121 ふたりは世界を観察したい
世界を救ってから数日
ロキシーは宣言通りタイヨーと旅をしています
最終回、是非楽しんでください
最終話 はじまります
空は青く晴れ渡っています
草原を揺らす穏やかな風は、とても心地がいいです
北部の街から街道を南下する馬車が1台
御者台にはジロさんとタイヨー
馬車の中には談笑するロキシーとユキ
馬車に並んで紅炎が乗る馬が歩きます
あの王都での騒動の後、スミス王とタイヨーは話し合いました
ロキシーの活躍をどう説明するかについて、いろいろ考えは出ましたが、スミス王は結局『ロキシーは東部の街にいた。あれはロキシーによく似た女神ではないか?私は知らんぞ。』と言い切るそうです
そうして、王都の騒動をスミス王に丸投げした彼らは、北部の街で作成を依頼していた冷却容器に蛇口の付けたもの、すなわちビール専用の冷却容器が完成したので、買い取りに行ったところでした
これを作った北部の村人は、自分達で作った容器にビールを入れて飲んで自画自賛
ジロさんにもっと作っていいか?と問い合わせが殺到
ジロさんはそれを快く了解しました
ジロさんもタイヨーも独占する気などありません
美味しいビールは、皆に飲んでほしいから
しばらく進むと、怪しい集団が現れました
どうやら盗賊のようです
「おい!おまえら!馬車と女を置いて消え去れ。じゃなきゃ痛い目をみるぞ!」
ニヤニヤしながら近づく集団
「なんだかこういうやり取りも久しぶりですね〜世界の終焉に比べたら、とても可愛らしいね。」
「そうだね。魔獣には抑え込んでも分かる強者の気配も、盗賊には分からないみたいね〜」
ジロさんとタイヨーは笑い合いました
「お!おまえら!ふざけてるのか!?殺すぞ!」
盗賊達のヘラヘラした顔が、怒り顔に変わりました
「あーはいはい。ごめんね。さて……ここはユキにお願いしていいかな?」
タイヨーが言うと、ユキが馬車の中から出てきました
盗賊達はユキのあまりの美貌に息を呑みました
「そうですね。まぁ半日ほど眠っててもらいましょう『氷の息吹』」
あっという間に盗賊達は氷像になってしまいました
「ロキシー、盗賊達を木のツタで縛っておいてもらえる?」
「わかりましたわ。」
そう言うとロキシーは、ライアから教えてもらった魔法でツタを操り、盗賊達をグルグル巻きに縛り上げました
「さて、出発出発っと。」
何事もなかったかのように馬車は発車しました
馬車は王都に到着しました
タイヨーの顔を確認した門兵さんのひとりが王城に走っていきました
「こんにちは。」
タイヨーは門兵さんに挨拶しました
「お久しぶりですね、タイヨー君。」
すると門兵さんは小声になり挨拶します
「ロキシー様もよくおいでいただきました。皆様もようこそいらっしゃいました。」
ロキシーは笑顔で挨拶しました
しばらくするとノルディカ副騎士団長がやってきました
「久しぶりだな、タイヨー君。そして王女もお元気そうで何よりです。」
「お久しぶりです。ノルディカさん。ところで……あの噂はまだ収まりませんか?」
ロキシーが恐る恐る聞きました
「収まるどころか、あの時の王女の活躍が今や吟遊詩人の歌で大人気、演劇も上演され毎日満員御礼ですよ。王城からはあれは王女とは別人だと発表していますが、誰も信じていませんね。」
そう言って笑うノルディカさん
ガックリと肩を落とすロキシー
「ところでタイヨー君、今日はどうしたんだい?」
「はい。ビールを仕入れて南部の温泉街に持っていくんですよ。」
「なるほどな。私も同行したいものだよ。」
そう言ってノルディカさんは笑います
「長期の休暇でも取れたら行きましょうね。無理でしょうけど。」
タイヨーが、残念そうなフリをして言いました
ロキシーが笑ってます
「まぁその時は頼むよ。で、仕入れだったな。私も護衛に同行するよ。今や大人気の王女が、民に囲まれたら身動き取れなくなるだろうからな。」
「ありがとう御座います。助かります。」
そうしてタイヨー達はビールを仕入れに行きました
仕入れは、ノルディカさんと紅炎の鋭い眼光を前に、皆が目を逸らすためロキシーの存在は知られず、無事に買い物を済ませることが出来ました
そして買い物を済ませ、早々に王都を出発する事にしました
「王女、たまにはスミス王に顔を見せてあげてくださいね。」
「はい。今回の行商から戻ったら伺いますね。」
ノルディカさんに別れを告げ、王都を後にしました
タイヨーがロキシーに聞きます
「本当に王城に寄らなくて大丈夫だったの?」
「はい。今、王城に寄ったら、何日も滞在しなくてはなりませんよ。」
そう言ってロキシーは笑いました
その後、報告を受けたスミス王が、とても悔しがっていた事は、宰相さんとノルディカさんしか知りません
その後の旅はとても順調で、しばらくして南部の温泉街に到着しました
ここは相変わらず温泉の湯気がモクモクしている街です
馬車はジロさんの馴染みの温泉宿に到着しました
ジロさんが早速声をかけます
「こんにちはー、いるかい?」
しばらくすると、奥から店主さんがやってきました
「久しぶり!ジロさん。ここに来たってことは完成したのかい?」
「ああ。とりあえず完成したぞ。是非使ってみて意見を聞きたいよ。」
そう言って馬車の荷物を見せました
「じゃあ早速試飲といきましょうか!」
ニコニコの店主さんに、皆は後をついていきました
早速乾杯する店主さんとジロさん
「プハー!これは美味い!王都から持ってきたんだろ?それなのにここまで冷えているなんて凄いな!」
「気に入ってもらえて何よりだよ。」
ジロさんは満足そうに答えました
「日持ちもするようだし、とにかく全部買うよ!今日は泊まっていくんだろ?ゆっくりしていってよ。皆さんも温泉とお食事を楽しんでいってくださいね。」
その日の温泉街は大騒ぎ……にはなりませんでした
前回は紅炎のあまりのイケメンに女性陣が大騒ぎでしたが、今回は隣にユキがいます
もう超絶の美男美女のため、誰も声をかけることが出来ません
大騒ぎでは無く、羨望の眼差しで注目の的でした
「紅炎さま。私が寄り添って貴方も鼻高々でしょう?」
ユキが微笑みながら紅炎に言います
その微笑みで男性客達は息を呑みました
「そうだな。まぁユキ殿のおかげで騒ぎにならずに助かったよ。」
紅炎も微笑み、ユキに返答します
その微笑みで女性客達が数人フラフラと倒れました
結局騒ぎになりました
おかげでロキシー王女には誰も気が付きません
皆は美味しい夕食と温泉を楽しみました
食事と温泉を楽しんだ後、タイヨーとロキシーは部屋に戻り、窓から夜景を眺めていました
ロキシーが街並みを見ながら話します
「温泉とは素晴らしいものですね。あまりの心地よさに、すっかり長風呂をしてしまいました。」
ロキシーの肌は火照っているようで、薄く朱に染まってます
「ロキシーは温泉は初めてだったよね。喜んでもらえて良かったよ。」
タイヨーはマグマの中でも平気な身体なので、長湯をしても変化はありません
「タイヨー君と出会ってから私の世界は一変しました。もちろんいい意味でですよ。いろいろな体験をしました。神さまの力まで得てしまいました。でもおかげで人々を守る事が出来るようになりました。」
「聖女って呼ばれるようにもなったしね。」
「もう!タイヨー君たら!」
タイヨーが少しからかうように言うと、ロキシーも怒ったように言い返しました
「でも人々が感謝の思いで聖女さまと言ってくれるのを、私が否定するのは何か違う気もしますね。ただ何かタイヨー君にうまく利用されている気がしないでもないのですが。」
そう言ってロキシーは目を細め、タイヨーを睨みました
タイヨーは慌てて否定します
「そ、そんな事はないよ……たぶん……」
するとロキシーは、タイヨーに顔を寄せて上目遣いに言いました
「私に申し訳ないと思うなら……今、ここでお詫びをしてください……」
そう言ってロキシーは、顔を真っ赤にしながらタイヨーに向き、目を閉じました
「…………。」
タイヨーは困りました
ロキシーが何をしてほしいのか、まったく見当がつきません
タイヨーは青い惑星に降りてから、未だに恋愛についてまったくの無知だったのです
分からないので聞くことにしました
「……あの〜…ロキシー……何をすれば……」
すぱーーん!!
「イタタタ……」
タイヨー、何者かに頭を叩かれました
後ろを見ると、そこにはハリセン片手に仁王立ちのライア
いつもの三角の目では無く、般若の顔をしています
恥ずかしさに顔を手で覆い、しゃがんでしまったロキシー
何が何だか分からないタイヨー
「いったい僕が何を……」
「だまらっしゃーい!」
床に正座をしているタイヨー
その前には般若のライアとディーネ
後ろにはロキシーを慰めるユキ
「タイヨー様!貴方は何をやってるんですか!」
「何と言われても……何をしていいのか分からなくて聞こうかと……」
タイヨーの答えに、ライアとディーネが心底呆れたように、ため息をつき言いました
「貴方はどれだけこの青い惑星を観察してきたんですか!?いくら悠久の時を生きる存在だからって、ノンビリするにも限度があります!女性があの表情になったら何をしてほしいか決まってるでしょ?キスですよ、キス!」
タイヨーに知らない言葉が出てきました
「キス?とは?」
ライアがキレ気味に言い放ちます
「口と口をくっつけてブチューっとすればいいんです!はい!やり直し!私達は元の場所に戻ります!」
そう言うと3人は、そそくさと扉から出ていきました
扉は少し開いていて、3人の顔が半分覗いてます
部屋に残されたのは引き攣った顔のタイヨーと、両手で顔を覆ったままのロキシー
「やり直せるかーー!」
タイヨー絶叫
「大体ライア達は何時からいたのさ。行商にはついてきてなかったじゃん!」
すると、ライアが胸を張って言いました
「ユキ様から今から面白い事が起きると聞いて、急ぎ瞬間移動してきましたわ。」
ユキを睨むと、可愛い顔で舌をペロッと出しながら言いました
「タイヨー様、ゴメンね。」
タイヨーは、3人を追い出して扉の鍵を閉めました
そしてロキシーのところにいきました
「ゴメンね、ロキシー。僕が何も知らないばかりに恥ずかしい思いをさせちゃって。」
ロキシーに誠心誠意謝りました
「いえ、タイヨー君が悪い訳じゃないんです。私も唐突でした。ごめんなさい。」
「ロキシーが謝る事じゃないよ。でも……僕は、まだまだ知らない事が沢山あるようだね。もっといろいろ知らなくちゃ駄目だと、よく分かったよ。」
するとロキシーは微笑んで答えました
「タイヨー君だけじゃないです。私もですよ。これから2人で、もっと世界を観察していきましょう。」
「そうだね。僕たちは悠久の時を生きる者。ゆっくり2人で世界を、人々を観察していこう。」
そして2人で笑い合いました
ー終わりー
「神さまは世界を観察したい」ひとまずこれにて完結です
6月の入院をキッカケに始めた執筆と毎日の投稿
初めての物語作成に大変ながらも楽しく挑ませていただきました
ここまで読んでいただいた方には本当に感謝の言葉しかありません
ありがとうございました
ひとまず物語は終わりましたが、また旅の続きを書き溜めて、形になってきたら投稿したいと思います
とりあえず完結したことで短編の「ロキシー王女の日記」の後編を書きたいと思います
よかったらまた見てくださいね




