第12話「帰還」
第12話
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デス・リッチキングが、一歩、俺の方へ踏み出した。
その動きは静かで、まるで空気そのものが形を変えたようだった。
俺は、勝てるわけがないと思いながらも、反射的に構えを取る。
膝は震え、呼吸は浅い。
だが、構えを解くという選択肢はなかった。
次の瞬間―― デス・リッチキングが、俺の目の前で跪いた。
静かに。
音ひとつなく。
ただ、膝を地面につけた。
その光景に、思考が止まる。
続いて――
1.ゴブリン・ウォーロード
2.クリムゾン・デビルロード
3.ビートル・エンペラー
4.レオ・ビーストキング
5.バジリスク・ドミネーター
6.テンペスト・フェニックス
7.エルダー・ドライアド
8.アーク・ゴーレム・マスター
9.スケルトン・ソヴリン
この九体が、静寂の中で一斉に跪いた。
そして―― その動きを見た十の軍団のモンスターたちが、 前列から後列へ、波が広がるように順番に跪いていく。
音はない。
叫びもない。
ただ、静かに、整然と、俺を中心に世界が沈んでいく。
その静寂が、逆に恐ろしかった。
デス・リッチキングが膝をついたまま顔を上げ、黒い瞳で俺を見つめて言う。
「お待ちしておりました。我らが王よ」
俺は、モンスターたちを見回す。
十体の軍団長たちの顔は、どれもわずかに笑みを浮かべていた。
その笑みは、俺の感じている恐怖を和らげるものではなかった。
俺は、そのまま軍団長たちに囲まれ、城へと連れて行かれた。
俺が王――なのか。
この世界での記憶はない。
状況がつかめない。
かといって、この軍団長たちに逆らうことが得策とも思えない。
王ではないとばれたらどうなるのか。
想像するだけで、背筋が冷える。
恐怖を隠しながら、無言で城へ入る。
風呂に入れられ、着替えをさせられ、 俺はそこで初めて鏡で自分の姿を見ることができた。
人間だと思っていたが――違った。
尖った耳。
長めの犬歯。
大きめの目。
肌の色も、わずかに人間とは違う。
そして、この部屋に飾られている肖像画の人物と、俺はそっくりだった。
その人物は、俺の父――先代の王だという。
どうやら、俺はこの世界では王の跡取りで間違いないらしい。
今夜は、俺の帰還を祝う宴だそうだ。
・・・・・・・・・
広大な宴会場に通されると、十体の軍団長が俺を取り囲むように集まってくる。
どの軍団長も、俺の帰還を心から喜んでいるようだった。
その表情からは“安堵”が伝わってくる。
俺は軍団長たちと話しながら、自分の状況を理解していく。
まず、軍団長たちの名前が
ゴブリン・ウォーロード 「グラドニ」
クリムゾン・デビルロード 「ヴァルキ」
ビートル・エンペラー 「ドルガス」
レオ・ビーストキング 「ライガン」
バジリスク・ドミネーター 「バジール」
テンペスト・フェニックス 「アエル」
エルダー・ドライアド 「フィオーラ」
アーク・ゴーレム・マスター 「メルディア」
スケルトン・ソヴリン 「ボーン」
デス・リッチキング 「ネクロス」
であることが分かった。
そして、俺は洞窟で、王になるための試練を受けていたのだ。
各軍団長が十階層ずつを担当し、全百階層を成し遂げたときに、王として認められる―― 儀式的なものだという。
俺は王の息子なのだから、そのまま王を継げばいいのではないかと思った。
だが、配下のモンスターたちに“王としての実力”を示すために必要な試練らしい。
俺は甘やかされて育ったらしく、 父である王が突然亡くなったことで、 軍団長たちは俺が試練を乗り越えられるか不安だったそうだ。
どうやら、父も軍団長たちも、俺に激甘だったらしい。
そして、試練を乗り越えた俺を、軍団長たちは心から褒めてくれる。
だが同時に―― 「王になったのですから、今後はしっかり鍛えますよ」 と、穏やかに、しかし逃げ場のない言葉を告げられた。
翌日から、各軍団長の持ち回りで、武術と魔法を徹底的に鍛えられることになる。
そして―― 数年が過ぎた。
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