~ニンギョヒメ~1
第一話です。
・雨のお姫さま
カレンダーは夏の暑さが始まる六月。空全体を鼠色の重たそうな雲がどんよりと覆っていく頃、梅雨の空模様。
今日は朝からぽつぽつ弱い雨が振っていた。
家を出る前に見た天気予報によると、一週間のうち五日間は雨の日が続くとのこと。
お天気お姉さんが、梅雨入りの発表をしていたのをわたしは覚えてる。ついに来てしまったのだ。
梅雨という季節が。
この時期になると、梅雨だからって雨ばかり降らさなくても良いのに、と私は思うようになる。
朝から雨が降ると、その日は憂鬱な気分で始まるから。
梅雨は、陰湿な湿気が肌に纏わりついて嫌だ。
髪をセットしても、なかなか言うことを聞いてくれないのが嫌。
雨が降った日の電車なんて、もう最悪。
狭い車内に押し込まれた上、隣の人との密着度が半端じゃない。
みんな濡れた傘を持っているから当然のように服は濡らされるし、ベタベタした他人の肌と自分の肌が触れてしまったときなんて、あとにも続く気持ち悪さ。
湿気のおかげで肌が乾燥しないのは嬉しいけれど、嫌なことがあまりに多すぎる。
だからこの梅雨の六月という季節が、私は好きじゃない。
たぶん、嫌いと言ってもいいくらい。
「はぁ」
ほら。こんな風に自分でも驚くくらいの大きなため息だって、すんなり出せる。
もう、ほんとうに最悪なんだから。
こんな天気は早く終わって、夏の空になってくれないかな。
湿気が消えて、気持ちのいい天気になって欲しいな。
それが、目下私の願うことだった。
自分勝手なのはわかってる。
けど、お願いするくらいはさせて欲しい。
「よし。これでいいかな」
駅のトイレに入り、私は鏡を見ながらせっせと髪を整えた。
直しても、髪がすぐにふわっと浮いてくるけど、これはもう直しようがない。
全体的に見て不自然でなければ、今日はそういう髪型にセットしたということなのだ。
そんな言い訳を自分自身によく言い聞かせながら、私は学校に向かった。




