引きこもり虫の旅行~1日目~
「うーみ! うーみ!」(凛華)
「凛華。月海と風柳連れていきなさい」(麗子)
「え、なんで? 私だけで凛華守れるよ?」(月海)
「身長身長」(風柳)
「誰だ今の言ったやつは!! 桃李ちゃん見てた!?」(月海)
「風柳?」(桃李)
「皆日焼け止め塗らなくていいの?」(真)
「お前は気にしなくていいだろ」(吉宗)
「読書できないからもう少し静かにしてて……」(凛音)
「「「本を読むな!!」」」
ああ取り上げられたぁ。つーかまとまりねえなおい。
二人いないとこんなものか……あ、いや二人いてもこうだな。うん。
「全くもう。誰が仕切ればいいのよ」
「多分お前だぞ麗子。一番年長なんだから」
「桃李は!?」
「僕は空気になってるよ」
待て待て溶け込むな溶け込むな。待って溶け込むって何!?
「あの、僕は何をすれば」
「ごめんなさい神宮寺さん。これが普段なんで慣れてください」
「は、はい」
不安そうですよ彼。でも散らばっちゃえばいいんです。
今はパラソルの中にいるけど。全員パラソルの中にいるけど。
狭い!! 二つあっても狭い!!
「遊びに行かないの皆?」
「読書してる奴が言うな。日焼け止め塗らないと後が大変だからそうしてるの。すぐに入るよ」
「すぐには入っちゃ駄目だよ月海。ちゃんと浮き輪持って……」
「喧嘩売ってんのか!」
売るな。そして買うな。
「あなたもちゃんと入るのよ凛音。桃李、荷物番頼んでいい?」
「良いよ麗子」
「荷物番なら私」
「り・ん・ね?」
すみません。従います。だから黒いオーラを出さないでください。
そうして華ちゃんと麗子姉さんと私で海に入った。
「ねえねえ音ちゃん! 競争しようよ」
「……やだ」
「えーなんで? やろうよやろうよ!」
だって華ちゃん水泳が一番得意科目じゃん。
部活には入れさせないよ? だってうち共学だし。
わかるよね? ね?
「凛華。これに乗ってみて」
そう言って麗子姉さんが取り出したのはバナナボート的なやつ。浮き輪にも似てる。
「こう?」
「そう」
あ、めっちゃ可愛い。何かラッコが浮き輪持ってぷかぷか浮いてるみたい。
そのきょとん顔がまたグッド。本人はまあわかってないけどね。
「可愛いね凛華ー。こっち向いて」
「んー?」
防水の携帯ですか。後で送信してね。
鼻血の洪水が起きる気がするけど。
「あ、ねえねえバレーボールやらない?」
「「やだ」」
「何で!?」
「「怖いから」」
これに感しては後で言います。でも怖いんです。
「バレーボールやりたい……吉宗ちゃん」
「却下」
玉砕。お昼ご飯タイムです。
焼きそばうまうま。肉は渡……すみません食べます。睨まないで。
「スイカ割りしないの?」
「愛ちゃんが持ってきてくれるって。だから夜食べよ」
スイカね。あれすごい汁が出てくるから本が読めないんだよな。ん?
「神宮寺さん何書いてるんですか?」
「うん? ああネタになりそうなものは片っ端から書いていってるんだよ。今も新ジャンルで悩んでるところだし」
「「恋愛? 恋愛?!」」
「え、いやあの………」
何希望してんだあんたら。
でも海って言ったらまあ青春系? あ、でもミステリーもいいしホラーも。
やっぱり恋愛が定番かな。
「官能とか書くの?」
「何聞いてんの麗ちゃん!」
「官能って何まこちゃん」
「知らなくていいんだよ華」
耳を塞げまこちゃん。華ちゃんにはまだそれは早い!
神宮寺さんも頬赤らめないで。乙女かあんたは。華ちゃんと同じくらいの純粋か。
「あー皆。売店行ってくるけど何か欲しいものある?」
「凛音を連れてけ」
「ホワイ?」
有無を言わさず連れてかれた。何故って聞いてんだから答えろよ。
ん? 何か視線を感じ……
「桃李にいさーん」
「どうしたの凛音」
捕まっちまった。ガラの悪いヤンキー四人に。
あの、そんな憐れんだ目を向けないでください。
私だって不思議だよ。なんで姉さん達より私を連れて行こうとするんだよ。
「全く。おい、その子を離……」
「あっちにも美人がいたよな。こいつ囮にして全員ゲットしちゃおうぜ」
桃李兄さんほんとに可哀想。
そんなに影薄いかな? で、連れ去られぇ。
「ねえお兄さん。私とバレーボールで対決しない?」
桃李兄さんが「すまん。まじすまん」と言ってるのを横目で見ながら全くと言っていいほど“優しさ”が込められてない笑顔でヤンキー達に麗子姉さんは言う。
兄さんは悪くない。空気の濃さが悪いんだよ。
「へえ。お姉さんが一人でやんの?」
「バレーは一人じゃできないでしょ? 吉宗ちゃんおいで」
「だから何で俺なんだよ」
「この二人とあなた達四人でいいよ」
残りの人は全員傍観者。私はそもそも捕らえられてるからちょっと離れてるけどね。暑い。私も日陰に入りたい。
ていうかここで逃げてまこちゃん達の背中に隠れていれば問題ないじゃん。なんで私のこと野放しにしてんの?
あ、誰か神宮寺さんに説明してあげて。麗子姉さんのこと言ってないんだわ。オロオロしてる。
「じゃあ行くよ。そーれ!!」
ボールは勢いよくヤンキー一人の腹に命中。そのまま彼は意識を手放した。
「え?」
「神宮寺さん凛音から聞いてないの? 麗ちゃん高校でバレーボール日本代表に選ばれたんだよ」
「え!?」
あ、説明してくれたのね。
日本代表っつーかあんな剛速球誰が受け止められんの。
さっき私達がバレーを拒否したのもこのせい。
姉さんって本気になると誰でも力入れるから。
ついでにシスコン魂に火が付いてるので今のように全員に当てるまで終わりませんでした。
しかもその時の麗子姉さんは悪魔でした。
「あー楽しかった。そいつら海にでも捨てておいて」
「はいよ」
六条家怖い。これであの二人いたらどうなってたんだろう。想像したくもない。
そしてその日の夜。
「やっほー皆ぁ。楽しんできたぁ?」
愛子姉さんと正宗兄さん到着。大きなスイカを持ってきてくれました。みずみずしくて美味しそう。じゅるり。
「麗ちゃんがヤンキーをふがふが」
華ちゃん言うな! それ言ったらアウトだから! 危ない!
「麗子ちゃぁん何かしたのぉ?」
「う、ううん。フツウニミンナデアソビマシタ!」
カタコトになってる。こんな姉さん久しぶりに見た。怖いよね。わかるよ。
「明日はどこに行くの凛音さん」
「次は観光地巡りです。暑いけど」
それでは一日目終了。




