お土産を買いまくる
春と修一と遊んだ次の日。
いつものように朝食を食べると、俺とルンバはカグラでのお土産を買うべく大通りへと繰り出した。
「今日は大通りの方だね」
「だな」
ここ最近は大通りから外れて神社のある山の方に歩いていたからな。つい、足が街とは反対方向に行きそうになった。
その事にルンバと笑い合いながら、俺達は人々が行き交う大通りへ足を進める。
「まずは何を買うんだ?」
「勿論、お米だね。ここに来た目的でもあるから」
「そうだな! 当分はなくならないようにいっぱい買っておこうぜ!」
「だからって買い過ぎて腐らせたら勿体ないけどね」
「大丈夫だ! 俺がたくさん食うからな!」
ドンと自分のお腹を叩きながら自慢げに言うルンバ。
まあ、ようするにたくさん食べたいということだな。
もし、ルンバが食べきれなくてもコリアット村にあるセリア食堂に下ろせば、村人達が喜んで食べるだろう。そこでは和食大好きなローガンを始めとして、着々とお米のファンが増えているのだ。
買い過ぎに関する心配はあまりしなくてもよさそうだな。
そんな事を思いながら俺は初日に予約をしておいたお米を扱っているお店へと向かう。
「いらっしゃいませー」
「この間予約していたお米は用意してありますか?」
「ありますが、本当にお金はあるんですか?」
異国の子供がやたらとたくさんのお米を注文しにきたのだ。お金を本当に持っているか怪しんでいるのだろう。
そんな事があろうかと、俺はきちんと対策してある物を持ってきているのだ。
俺は懐に入れていた一枚の紙を米屋の店主に見せる。
「これを見てください」
「ん? 何です?」
俺の掲げた紙を手に取ってマジマジと見つめる店主。
店主が見つめているのは他国の貴族である証明書とトリエラ商会の関係者である証明書だ。
しばらく書類を見ると、店主は納得したような表情で頷いた。
「ああ、異国からきた貴族様で商会の関係者さんでしたか」
「『陽だまりの宿』にいるトリエラ商会の人に送ってください。代金もそこで払いますので」
「わかりました、それでは『陽だまりの宿』に送っておきますね」
店主は先程よりも丁寧な態度でそう言うと、旅館へとお米を送る準備をしはじめた。
ちなみに証明書はカグラに入国する際に、書類をカグラの役人に提出して認められている。
確認の手紙は事前に王国にも送ってあったので、俺がカグラにいることは王都のお偉い様も把握しているのだ。
王国のお偉い役人の方、お仕事、ご苦労様です。お陰で俺は大金を持ち歩かずにこうして楽に買い物ができています。
「いいな! その証明書! 買い物がし放題じゃねえか!」
「いや、トリーの商会が肩代わりしているだけで払ってるのはスロウレット家だからね?」
「おお? そうなのか? まあ、お金を持ち歩かずに買い物ができるならいい事だな」
よくわかっていない様子のルンバが気楽に笑う。
まあ、こういう事ができるのはトリーの商会がカグラでも信用があることと、国同士の信用があるからできる技だけどね。
逆に約束を破ったら大変な事になるのだけどね。
「次は醤油や味噌、それに酒だな!」
「そうだね! というかルンバの分も俺の家が払っているけど帰ったらきちんと払ってよね?」
「おう! 任せろ!」
何てルンバは呑気に言うけど心配だな。ルンバって貯金はあるのだろうか?
なければないで冒険者としての仕事で払ってもらうけどね。
そんな風に俺とルンバは、あちこちの店を回っては食材などを買い上げては旅館に送りつけていく。
お金を払う必要もなく、物を持ち歩く必要もないので俺達の足は非常に軽い。
しかし、たくさんの荷物を送りつけられている商会の従業員は今頃大変だろうな。
大荷物を携えて、いくつもの従業員がやってくるのだ。品物のチェック、支払い、整理とてんてこ舞いの忙しさだろう。
今日は宿に帰ったら、せめてもの労いとして高めのカグラ酒でも振る舞っておこうかな。
そうやって食材を買い回り、お腹が空いたらお店に入って腹を膨らませる。
ルンバはお店の料理だけでは足りないのか、お店を回る傍ら屋台の料理を頼んでは食べていた。俺もそれに紛れて屋台料理を大量に買っては、空間魔法で収納をし続けた。
これで帰り道もこっそりとカグラ料理が食べられるという訳である。
本格的に買い込むのは転移で改めてやってきた時でいいだろう。
「大分買ったな。飯については大体こんなところか?」
「うん、そうだね」
通りの脇に置いてある長椅子に腰かけた俺とルンバは確認し合うように言う。
カグラの長期保存が可能な食料は大体買い込んだ。食料については入念にリサーチしていたので、見落としの方もないはずだ。
「後は食料以外のお土産だよ。それもエルナ母さんやエリノラ姉さん、メイド達が喜ぶようなやつ」
「……それはまた難しいな」
俺の言葉にルンバが苦笑いしながら呟く。
食材の方と違って、こちらは並の男では理解できないセンスが試されるからな。
女性達に似合わない物を持って帰れば、白い目で見られるであろう。
「エルナやエリノラ達は食べ物以外で何を欲しがっていたんだ?」
「カグラ服や、服に使える布とか髪飾りの類だったと思う」
「サーラやミーナにもカグラ服を渡すのか?」
「渡してあげたいけど、サーラとミーナの体型がよくわからないんだよねぇ。エルナ母さんやエリノラ姉さんと同じように大体で選んでもいいけど……」
サイズの合わないものを持って帰ったら怒られそうだ。
だが、普段から働いてくれているメイドに、綺麗なカグラ服を渡して労ってあげたい気持ちもある。一体どうすればいいのか。
俺とルンバは腕を組みながら考え込む。
「服についてはよくわからねえけど、俺とアルで選ぶと失敗することだけはわかるぞ」
「俺もそう思うよ」
センスの悪い俺とルンバが女性に似合う着物を見つけられるイメージが湧かない。
「なら、アリューシャとイリヤを連れてこよう! 女の事は女に聞くのが一番だ!」
「そうだね! 午後の今ならあの二人も自由になるはずだから、一旦戻ってみようか!」
今日は午前がアーバインとモルトの自由時間。午後からがアリューシャとイリヤだと聞いていた。この時間帯であれば、ギリギリだが二人共旅館にいるはず。
そうと決めたら行動あるのみ。
俺とルンバは椅子から立ち上がり、意気揚々と旅館へと戻った。
俺とルンバが旅館へと戻ると、周囲では多くの馬車が停まっていた。
そして、旅館前ではそれを慌ただしくしながら確認し、支払い、運び込みをする商会員の方々。どうやらちょうど俺達の買った品々が届いていたらしい。
「すいません、米屋ですけど」
「また米屋か! 一体あの人は何種類の米を買ってるんだ! これで五件目だぞ? それに百キロ単位で買ってくるし!」
俺とルンバがこっそりと馬車の近くを歩くと、ギュンターのそんな悲鳴のような声が聞こえた。
いや、だってカグラにも色々な種類のお米があるから、どれが美味しいのか気になって。
これでも絞った方なんだけどな?
「ちょっと、早く済ませてくださいよ! こっちは店だってあるんですから!」
「す、すいません! もう少々お待ちください!」
俺達のせいで宿で待機している商会員は大忙しだ。
俺とルンバは忙しい商会の方々に迷惑をかけないように、こっそりと旅館の玄関へと向かう。
決して見つかると文句を言われそうだとかいう理由ではない。これは商会の人に配慮しての事だ。
そう自分に言い聞かせながら玄関に入ると、ロビーにはイリヤとアリューシャがいた。
「どうしましょうアリューシャ。なんか外が忙しいみたいですよ? 私達も手伝いに行きますか?」
「冗談じゃないわよ! やっとあのバカ達が戻ってきて交代できるのよ? これを見逃したら私達のお土産を買う時間がなくなるわ!」
どうやらちょうどアーバインとモルトと交代して、お土産を買いに行くらしい。
「ねえねえ、二人共ちょっといい?」
「あっ、アルフリート様とルンバさん」
俺の声に気付いたイリヤがこちらを振り向く。
アリューシャは俺とルンバを見るなり、警戒したような顔つきで、
「……えっと、私達これから自由時間なんですけど?」
「外の忙しさの原因は俺達だけどそれを手伝えとかじゃないからね?」
「良かった。それならいいのよ」
俺がこき使うつもりじゃないとわかると、安心したような顔を見せるアリューシャ。
「それでアルフリート様は、どうされたんですか?」
「いやー、ちょっとエルナ母さんやエリノラ姉さんといった女性へのお土産に困っていてね。服とか髪飾りとか俺達にはよくわからないから、女性である二人にアドバイスを貰えないかなーって」
「俺とアルはさっぱりだからなー」
「なるほど! それならお安い御用よ! ちょうど私達も服とか髪飾りを買おうと思っていたところだし!」
「はい、私達でよければ力になりますよ! アルフリート様のお母様やお姉様にも挨拶をしましたからね。助言できるかと思います」
「ありがとう」
さすがは女性。こういう時は頼りになるな。
「ついでに私達の買った物も旅館に届けられるようにしてくれると助かるなー」
「わかったよ。二人の買った物も旅館に届けられるようにするよ」
アリューシャのどこかわざとらしい要求に、苦笑しながら了承する。
最初の段階からこれを期待していたんだね。女性というのはちゃっかりしているな。
明日も更新します。




