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-プロローグ-

 

 雨の降りしきる梅雨、青く色づいた紫陽花の咲くうら庭。

 ぽつんと人魚姫はいた。

 滝のように降る水で全身を濡らし、呆然と立ちつくして。

 

 

 声をだすことなく。

 誰かを待っているわけでもなく。

 ずっと、ずっと。

 辛抱強く王子さまを想っている。

  

 

 彼女が引き換えにした素敵なものは何だろう。

 言葉なのか。

 心なのか。

 それは誰にもわからない。

 彼女だけが知っている。


 

 だから彼女の心があふれても、誰に気づかれることはない。

 空から落ちてくる水とほおを伝う水は、まったく同じなのだから。

 水は重く、冷たく打ちつける。

 人魚姫の心を、さらさらさら跡形もなく、洗い流すまで。


童話になぞらえてみたお話です。

楽しんでいただければ、幸いです。

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