表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【英訳出版】囚われた王女は二度、幸せな夢を見る【書籍化・コミカライズ】  作者: 三沢ケイ
第二部 第一章 王女の帰還

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/127

見知らぬ町_エド視点(3)


「ああ、そうだ」

「そんな話、初めて聞いたな」


 男は目を眇める。


「そうか? 俺の周りの魔法使いは皆つけていたが」


 内心の動揺を悟られぬよう、平静を装いうそぶく。


「国の魔法使いは皆、王宮に行くよう命じられているはず。もし本当にあんたが魔法使いなら、なぜこんな場所にいる?」

「他に行くべき場所があるからだ。全ての用事を終えたら、王宮に行くさ」


 魔法使いが皆、王宮に行くよう命じられていること自体初耳だったが、俺はさも最初から知っているかのように答える。

 男は納得したのかしていないのか、黙り込む。十秒程度の間をおいて、おもむろに口を開いた。


「本当にこれが直せるのか?」

「ああ、直せる」

「本当に?」

「ああ」


 俺は力強く頷く。


「……なら、頼む」


 男はしばらく逡巡したのちに、ようやく頷く。それを聞いた、鍛冶屋はパッと表情を明るくした。


「よし決まりだな。じゃあ、道具を持ってくるからちょっと待ってろ」


 鍛冶屋は店の奥に行くと、切断工具をいくつか持って戻ってきた。俺にしゃがむように言うと、さっそく首輪を切断しようと試みる。


「これ、なんの金属だ? やけに固いな。熱するわけにもいかねえし──」


 ガチャガチャという音と共に、鍛冶屋の呟きが聞こえる。俺が首に嵌めている状態なので、安全上の配慮からて手こずっているようだ。


 優に三十分以上格闘して、ようやくガキンと耳元で金属の割れる音がした。


 その瞬間、体の中に溜まっていた魔力が周囲に放出される感覚がした。


(よしっ、魔力が放出できる)


 俺は試しに、物質組成の魔法を使う。軽く片手を振るとボロボロの服は新品の衣服へと代わり、裸足だった足には靴が現れた。


「問題なく魔法は使えるな」


 自分が作り出した衣装と靴を確認してから顔をあげると、ぽかんとした顔で俺を見つめるふたりと目が合った。


「えっ、すごいなお前! これが魔法かよ? 魔法って、こんなことができるのか⁉」


 鍛冶屋は興奮気味に捲し立てきた。魔法を見るのが初めてだから、驚きもひとしおなのだろう。


「ああそうだ、首輪を外してくれてありがとう。助かったよ。約束通り、剣を直そう」


 俺は客の男に片手を差し出す。すると、男はおずおずとそれを俺に手渡した。


 男が持っていた剣に手をかざし『復元修復』と唱えると、剣はみるみるうちに元の姿を取り戻した。グリップの部分に布が巻かれてたその剣は、カード部分に見事な彫刻が施されている。ブレイドは魔法騎士であった俺が使っていたものと引けを取らない輝きを放っており、見ただけでかなりの逸品だとわかるような、立派な剣だ。


「おおっ!」


 鍛冶屋と客の男は、揃って歓声を上げる。


「助かったよ。これはとても大切な剣なんだ」


 男は誇らしげにそう言うと、剣を天にかざすように持ち上げる。そして、その剣を一振りした。


(この男、かなりの剣の使い手だな)


 魔法騎士は魔法だけでなく剣でも戦う。目の前の男の剣を持つ仕草や振り方を見れば、大体の実力は測れる。騎士か、剣士か……とにかく、それを仕事にしているレベルの腕前だ。


「これは礼だ。ありがとう」


 男は腰にぶら下げた小さな革製の鞄をまさぐると、中から剥き出しの銀貨を三枚取り出して、鍛冶屋に手渡した。そして、もう一度革袋に手を入れると銀貨を数枚取り出す。


「これはあんたに」

「いいのか?」

「ああ。あんたがいなかったら直らなかった」


 男は頷く。


「ありがとう、助かる」


 俺は心遣いに感謝してありがたく受け取ることにした。

 現金を全くもっていないので、正直助かった。大抵のことは魔法でなんとかなるが、現金を使いたい場面もあるだろう。


「しかし、魔法ってすごいんだな。驚いたよ。王宮に集まっている魔法使いもみんなこんなことができるのか」

「さあな。王宮にはたくさん魔法使いが集まっているのか?」


 鍛冶屋が尋ねてきたので、俺は逆に聞き返す。


「たくさんかどうかは知らないが、王宮は魔法使いを集めているだろ?」


 そのとき、「王宮は、やめたほうがいい」と声がした。剣を持ってきた客の男だ。 


「どうしてやめたほうがいいんだ?」


 俺は聞き返す。俺はナジール国に帰るのでサンルータ国の王宮に戻る気などさらさらないが、なぜそんな忠告をするのか気になったのだ。


「……とにかく、今はやめたほうがいい。あそこは異常だ」


 男は口ごもる。


(へえ)


 俺は意外に思う。あの王宮の異常さに気づいている人間が、自分以外にもいたことに驚いた。


「そうだな。王宮に行っても偉いやつらの命令を聞いてばかりでつまらなそうだから、あんたならギルドがいいと思うよ」


 今度は鍛冶屋が口を開いた。


「ギルド?」

「ああ。この通りを少し歩いたら、看板がある。色んな仕事を募集しているから、あんたみたいな魔法使いが来たって知ったらみんなびっくりだよ。間違いなく大喜びされるはずだ」


 鍛冶屋はそう言いながら、通りの向こうを指さした。


(ギルドか。情報収集に立ち寄ってみるかな) 


 ギルドは仕事紹介の何でも屋のような場所だ。簡単な護衛から実在するのか疑わしいような魔導具探しまで、紹介する仕事の内容は多岐に亘る。そして、そういう場所には情報が集まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「囚われた王女は二度、幸せな夢を見る」央川みはら先生によるコミカライズ好評連載中
リンク画像
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ