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データ化

 机の上においた書類をめくりながら、徳吉は、藤柴と高井にたいして、ハナシをしていた。それは、ハナシをしながら、じぶんのアタマのなかを、整理しているようにも見えた。

「知ってのとおり、われわれ第3地区のニンゲンは、第4地区に住んでるニンゲンから、税を取りたてるワケだけど、その方法というか、やりかたってのは、ほとんどコチラに丸なげされてる。

 ぐたいてきなシステムというか、仕組みがあるワケじゃない。定量化や定型化、ルーティン化することが、まったくできていない。

 だから、毎回、カナリの部分がテキトウに、それこそ目分量で、あいての資産・財産をキメて、ソレを徴収している。

 このせいで、毎回、徴収することがデキる額がアイマイになり、カナリ変動がはげしい。一定の額を徴収するっていうことが、まったくデキていない。

 でも、第1地区・第2地区のニンゲンは、第4地区のニンゲンのことを、ケガレたニンゲンとして忌み嫌い、差別してる。だから、そのあいてにかんすることを、マジメにやろうとしない。

 オレたち第3地区のニンゲンにたいして、カンゼンに丸投げしてくる。だから、毎回、第3地区のニンゲンは、第4地区に住んでるニンゲンにたいして、テキトウな判断基準でもって、税金額をキメている」

「おっしゃるとおりです」

 藤柴が答えた。

「でも、第1地区・第2地区のニンゲンは、可能なかぎり、たくさんの税を徴収したい。だから、ソレを第3地区のニンゲンにもとめてくる。

 でも、そもそも第4地区に住んでるニンゲンは貧しいから、それほどたくさんの税を、徴収することはできない。

 ソレで、結局のところ、徴収することがデキる税の額が、毎回、カナリ違ってくることになる。じゃあ、なんでこういう状態になるのかっていうと、そもそもの前提として、『第4地区に住んでるニンゲンのダレが、どういう資産・財産というものを、どれだけ持ってるのか』っていうことを、まったく把握することがデキていない。だからこそ、こういう不安定な状態になってしまう。

 こういう状態になってしまう、理由・原因として、第4地区に住んでるニンゲンにたいする、きびしい差別の感情がある。

 ということもあるが、それだけじゃなくて、個人の財産・資産っていうものを、きびしく制限・規制している、公有党の掲げる思想・価値観・かんがえかた・理念・信条・イデオロギーが、おおきくかんけいしている。

 個人の財産・資産というものを、きびしく制限・規制している以上、個人がどういう私有財産・資産を、どのていど持っているのか。

 ということ自体を、チャントしらべず、把握しようとはおもわない。そういう視点・かんがえかた・発想・スタンスにならない。

 そうならず、『私有財産・資産ってモノは、キホン的にはみとめられない。だから、ダレが、なにを持っているのかなんて、イチイチ調べたり、把握するひつようはない』というカタチになってしまう。

 だがしかし、税はたくさんほしいから、『とりあえず、そこにあるモノを、目に映るモノを、なんでも取ってしまえ』という、視点・かんがえかた・発想・スタンスになってくる」

「徳吉さんのおっしゃるとおりですね。第4地区に住んでるニンゲンにたいする税の徴収は、毎回、ほとんど目分量というか、カナリの部分がテキトウだとおもいます。

 そのために、税をはらう側としても、つよいフヘイ・フマンを持ってるはずです。というよりも、オレと高井が、彼らと会ったり、ハナシをするときには、そういうことを、よくミミにしますし」

「この世のなかに、税を好きこのんではらうニンゲンなんてのは、まずいないんだけど。その上、毎回じぶんが、どれだけの税を取られるのかが、事前のだんかいで、サッパリわからない。こういう状況だったら、ダレだって、つよいフヘイ・フマンを持つだろうし。

 ソレに、視点を変えてかんがえてみれば、徴収する側としても、毎回、どのていどの税を、徴収することがデキるのか。イザやってみないと、コレがサッパリわからない。っていうことは、不安定だし、あまり好ましくない。

 だからオレは、第4地区に住んでるニンゲンにたいして、ひとりひとりが、どのていどの資産・財産を持っているのか、ソレをデータ化すべきとかんがえた。ソレで、そのことを、上にたいして提案したんだよ。ソレが、この書類ってことになる。

 税を徴収する側としても、コレがハッキリしてれば、『ダレから、どのていどの税を、徴収すれば良いのか』っていうことが、あるていど、事前にわかることになる。

 そうなれば、『イザやってみたら、予想以上にすくなかった』と、こういう事態を、ふせぐことにもなる。

 もっといえば、事前のだんかいで、どのていどの額になるかわかる。だから、徴収する側としても、予算を立てやすくなる。

 コレを、双方から見てみれば、はらう側としては、事前にどのていどはらえばいいのか、大体の額がわかる。だから、予想以上に取られるケースをふせげる。

 そして、徴収する側としては、『あつめた額が、予想以上にすくなかった』っていうケースを、ふせぐことになりやすい。

 だからこそ、いちおうは、双方にとって、メリットになるとかんがえて、第4地区に住んでるニンゲンが持ってる資産・財産を、データ化して、保存すべきとかんがえた。で、ソレを提案したんだけど。そのときは、ぜんぜん取りあげられなかった」

 徳吉の発言にたいして、藤柴と高井は、うなずきながら聞いていた。そして、それまでだまっていた高井が、口をひらいた。

「徳吉さんのかんがえたことは、今までテキトウで、大ざっぱにおこなわれてたことを、うまくまとめて、組織化というか、システム化することになりますよね。

 でも、結局のところ、第4地区に住んでるニンゲンにたいする、偏見というか、差別の感情がつよくて、実現されなかった。

 なぜならば、彼らの持っている資産・財産を、くわしくしらべるっていうことは、彼らと何度も会ったり、接するっていうことになる。

 でも、彼らのことを、汚れたニンゲンとおもってる以上、その汚れたあいてと、何度も会ったり接することを、イヤがるはずですし。

 われわれ第3地区のニンゲンも、彼らにたいしては、つよい偏見や、差別の感情を持ってますからね。

 ソレに、もっといえば、コレをイザおこなおうとすれば、カナリの時間、労力、手間ヒマをかけなければならない。つまり、とてもメンドウ臭い。余計なシゴトが増えるとかんがえる。

 だから、彼らにたいして徴税業務をおこなっている、第3地区のニンゲンであっても、ダレもコレをやりたがらない」

「そのとおりだよ。高井くんのいうとおりだ。オレがこの書類をつくり、データ化を提案したときも、はんたい意見がたくさんでたけど、大体は、そういう内容だった」

「でしょうね。でも、徳吉さんがつくったこの書類を読んで、ホントウに、コレを実行しようっていうニンゲンがでてきたんです」

「ソレが、君たちってワケかい?」

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