表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【英訳出版】囚われた王女は二度、幸せな夢を見る【書籍化・コミカライズ】  作者: 三沢ケイ
第二部 第一章 王女の帰還

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/127

見知らぬ町_エド視点(6)

「おい。メンバーを探しているなら、俺が参加したい」


 ディクスはこちらを振り返り、怪訝な顔をした。


「あんたは?」

「旅の途中なんだが、実入りのいい仕事を探している」

「なるほど。だが、今魔法石を取りに行くのは少々危険が伴う。失礼だが、これまでの経験は?」


 経験は? と聞かれ、大した経験もないなら足手まといだという意図を感じた。


「パーティーに参加した経験はない。だが、魔法石探しならある程度役に立てる」


 俺はそういうとポケットから小石を取り出し、ポンっと彼らに投げる。ディクスはそれを右手で受け取った。


「これは魔法石か? しかも、魔力が溜まった」


 ディクスは石を摘まみ天井からぶら下がるランプにかざすように見ると、驚いた顔をした。


「俺が集めたものだ」


 集めたと言っても先ほど道端で拾った魔法石に俺の魔力を込めたものだが、それを説明する必要はないだろう。


「なるほど。ちなみに、剣や弓の腕は?」

「あんたの期待に添えるくらいには、自信がある」

「へえ?」


 目の前の男──ディクスは目を眇める。


「魔法石を収集しに行くと言うことは、ナジール国かその近くまで行くんだろう? 俺は以前、あの国に住んでいたから詳しい。それに、もし剣の腕に疑いがあるようだったら今すぐあんたと一戦交えてもいい」

「ははっ、大した自信だ。お手並み拝見と行こうか」


 俺の申し出に、ディクスの口元に笑みが浮かぶ。一方、横で聞いていた女性は慌てたように止めに入ってきた。


「ちょっとあなた、やめたほうがいいわよ。ディクスはこう見えて、ここらでは向かうところ敵なしなんだから」

「へえ、それは楽しみだ」


 俺はかつて、ナジール国の魔法騎士団の中でも一番の実力を誇っていた。この男がどんなに強かろうが、負けるつもりはない。


 俺は「絶対にやめろ」という女性から剣を借りると、ギルドの外に出る。ディクスが持っているのは先ほど俺が直した立派な剣だ。

 俺は自分の手元の剣を眺める。借りた剣は最も初心者向けと言っていい、軽いものだった。軽い故に身動きは早く取れるが、剣がぶつかり合ったときに衝撃で折れてしまうだろう。


(まあ、これで十分だな)


 握った柄を通して剣に魔力を流し込む。剣をしっかりと握ると、ディクスに襲いかかった。

 ディクスの目が大きく見開き、ガキンと金属がぶつかる音がする。俺の打撃をディクスが自分の剣で受け止めたのだ。


(へえ)


 この一撃で剣が吹き飛ぶと思ったが、意外にもディクスはしっかりと俺の攻撃を受け止めた。すぐに態勢を整えると、俺から距離をとる。


「お前、何者だ?」

「ただの、旅の者だ」

「その剣でこの打撃、ただの旅人とは思えないな」

「それはあんただって同じだろう。ただの冒険者には到底見えないぜ? ディクスさん」


 ディクスは大きく目を瞠ると、剣を下してけらけらと笑い出した。


「あんただって同じ、か。確かにそうだ。気に入った。一緒にやろう」

「こんなに簡単に信用していいのか?」

「昔から、人を見る目はあると自負している」


 ディクスは自信満々に言い切る。


「そうか」

「私のことはディクスと呼んでくれ。訳あって、今は冒険者をしている」

「俺はリヒト=アルマールだ」


 今の俺を見て俺だと気付く人間はいないはずだが、完全な本名を名乗ることに迷いを感じた。そうして口から出たのは、懐かしい名前だった。エドワール=リヒト=アルマールは俺がかつての世界で名乗っていた名前だ。


「リヒトか。よろしく」


 ディクスは品の良い顔をくしゃりと崩すと、歯を見せて朗らかに笑った。


「おい、ルーカスさん」


 ディクスの呼びかけに、ルーカスがこちらを見る。


「見ての通り、たった今パーティーメンバーが決まった。二、三週間くれればそれなりの量を集めてこられるはずだ」

「わかりました」


 ルーカスは頷く。そして、視線を移動すると俺を見た。


「魔法石はもう持っていませんか?」

「少しならある」


 俺は先ほど拾い集めた石をポケットの中から取り出す。全部で4つあった。どれも俺の魔力をぱんぱんに込めたものだ。


「それを売ってもらうことは?」

「構わない」


 俺はその4つすべてをルーカスに手渡す。必要になったら、また拾って魔力を込めればいいだけだ。


「助かります。今は魔法石が希少で、なかなか手に入らないから」


 そこまで言うと、ルーカスは俺の顔を見つめる。


「もしよかったら、私と魔法石供給の独占契約を結びませんか? 他の商社より高額をお支払いすると約束しましょう」

「悪いが断る。俺は行きたい場所に行きたいときに行く。束縛されるのはごめんだ」

「そうですか。残念です」


 ルーカスは残念そうに肩をすくめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「囚われた王女は二度、幸せな夢を見る」央川みはら先生によるコミカライズ好評連載中
リンク画像
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ