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顔面で殴る皇女様ズ  作者: 月森香苗
南の辺境伯領編

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41 【30階層】魔物がドロップする魔導書

「30階層のボスを繰り返し倒したいなぁ!」


 目を輝かせるのではなく、ぎらぎらさせながらそう言ったのはカルミアで、彼女の手には手紙らしき紙が握られていた。

 彼女の隣にいるマディスは手紙の内容を知っているようで苦笑していたから、バルグスは端的に「何があった」と問い掛けた。


「第四皇女殿下のことはどこまで知ってる?」

「ルピナス皇女殿下か……確か、ドラスニトのダーレン大公子息と婚姻なされてあちらに行かれたよな?」

「そう。ドラスニトで王太子が毒殺されかけたことは?」

「知らん。何故そんなことに」

「王太子は元々横暴だと国内では認識されていた。唯一の王子として王妃が甘やかしたせいだか。辛うじて生きているが、辛うじてだ。ドラスニトでは今の王を退位させ、大公を王にすることになったって」


 それは決定事項である。そもそも王子ではなく大公の子息が婚約者になったのも王子があまりにも駄目だったからだ。

 ドラスニトの国王は大公の異母弟で正妃の子であった。中々正妃が懐妊しなかったので側室を召しあげると、側室はすぐに妊娠した。そして産まれたのが大公である。それから二年して正妃が産んだ子供が今の国王である。

 大公としては王に拘りはなかったものの、正妃は大公を非常に疎んだ。命を狙われたのもあり、成人するとすぐに臣籍降下したのだが、正妃は死ぬまで大公の命を狙い続けた。

 因果応報なのかどうかは分からないが、正妃はある日心臓に強い痛みを感じた後にぱたりと倒れてそのまま亡くなった。

 この正妃はとにかく自分の息子が可愛かったのだろう。国内バランスも考えずに、まだ王太子の頃の彼が選んだ女性を妃にすることに反対しなかった。

 貴族達はそれはもう大反対したのだ。何故なら、選んだのは顔と体と愛嬌に全振りした頭の中にが空っぽの子爵家の令嬢だったからだ。

 ろくな事にはならないと分かりきっているのだからこれ以上無いほど反対したが、正妃は無理を通した。

 結果として、その妃となった令嬢は王妃になっても使い物にならなかった。国王もそれなりに駄目な王だが、王子はもっと駄目な王子だった。

 唯一の王子として散々甘やかされて育った彼は他者を下にしか見ていないし女癖も悪かった。

 王太子になった頃に婚約者と結婚したが、愛人を多く作っていたのだ。妃の家から金を吸い上げて愛人と享楽に耽る。

 王太子が毒殺されかけたのは愛人の一人が妃になり変わろうとして毒殺を狙うも、それがめぐりめぐって王太子の元に辿り着いたからだ。

 毒の影響で体は動かせないし子作りの機能は失われてしまった。

 愛人は当然処刑された。仮に妃が毒に倒れていても、王族になっていた彼女を害した時点で死刑は確定であるのに分かっていなかったらしい。

 王太子と妃の間には子がいなかった。その為、ジェレミーが王太子になるのは必然だったが、国王と王妃にも責任があると貴族達は責任追及をした上で退位を迫った。

 国王が退位しても大公がいる。ジェレミーが王太子になるのは確定なのだから、国王が変わっても問題は無いし、寧ろ王妃が害にしかならない。まともに政務の出来ない王妃とそれを選んだ国王を望む貴族はいなかった。

 大公はルピナスを通じてアンザス帝国の皇帝と良い関係を築いているし、亡くなった正妃の手前誰も口に出せなかったが、大公の方が優秀で求められていたのだ。

 そんなドラスニト王国の内部でのあれこれをカルミアは長女のアナベルからそれとなく聞いているし、ルピナスからも聞いていた。

 そして王が変わることが決まったので、カルミアはお祝いとして、ルピナスが前から欲しがっていたダンジョンで獲得出来る魔物が落とす魔導書と他にも宝箱から得られる諸々を贈ろうと決めたのだ。


「ルピナス殿下はお喜びになるの?」

「うん♡ルーちゃんはねぇ、本当に本が好きなんだぁ。今は魔導書を作るのに熱中してるみたいなのぉ。だからね、喜ぶよぉ♡」


 ローゼルの心配もよそに、カルミアは力強く頷いた。

 ルピナスは見ためこそ幼く見えるし、人形のように繊細に見えるが、帝国の皇女として育ったのだ。皇族の特に女は逞しい。

 定期的に、急がないけれど何時かは欲しいとルピナスから魔導書を求める手紙が来ているのだ。繊細な子は姉に要求しないだろう。


 お祝いならば、と全員が気合を入れてダンジョンを登ることとなった。



 30階層のボスはレイスというゴースト系の魔物で、物理攻撃は無効で魔法攻撃が通用する。特に今回は光属性の魔法が使えるカルミアと光、聖属性の魔法が使えるし、魔導書を使えば大抵の属性の魔法が使えるローゼルが戦闘の要である。

 10階層ごとにあるボスの部屋は扉がある。外には出られないようにされていて、かなり強い。

 だが、倒し方さえわかっていれば割と楽なのだ。


「光剣~!」

「浄化!」


 物理攻撃は効かないけれど、武器に光の魔法を纏わせればダメージが与えられる。そうなれば身体能力の優れたカルミアは簡単にレイスに近寄れて、容赦なく攻撃出来る。

 遠距離からローゼルが浄化の魔法をかければ弱りきっていたレイスはあっという間に倒れてしまうのだ。


 カラン、と杖が落ちるものの、目的の魔導書を落とさなかったレイス。むぅ、と唸るカルミアに、マディスが近付く。


「ミアとローゼル夫人の魔力が尽きるまでは付き合うよ」

「うん……」


 割と運が良いカルミアだが、これぞ、と狙うものがある時は中々手に入れられない時がある。まさに今がそんな時なのかもしれない。


 どんな仕組みかは分からないが、ボスを討伐してから部屋を出て少しするとそのボスは復活している。しかもこの部屋の場合はレイスが復活するのだ。

 上に登る階段ではなく、入ってきた扉から外に出て装備を整えている間に復活しているので、特定の落し物を狙う冒険者はそうやって繰り返し戦闘をする。

 マナーとして、他に待っているパーティがいるならば譲るのだが、今日は誰も来そうにない。

 そもそも30階層まで登れるパーティはまだまだ少ない。

 という事で、八回目の挑戦でようやくレイスは魔導書を落とした。それまでにレイスが落としたのは杖や王冠、ブレスレット等など。

 ボスの部屋は倒すと宝箱がご褒美で出るのだが、一回だけ魔導書が出たものの、レイスが落とす魔導書が欲しかったので粘ったのだ。


「うわぁー、ありがとぉー!」

「わたくしは特に動いていませんから。ミア様が一番動いていたわ」

「オレとマディスは何も出来てないしな」

「うん。ミア、気にしなくていいんだ」


 レイスが時折放つ魔法攻撃はローゼルがいなすので、文字通りマディスとバルグスはすることが無かった。

 カルミアが早く落としてぇ~!と叫びながら身体強化をした上で剣で切りつけるだけでレイスの体力をどんどんと削って行ったのだ。


 カルミアの手には二冊の魔導書。レイスが落とした物と、宝箱から出るもの。その違いをカルミアは知らないが、妹はきっと喜んでくれると確信している。



「そういえば、ドラスニトにもダンジョンがあるよな?」


 クランハウスに戻り、前もって【古きを知る者】の森の民ルエルラーデに魔導書を納める箱を作ってもらっていた。

 ドワーフが鍛治を得意とするならば、森の民は木工を得意としており、ただの木を整えた上で見事な彫り物をしてくれた。

 ルピナスの花で周りを飾りながら、小さな妖精が四人遊ぶ構図はとても可愛らしい。どことなく妖精が世間に出回る四人の皇女に似ているのは気のせいではないだろう。

 そんなルエルラーデの心遣いに感動しながら本を納めていたカルミアをにこにこと眺めていたマディスにバルグスが問い掛けた。


「確かあるはず。何故?」

「祝いの品を持っていくならば、行ってみたくないか?」


 国王が変わり、即位式が行われ、その後の祝宴にカルミアとマディスは夫妻で招待されている。皇族からは皇太子ガルディアスとその妃アヴェリーヌが皇帝の名代として招かれていたはずだ。


 ダンジョンが現れて約一年。その間、マディス達はこの塔型のダンジョンしか行ったことがない。どうせなら即位式や祝宴などが終わった後にでも行ってみないか、という誘いにカルミアとマディスは目を合わせ、そして「いいね!」と頷いた。

 どうせ遠出するならば、滅多に行けないダンジョンに行ってもいいではないか、と思ったのだ。


 なお、その思い付きをカルミアがルピナスに手紙で送ったら、マディスとローゼルも祝宴に招待されることになった。これで四人は堂々と貴族としてドラスニトに赴ける事となった。

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