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まだ本隊に合流させてもらえません



オディール様の後についてちょっと先の川のほとりに止まって待機していた馬車に乗り込む。

乗ったとたんに馬車は走りだした。


「さ、お茶でもしようか、

愚弟率いる本隊を待てば奴の焼いた菓子の一つもあるだろうが

今は軽い腹ごしらえで我慢してくれ」


いや、そこ?!

私達って今100人弱の先発隊をたった四人で壊滅しましたよね!

ちょっと異常ですよね?!

その辺のコメント無しですか?


それでもってあちらの本隊も向かってきちゃってますよね?

さっき馬車で休もうかっておっしゃったのは空耳?!


馬車はあきらかに前進してますけどどこ行くんでしょうか?

はやいところUターンでもして本隊に合流するのが一番に決まってます!!


「あ、あのっ本隊にはどこで合流するんでしょうか?

私達どこへ向かっているんでしょう?

シドの本隊は今の軍より後ろにいるとおっしゃってましたよね?まさか…」


必死にオディール様にいいつのれば

何故かアレグラ様がくすくすと笑いを漏らす。

なんですかその笑い、どうして笑ってるんですか、アレグラ様。


「せっかくのチャンスを潰したいのかリア、

これから私達は敵の本隊の裏をかきに行くんだ。

ユレヒト港で待機しているマシリト軍の船を何隻か沈めておこうと思ってる。

さすがに私もこの人数でまともに敵の本隊にぶち当たろうとは考えないさ。

先発隊を潰しさらに帰りの船を沈めればまぁまぁ私達の良い披露目になるだろ?」


オディール様は当たり前のように言ってから、

ドリーの差し出したバスケットの中からりんごを掴むと、躊躇なくまるかじりして満足げに目を細める。


いやいやお披露目とかまったくいらないです。

なに考えてるんですかオディール様!

わなわなする私にアレグラ様が艶やかな声で


「このまま合流すればまぁ守られるでしょうけど、

軍のみんなに気をつかわせちゃうじゃない?

戦の真っ只中でいい標的にもなりかねないし私達もかえって大変だと思うわよ。

大丈夫、危なくなったら派手に爆発起こして色んな抜け道で逃げましょ」


アレグラ様は相変わらず笑いを漏らしながらバスケットの中のサンドイッチを細い指で優雅につまんじゃって。


爆発起こすってとんでもなく危険なことをそんなに涼やかに口にしないでいただきたいんですけど。


「リアお嬢様早く召し上がっていただかないと無くなりますよ」


何それ!

怖いのもイヤだけど

お腹空くのはもっとイヤ!

早いもの勝ちとかおかしいから!


私もあわててサンドイッチを右手に一切れ、左手に一切れつかんでしまったわ。


「いいぞその調子だリア。

戦場ではいかにして生き残るかが大切だからな。食料確保は重要項目の内だ」


オディール様、王妃というより完全に騎士団の教官のお言葉ですよね。

食料確保が重要ってどれだけの窮地ですか、そんなことにはぜーったいにおつきあいしたくないですっ


アレグラ様だって世が世なら

王女でおかしくないのに

ずいぶんご苦労されたとは思いますけど

修羅場慣れしすぎじゃないですか……


馬車はそれから小一時間くらい走って

私達はユレヒト港に着いた。

港には前回の倍ほども大きい船がところせましと十五六隻は停泊しているのが見える。

えーっ!!

すごい大軍なんですけど!

こんな大きい船どうやって沈めるっていうのよ!


私の心の声が漏れてたのか

オディール様が笑いながらおっしゃっる。


「でかい船だな、わが軍にそのままいただきたいくらいだ。

派手に沈めるのは一隻、後はゆっくり沈んでもらうのが二三隻」


「全部じゃないのかしらぁ?」


アレグラ様が薄く笑みをたたえながら船を見つめる。

いやアレグラ様全部って

容赦ないなこのヒト


「挨拶代わりに沈めるだけだからな。

とりあえずお帰りいただくことにはなるだろうしな。

やれないこともないが私達がそこまで仕事してやることもあるまい」


私が驚いてる間に馬車を下ろされ私達四人は早朝のユレヒト港を歩きだした。




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