プラン瓦解
短いですが、またすぐに更新します。
「はぁー、ゴロゴロするの最高。もう一歩も部屋から出たくないや」
半日外出すると、残った半日は家でゆったりするのが正義。
今日はもう変に屋敷の散策もせず、夕食もここで食べて、ひたすらにゴロゴロして一日を終えよう。
自分の中でパーフェクトなプラン立てながらベッドでゴロゴロとしていると廊下の方から二つの気配を感知。
「……む? これはノルド父さんとエルナ母さんの気配」
聞き覚えのある靴音、歩く時のリズム。何度も聞いていたが故に聞き間違えることはない。
二つの気配は俺の部屋に向かってきている模様だ。
あの二人が揃って押しかけてくる用件なんてロクなことがない。
俺はベッドの痕跡を消すと、そっとベッドの下へと潜り込む。
そのままスッと気配を消して佇んでいると、部屋の扉がノックされた。
「アル、ちょっといいかい?」
「…………」
ノルド父さんが声をかけてくるが、もちろんよくないので返事すらしない。
「おかしいわね? いつもならよくないとかくだらない返事が飛んでくるのだけど」
「そうだね」
息子の返答をくだらないとか言わないでほしい。
にしても、さすがはエルナ母さんだ。俺がいつもする返事をよくわかってる。
だが、今回の俺は甘くないぞ。
そもそも相手を見つけられず、会話すらできなければロクでもない用件も無意味と化す。
このまま用事が過ぎ去るまで隠れ潜んでやればいい。
今日はこの部屋から一歩も出ないって決めたんだ。出ないって決めたら出ない。
確かな決意を抱きながら隠密を決め込む。
「……いないのかな?」
ノックに反応がないことにより、ノルド父さんがそんな声を漏らす。
「もしかすると、ラーナ様の部屋で遊んでいたり、敷地内を散歩しているのかもしれないね」
「いいえ、それはないと断言できるわ」
「どうして?」
「あの子は朝から外出していたわ。くたくたになったアルは残りの半日は絶対に部屋から出ずにダラダラしようってプランを立てているはずよ」
完璧なまでに俺の思考をトレースしている。エルナ母さんが恐ろしい。
「そういうものかい?」
「あの子はそういうものよ」
人のことをそういうもの扱いすることに複雑な気持ちを抱くが、実際にそういうものなのでぐうの音も出ない。
「そういうわけで部屋にいるはずだから探すわよ」
エルナ母さんのそんな声と共に扉が開く音がした。
ノルド父さんが足を止めて部屋全体を見渡す中、エルナ母さんは迷うことなくベッドに足を向けてきた。
息子の棲息区域をベッドであると推定しているようだ。
それは正しいんだけど、もうちょっとソファーに座っている可能性やらイスに座っている可能性なんかも考慮してほしいものだ。
エルナ母さんが布団をめくるような音がする。
「……布団が温かい。確実に近くに潜んでいるわ」
くそっ、本来なら氷魔法を使って体温の痕跡を消すところなのだが、相手はエルナ母さん。どんなに魔力を微細なものにして感知してくるので魔法による隠滅はできなかった。
「だったら部屋の隅々まで探してみよう」
「大丈夫よ。もっと楽に探す必要があるから」
てっきりエリノラ姉さんのように勘で見つけ出すと思ったが、エルナ母さんには秘策があるらしい。
……なんだろう。
気になるがベッドの下から顔を出すわけにもいかない。俺にできるのはただじっとすることだけだ。
「スライム?」
「これはアルが大事に餌をやって育てているスライムよ。近くにアルがいれば、本能的に飼い主を求めて移動するはずだわ」
エルナ母さんがそう言ってスライムを床に置いた。
すると、スライムは俺に気付いたのかうごうごと不定形な体を動かしてこっちにくる。
バカ、こっちにくるな。
あっちへいけとばかりに手を動かすが、スライムには人間の意思を汲み取るような知能はない。
スライムがベッドの下に潜り込んでくるとエルナ母さんも顔を覗かせてくる。
「見つけた」
「わー、見つかっちゃった」
「かくれんぼはお終いよ」
「……はい」
にっこりとした笑うエルナ母さんには逆らえない。
これ以上手間をかかせれば、機嫌を損ねることになるのだから。
「どうして隠れたりしたんだい?」
ベッドの下から這い出ると、ノルド父さんが尋ねてくる。
「なんか面倒事の気配がしたから」
「鋭いわね。さすがは私の息子だわ」
「エルナ、そこは感心するところじゃないよ」
「で、こんな時間にどうしたの?」
「アル、今日の夕食はミスフィード家の方々とご一緒するわよ」
「え? なんで?」
貴族が他所の家にお世話になっている時は、顔合わせの日や帰り際に全員で食事を摂るのが慣例だ。だから次に全員で食事をするのは帰り間際だと思っていたので驚いてしまう。
「長男であるギデオン様が学園での研究に区切りがついたらしい」
一瞬、ミスフィード家に長男なんていたっけ? なんて思ったが、一昨日の夜くらいに一瞬だけ遭遇したことを思い出した。
「つまり、顔合わせが済んでないギデオン様のための晩餐会と……」
「そういうことになるね」
だったら同席させるのはギデオン一人でいいとも思うが、魔法にしか興味のなさそうな尊大な彼と四人で対話するのは中々に地獄なので、一家全員にしてもらった方が楽なのは確かだった。
「じゃあ、ダイニングルームに移動だね」
「そういうことよ」
どうやら俺が考えた最強のダラダラプランは早急に瓦解したようだ。
新作はじめました。
【魔物喰らいの冒険者】
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冒険者のルードが【状態異常無効化】スキルを駆使して、魔物を喰らって、スキルを手に入れて、強くなる物語です。




