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【英訳出版】囚われた王女は二度、幸せな夢を見る【書籍化・コミカライズ】  作者: 三沢ケイ
第二部 第一章 王女の帰還

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見知らぬ町_エド視点(4)

 ずっと牢屋にいたせいで、ナジール国はおろかこの国がどういう状態なのか情報を持っていない。まずは状況を把握すべきだと、俺は判断した。


「ありがとう。助かったよ」


 俺はお礼を言うと、彼らに背を向ける。そのとき、「あっ」と男が声を上げる。


「何か?」

「また会えるか?」

「さあな」


 きっと、もう二度と会うことはないだろう。誰かと親しくすると、それだけ俺の素性が知られる可能性が高くなる。今はそれは避けたい。


 俺は首を横に振ると、今度こそその場を後にした。





 大通りに出た俺は、ギルドへ行く前にまず腹ごしらえをすることにした。投獄されている最中はろくな食事にありつけなかったのでとにかく空腹がひどい。

 先ほどもらった銀貨を使い、通り沿いのパン屋でパンを買う。受け取ったらすぐに、そのまま被りついた。


(うまい)


 何の変哲もないただのパンなのだが、今まで摂った食事の中でも特に美味しく感じた。通り沿いの縁石に座ってそれを頬張りながら、今後のことを考える。


(そもそも、陛下やシャルル殿下はどこにいるんだ?)


 牢獄にいるとき、サンルータ国の兵士は『お前の祖国はもうない』と言った。ただ、王族や騎士団の殲滅はできていないようだった。

 早急に国王陛下やシャルル殿下に合流しなければと思うが、その居場所がわからない。


(普通に考えれば、サンルータ国から離れる方向に逃げるはずだが……)


 ナジール国では首都陥落の危機に備えて、町ごと避難できるような大規模な魔法陣が仕掛けられている。ただ、行き先は何カ所かあってその時々の状況に応じて決定されることになっていた。

 となると、まっさきに思いつく候補地は、ニーグレン国との国境付近の町であるシスイだ。しかし、キャリーナ王女がニーグレン国出身であることを考慮すると、それは別の敵の懐に自ら向かうような判断だ。


(反対側の海沿いだろうか)


 そこまで考えて、俺は首を横に振る。情報がない今、想像だけであれこれ考えるには限界がある。


(ここから、どうやってナジール国に帰ろうか)


 転移魔法を試みるが、うまくいかない。ナジール国の国境には転移魔法による不法な出入国を防止するための、大規模な結界が張られていた。うまく転移できないとなると、まだあの結界は機能しているようだ。


(誰が維持しているんだ?)


 決壊を維持するには定期的に魔法をかけなおす必要があるので、それなりにたくさんの魔術師がいるはずなのだ。

 国はないのに魔術師はたくさん残っているのだろうか。色々とわからないことだらけだ。


「転移魔法が使えないとなると、陸路で戻るか……」


 しかし、陸路を使うと途中に検問がある。俺はその検問を越えるための許可証を持っていない。八方ふさがりだ。


(……まずは、ギルドに行くか)


 現状、俺が情報を得られる最有力候補がギルドだ。もしかすると、国を超えて活動している冒険者に出会える可能性もある。


 俺はまず自分自身に幻術魔法をかけてサンルータ国ではよくいる茶髪茶眼の見目に変えた。俺の赤い瞳は目立ちすぎるので、万が一自分の手配書が出ていたときに面倒だと思ったのだ。

 パンの最後の一欠片を口の中に放り込む。立ち上がろうとして、ふと足元に転がる石が目に入った。


「ん? これは……空の魔法石か?」


 魔法石はその名の通り魔力を帯びた石のことだ。魔道具を使うためのエネルギー減として使われている。

 歩道をよく見ると、空の魔法石はそこかしこに落ちていた。魔法石は中の魔力を使い果たすとただの石

同然になるので、誰かが使い終わった魔法石を道端に捨てたのだろう。


 魔力を持つものであればそこに自分の魔力を込めて再利用することもできるのだが、そもそも魔力を持たないサンルータ国の人々にとってはゴミでしかないのだろう。


(持っていくか。何かの役に立つかもしれない)


 俺はそれらを拾い集めると、ポケットにしまった。


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「囚われた王女は二度、幸せな夢を見る」央川みはら先生によるコミカライズ好評連載中
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