引きこもり虫の旅行~2日目~
「海苔ー」
「海苔ー」
「の……」
「何してんの十七歳」
おはようございます。静岡から凛音です。
いやー流石磯ですね。月海と風柳と共に海苔コールから入ったら見事に突っ込まれました。
神宮寺さんは初顔合わせくらいにガチガチになってます。
理由はと言うと昨日の夜に戻りますが以前私達は普通に男女混合で着替えもするし、混浴もすると話したことがありましたね。
ただしそれは三家だから言えたということを改めて身に染みました。
「神宮寺さんお風呂入りましょう」
「……はい?」
平然と言う麗子姉さんや月海。それにツッコまない男性諸君。
ちなみに部屋も二人部屋ですが女の子は女の子みたいなのはありませんし、混浴です。同部屋です。
それを言うと流石の神宮寺さんも引いたらしいです。
「え、入らないの? じゃあ風柳入ろ」
「じゃあ?」
ついで感満載だね。神宮寺さん混乱しないで。これが普通なの。双子だからとかじゃないの。
「ふ、普通。これが普通これが普通これが」
「洗脳じゃないから」
とりあえず神宮寺さんは正宗兄さんに託して私は華ちゃんとまこちゃんとお風呂に。
広いよ。力士が三人入ってもまだ二人分は残ってるくらい。
あ、力士さん申し訳ございません。決してディスってる訳ではないのです。
その後はおしゃべり会。
仕事でお疲れな二人と興味のない吉宗兄さん、それとじいさんみたいに早寝早起きな桃李兄さんは即刻退場。兄さんが空気化してるのってじいさんくさいからじゃない?
私も退場したかったけど神宮寺さんに引き止められちゃったらね。
そんなこんなで今に至る。この頃読書時間が減ってイライラしてたんだけどまあ神宮寺さんがいるからいいね……何がいいんだ? ま、いっか。
「静岡の観光地って言うとどこなんですか?」
「さあ。観光地って言うより市場を回る感じです。お土産とかもそこで買います。漬物とか」
「友達に漬物買うの?」
「友達いませんよ」
神宮寺さん憐れみを浮かべないで。
作れないんじゃなくて作らないだけだから。
あ、でも佐藤君には買っていった方がいいね。佐藤君は友達なの?
「佐藤くんって何が好きなんだろうね月海」
「……佐藤くん?」
「あーあー! こっちで見てみよっか凛音!」
引きずられていくぅ。なんで、別に説明すればいいじゃないの。
「神宮寺さん。悪気はないから許してあげて」
「は、はい」
正宗兄さん何のことー?!
「佐藤くんは遠征中で中々帰ってこれないと思うから日持ちする物がいいよね」
「じゃあやっぱ海苔?」
「お菓子って言う手はないの?」
ああ。じゃあチョコとかクッキーとか? 甘いの好きかな?
「ていうかメールしてみりゃいいじゃん」
「あ、そうだったわ」
えーっと、『突然すいません。甘いのは好きですか?』
送信。すぐには返ってこないか。その内に私達は色々見て回った。
「……大きな本屋」
「凛音ー!」
家の書庫の何倍あるんだろう。
ああ、ここを丸ごと買い取れたら良いのに。
今度の誕生日プレゼントにねだろうかな。
「……僕の書庫もこれくらいだよ」
「是非行かせてください!」
「何でテンション上がってんだよ本の虫!」
えへへー。あ、返信来た。なになに?
『君の手作りなら何でも美味しいさ♡』
「「……」」
月海と呆然とする。
「これは……多分誰かのいたずらだね」
「だよね。佐藤くんがこんなの打つわけ」
ピロリン!
『すまん今の部の奴らがやった。甘いものは嫌いではない』
あ、やっぱり。うーんどうしようかな?
「音ちゃん。私も健くんに買っていくからどっちも買おうよ。健くんも甘いの好きみたいだし」
「あ、うん」
そうだここに我が可愛らしい妹がいたではないか。
忘れてたよ。ところでさっきから六条家メンツがいないんだが。
確か三十分前にはそこにいたはずだけど。
「まこちゃん。六条さんは?」
「ん? あれ、どっか行ったのかな? 桃李もいないし」
「まこちゃんいるから。桃李兄さんは君の隣にいるから」
あの四人って嫌な予感しかしないんだけどさ。
「とりあえず呼んでみよっか」
携帯で月海は愛子姉さんに。私は正宗兄さんに。怖い怖い怖い。
『もしもし?』
「正宗兄さん今どこ?」
『どっかの路地裏の中。愛子達もいるからそこで待ってて』
「……何してたか聞いてもいい?」
『駄目』
通話が切れた。正宗兄さんが話をはぐらかす時は必ず……ね?
真夏でかく汗じゃないなこれは。悪寒がする。
「もうやだ怖いよあいつら!」
「月海落ち着いて。てか何であんたは愛子姉さんにかけたのよ。あの人の怒りは半端ないでしょうが」
その後合流して磯日刈りしたり試食したりして一日を過ごしました。
うん、私は見てない。
正宗兄さんと愛子姉さんの指に付いた赤いものなんて見てない。




