エピローグ
私たちはなんの因果か、再び巡り逢った。
こうして前世の絆が続いているのは、とてもすごいことなのだと思う。
修学旅行から3ヶ月が経った。
生徒会室には、桃吉と康久がいる。あとの2人はまだ来ていない。
「あー、もう。なんで休みの日に学校来なきゃ行けないのかなあ」
「仕方ないですよ。生徒会のお仕事ですから」
ぼやく桃吉に対して、康久が嗜める。
「でもこんなに朝早くに集まらないといけないなんておかしいよ!」
「おかしくないぞ」
尚、喚き続ける桃吉に、今度は私が口出しした。
「今日は、入学式の手伝いなんだから、新入生より早く来て準備しなければならないからな。それに‥‥」
そう。今日は、入学式。巡り巡って、季節は再び春となっていた。私たちは、生徒会として入学式の手伝い、また代表として話すことを要求されていた。
私はゴホンと、桃吉に対して、効果的面な魔法の言葉を言った。
「新入生の女の子は、初々しくて可愛いと思うぞ?」
「よーし、今日も頑張るぞ!」
単純。まったく、桃吉はいつまで経っても桃吉だ。がー‥‥
「ま、のぶちゃんほど可愛い子はいないと思うけどねえ?」
「‥‥っ」
こいつは、平気でこういうことを言うようになっていた。修学旅行の日からしばらくして、私は改めて桃吉と話した。自分の気持ちをしっかりと伝え、解決したと思ったのだが。
その時に『別にのぶちゃんに彼氏が出来た訳じゃないから、関係なくない?これからガンガンアピールしていくから』と逆に宣言されてしまった。それ以来、彼はずっとこの調子だ。
「先輩。口説かないで下さいよ」
と、助け舟を出してくれるのは康久だ。彼は、いつも通り、変わらずいてくれる。
と、その時生徒会室の扉が開いた。寧々が来たのだ。
「お疲れ様」
そう言いながら椅子に座る寧々。今日は髪をポニーテールにしている。彼女はずっと私に助言やら相談やらを受けてくれ、迷惑をかけっぱなしだ。
それに対して文句を言われることもあるが、大体甘いものを奢れば矛を収めてくれる。彼女は、私のよき友人だ。
「お疲れ様です」
と、そこで入って来たのは桜秀だ。彼も‥‥まあ、相変わらず。進展は特になし。別にいいけどな。
「え、なんでふくれてるんですか?」
「別に」
あれから、少しも意識してるそぶり見せないとかさあ。なんだかなあ。
「ほら、体育館にさっさと行くぞ」
「はーい」
全員集まったということで、私たちは皆で入学式会場である体育館へと向かう。準備といえば、多分椅子並べくらいだろう。が、その後に生徒会紹介と私の代表の言葉があるはずだ。それに関するリハーサルが長いだろうな。
「そういえば、撫子。在校生代表の言葉って、考えてあるの?」
「もちろんだ」
完璧且つ秀逸なものを考えている。きっと皆、度肝を抜かすだろう。ふふふ‥‥
「のぶちゃんの場合、変なこと言う可能性があるからなあ‥‥」
「はあ?どういう意味だ。それ」
「そのままだよ。全校集会だってろくなことしか言ったことないじゃん」
「はあ?!」
私は桃吉にくってかかるが、隣で寧々がまあまあと嗜める。
「私も桃吉さんに賛成。新入生をドン引きさせちゃダメよ」
「僕も、その可能性は否めませんね」
「は、はあ?!」
康久と寧々まで。なんということか。いや、しかし。本当にドン引きされる内容だとしたら、教師陣が許さないはずだ。
と、そこへ斎藤がやって来た。斎藤と言えば。蝶子、もしくは帰蝶を思い出す。彼女とは、あれから会っていない。一応、私の連絡先も教えたが、連絡もとっていない。でも、それでいいのだと思う。
私も、彼女も、前を向いているから。
斎藤は、私たちに気づくと、足を止めて話しかけてきた。
「織田か。お前、今日も代表挨拶するんだよな?」
「‥‥まあ」
すると、斎藤はふっと笑った。
「知ってるか?お前が”ある言葉”を言うかどうか、毎回教師の間で話題にされていることを」
「はあ?!」
「面白がられてるぞ」
それだけ言って、さっさと行ってしまった。”ある言葉”ってなんだ?!
「わ、私は何かおかしいことでも言っていたのか‥‥?」
「えー、自覚なしかあ」
桃吉が適当にぼやく。私は今までの言葉を必死に思い出して、おかしいところはないか考えた。が、特に問題はなしだった。
すると、後ろから桜秀の声が聞こえてきた。
「織田さん。生徒会選挙をよく思い出して下さいよ」
生徒会選挙?確かに、あの時も演説をしたが。特に変なことを言った覚えはない。それよりー‥‥
「もう、あれから1年経つのか」
生徒会選挙は5月に行われた。今は4月。もうすぐ現生徒会も解散になるだろう。
「早いね」
「あっという間だったわね」
「もうすぐ生徒会も終わりですね」
「少し、寂しいですね」
皆、口々に思っていることを言う。この1年、色々あったが、とても楽しかった。
それは、皆がいてくれたからだ。前世では、許されなかったことが、今世では当たり前にできる。私は、それを尊いものだと思うんだ。
「写真を撮ろう」
「なんで、急に」
桃吉が聞く。うーん。思い出を残したくなったから、というのは些か恥ずかしい。
「広美に送るから」
「なるー」
広美とは、あれから宣言通り、メル友になっていた。週に何度も連絡を交わし、近況報告をしている。今日撮った写真は、いい話題になるだろう。
私の言葉に納得した皆は、それぞれポーズを取る。写真慣れしている寧々が手を伸ばしながら撮ってくれた。背景には、少しだけ桜が見える。
そうこうしているうちに、集合時間ギリギリになってしまったので、走って行った。
手分けして、準備をして、リハーサルを終える。そして、入学式が始まった。
私の出番になると、小さな声でそれぞれ応援してくれた。それに手を振って、壇上に上がっていく。
私たちは再び巡り逢った。前世とは、違う運命を送りながら、少しずつ前に進んでいく。前世とはまた違った人生となり、私たちは今世を生きていくのだろう。
それでも、私には諦められないこともある。”私”なりのやり方で、叶えていきたいこと。
私は大きく息を吸い、そして宣言した。
「私の目標は、天下統一だ!!」
私たちの人生は、これからも続いていく。
おしまい
これにて、この物語は完結となります。読んで下さった方、ありがとうございました!
途中、何度も筆を折りかけましたが、ここまで書くことが出来たのは、読んで下さった方がいたからです。本当にありがとうございました。
また、新しい連載もしばらくしたら始めようと思っているので、機会がありましたら、ぜひよろしくお願い致します。
それでは、お元気で!