ギデオンとの食事会
新作はじめました!
『スキルツリーの解錠者~A級パーティーを追放されたので【解錠&施錠】を活かして、S級冒険者を目指す~』
https://ncode.syosetu.com/n2693io/
自信のスキルツリーを解錠してスキルを獲得したり、相手のスキルを施錠して無効化できたりしちゃう異世界冒険譚です。
小ダイニングルームに向かうと、ミスフィード家の面々が初日と同じような順番で座っていた。違いがあるとすれば、シューゲルの隣にギデオンが腕を組んで腰かけていることだろう。
俺たちが席に座ると、シューゲルが口を開いた。
「遅れながら紹介しよう。私の息子であるギデオンだ」
「ギデオン=ミスフィードだ」
普通は挨拶が遅れて申し訳ないなどの定型文が入るのだが、ギデオンの口からそのような言葉が出てくることはなかった。
シューゲルがもうちょっとマシな口上はないのかとばかりに小突くが、ギデオンは眉間にしわを寄せるだけだった。
「はじめまして、ノルド=スロウレットと申します」
「妻のエルナです」
「次男のアルフリートです」
不愛想なギデオンな態度を気にすることなくノルド父さん、エルナ母さんが軽く自己紹介をし、最後に俺が乗っかっておいた。
顔合わせといっても主に交流するのはノルド父さん、エルナ母さん、シューゲル、ギデオンの四名だ。
幼い子供である俺、ラーちゃん、シェルカは適当に相槌を打ったり、たまに振られる質問にだけ答えていればいい。実に楽なものだ。積極的な交流は四人に任せよう。
軽い自己紹介が終わると、メイドたちがワゴンを押して入ってきてテーブルに料理が並んでいく。
ほうれん草のポタージュ、山菜と細魚のサラダっぽいのに、サーロインステーキ、白身魚のムニエルなどと全体的にフレンチっぽい雰囲気だ。
こういったコース料理はあまり屋敷などでは食べないのでちょっと新鮮。
初日と同じようにグラスを掲げて乾杯をすると、俺は早速匙に手を伸ばした。
まず味わうのはほうれん草のポタージュ。
匙ですくってみるととても綺麗な緑色をしているのがわかる。
そのまま口に運ぶとほうれん草の風味が鼻孔をくすぐった。
コクがあって、しっかりとほうれん草の甘みと旨みを感じられる。
臭みがなくて食べやすいのは恐らくタマネギ、ジャガイモといった他の具材も溶け込んでいるからだろう。野菜の力強い甘みが広がっていく。
身体にいい物を食べていると、なんだか心まで嬉しくなるな。
「エルナ殿は確か魔法使いであったな?」
呑気にポタージュを味わっていると、ギデオンがエルナ母さんに話しかけた。
他人に興味がないタイプだと思っていたが、自ら質問をしにいくなんて珍しい。
「ええ、昔は冒険者をやっておりました。今となってはほとんど引退したような身ですが」
爵位の高い貴族との交流もあってか、しおらしい返答をしてみせるエルナ母さん。
そんなことを言いながら少し前に魔法を使わずに、杖術だけでエリノラ姉さんを下していた。謙遜してはいるが、今でも第一線級の活躍ができることは間違いないだろうな。
「使える属性は?」
「火と水です。ギデオン様は?」
「火、水、風の三属性だ」
「三属性も使えるとはさすがですね」
「ミスフィード家に生まれたものとしてこれくらいは当然だ」
エルナ母さん、優しな笑みを浮かべて対応しているが内心では絶対に面倒くさがっているだろうな。爵位の高い貴族の対応とか一番苦手だろうし。
「シェルカ様とラーナ様も三属性を?」
そんな妻の内心を悟ってか、ノルド父さんが助けに入る。
こういうことがあっさりとできるからノルド父さんはモテるに違いない。
「私は火、風、水を」
「えーっと、私は風と土と無!」
ノルド父さんが会話を振ると、シェルカとラーちゃんも食事の手を止めて答えてみせた。
会話の流れ的にこちらにも振られそうだな。マズい。
ギデオンたちは三属性使えることを誇りに思っており、自慢げに語っていた。
ここで俺がそれ以上の属性を使えると知られると、マウントを取っていると思われかねない。
混ざると面倒事になりそうなので食事に集中して振らないでくださいオーラを振り撒いておこう。
山菜と細魚のサラダを味わう。
立体的に盛り付けられた山菜を口にすると、シャキシャキとした食感が響き渡った。
何十種類もの山菜や野菜が混ざっているのがわかる。それぞれ微妙に食感が違って面白い。
酸味と甘みのある柑橘系のソースとの相性も抜群だ。
盛り付けられた細魚も口に含むと、薫香がフワッと広がった。
……燻製だ。まさか細魚が燻製されているとは思わなくて驚いた。
久しぶりに燻製料理を食べたけど、とても香ばしく味わいに深みが出ていて美味しい。
家に帰ったらバルトロと一緒に作ってみたい。
そのために情報を仕入れよう。俺は後ろに控えているミスフィード家のメイドを呼び寄せる。
「この細魚の燻製には何のチップを使っているんです?」
「リンゴです。柔らかな香りをしているので、鶏肉や白身魚などクセがなく淡泊な食材とよく合いますよ」
尋ねてみると、にこやかな笑みを浮かべて答えてくれた。
料理の概要だけならともかく、使っている素材のことまで把握しているのか。
さすがは公爵家のメイドだ。レベルが高い。
「アルフリートは――って、なにうちのメイドと話し込んでるのよ?」
「ちょっと燻製に興味があって」
「相変わらず変ね」
そんな返答をすると、シェルカは呆れたようにため息を吐いた。
俺のすっとぼけた態度を見て、話を振るのも馬鹿らしくなったようだ。
燻製の知識を仕入れた上に、面倒な属性の会話も回避することができた。一石二鳥だ。
見事な回避術に満足していると、ラーちゃんのグラスが危うい位置に置いてあるのが見えた。
このままだと腕を引っかけてグラスを落としちゃいそう。
「ラーちゃん、グラスが落ちそうで危ないよ」
「えっ? あっ――」
よかれと思って注意したのだが、かえってそれがよくなかった。
右側を見ようと咄嗟に反応したせいで、ラーちゃんの右腕がグラスに当たってしまう。
「『サイキック』」
グラスの破砕する音を覚悟した俺だったが、ラーちゃんはすぐに魔法を発動。
落下するグラスを途中で静止させ、しかも中身をこぼすことなくテーブルの上に戻してみせた。
「おお、すごいじゃん!」
「さっきまでたくさん練習してたから。えへへ」
魔法発動速度の早さを褒めると、ラーちゃんは嬉しそうに笑った。
サイキックを日常動作レベルにまで高めろと俺は指導した。
さっき行った稽古にもかかわらず、即座に実践してみせたラーちゃんの成長に俺は感激した。
「ちょっと待て!」
俺たちの和やかな空気を壊すように、ギデオンが声を荒げて立ち上がった。
「どうしたのギデオン兄?」
異様な雰囲気に俺はビビっちゃったけど、ラーちゃんは慣れているのか平気らしい。
「今、詠唱破棄をしなかったか?」
「うん。したよ?」
「いつの間にそんな高等テクニックを習得したんだ!?」
「アルに教えてもらったー」
「なんだと!?」
ラーちゃんの返答を聞いて、ギデオンが鋭い視線をこちらに向けた。
なんだ? 詠唱破棄がそんなにすごいことなのだろうか。
無詠唱ならともかく、詠唱破棄くらいなら、ひとつやふたつの魔法くらい使えると思うのだが。
「ギデオン、食事中に声を荒げて立ち上がるなんて行儀が悪いですよ」
「今はそんなことを気にしている場合じゃ――」
「ギデオン? 言う事が聞けませんか?」
「……申し訳ありません」
フローリアが再度問いかけると、ギデオンは非礼を詫びて大人しく座った。
シューゲルの小突きには大して反応していなかったのにな。どうやらフローリアには頭が上がらないらしい。どこの家庭もやっぱり母が強いのだろうか。
ふとギデオンの方に視線を向けると、彼はずっとこちらを見ている。普通に怖い。
なんか使える属性数がバレるよりも面倒くさいことになった予感だ。
新作はじめました!
『スキルツリーの解錠者~A級パーティーを追放されたので【解錠&施錠】を活かして、S級冒険者を目指す~』
https://ncode.syosetu.com/n2693io/
自信のスキルツリーを解錠してスキルを獲得したり、相手のスキルを施錠して無効化できたりしちゃう異世界冒険譚です。




