 翌日、呼び出された。


 役所の会議室。


「坂上健吾」


「はい」


「……やりすぎです」


(来た)


 役人は書類を机に叩いた。


「この村、来年の税収が跳ね上がります」


「良いことでは?」


「良すぎます」


(良すぎるのがダメ)


「周辺の村から苦情が来ています」


「え?」


「“なぜ、あの村だけ”と」


 健吾は頭を抱えた。


(善行、格差を生む)


 さらに問題があった。


「勇者様がいれば、農政はいらないのでは?」


 ――そういう声が出始めた。


「……それは、まずい」


 健吾は自分で理解した。


(俺が便利すぎる)


 処分が下った。


・善行の範囲を半径5km以内に制限

・気候操作は禁止

・一度に救う人数、上限あり


「……RPGのスキル調整?」


「現実です」


 帰り道。


 健吾は村の外れに座り込んだ。


 目の前には、

 助けを求める人々。


 でも。


(助けすぎると、怒られる)


 健吾は手を止めた。


 夜。


 報告書を書く。


本日の善行:

・井戸1基

・橋の補修(小)

・猫を木から降ろした


(猫が一番、安全)


 空を見上げて、健吾は呟く。


「魔王倒すほうが、楽だったな」


 全属性勇者は知った。


 善意にも、許容量がある。


 そして今日も、

 怒られない程度に、世界を少しだけ直す。

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