07.イーアリル子爵家3(視点:ハロルド)
妹から、計画を聞かされた時には「まあ、頑張れ」何時ものノリで協力したのだが(あいつがなあ……)
ブルーノから「この子と付き合おうと思う」と告げられた時、面食らった。女に難しいのは、親友である自分が良くわかっていたから。だから、出会いの場を増やして選択肢を広げてやろうと、あれこれと女性情報を流していたのだ。周りが動かないと、自分からは動かないからな。時期を逃せば、変な相手しかいなくなるというのに。
親友の隣にいる彼女。北方所属の伯爵家令嬢で格式はあるのだが、財面はあまり羽振りはよくないはず。それを言うと、「格式が女の方が上なんだ。そうでないと、相手として釣り合わないだろう」と返した。なるほど。彼女は気に入られたのだ……あの気難しい相手に。
心配していた家同士の問題もなく、彼らは結婚した…だが、それを防ごうとした狸達がまあ凄かったのだ。こちらにも飛び火してきて大騒ぎ。あいつを慕っていた女たちからも陰口は飛んでくるし…ああ、怖かった。
時は流れて、結婚する前から行っていた改革のお陰で、イーアリル領は財力だけは近隣の領地の中でもトップクラスになっていった。宝石が採れる領地を上手く使い、スパルタ教育を受けた実に奴らしいやり方で。
狩る人材、細工師、折角作った商品が吹っ掛けられない様に商人と交渉する専門家を育成していったのだ。時間と金はかかるやり方だった。実際、領民なら授業料免除にした時に、彼の政治生命は終わるのではと噂されるほどだった。だが彼の読みは当たり、回収できる宝石の数は桁を増した。宝石が採掘出来る他領地では、成功を真似ようとしていたが、真似ても時間がかかるだろうし、あいつくらいの熱意がないと難しいのではと思う。王都の方でも噂が流れ、有能な魔術師を多く排出する領地として、領主共々知られるようになった。
大金持ちになったイーアリル家、家庭仲も良く順風満帆だったがそれから後に困ったことになった。以前、あいつと見合いをした事があるディートリヌ家のイライザ。その娘を第二夫人でいいから、と言ってきたのだ。今では家格こそ子爵だが、発言権を増しているブルーノだからその家だけなら拒否できた。だがその依頼をしてきたのは、ディートリヌ総本家であった。
周りの話によると、国王陛下に大層気に入られたらしく、奴と縁組をと望む声が出ているらしい。あいつはもうフリーじゃないだろっ……!。だが王都に留まる大貴族達にはそんな事はお構いなしだった。要は、王のお気に入りを自分達の家に取り込んで利用したいのだ。ディートリヌ家が北方領の中でも高い影響力があるのには、本家当主の力が濃いためだ。王都での中央政治を決める貴族議会、その幹部として名を連ねている。
地方貴族の本家筋は中央に居る。
その集まりである貴族議会の決定には、各地方が従う。
はっきりいってブルーノが発言権が増したとは言え、彼の本家はディートリヌの本家の相手にもならないのだ。彼の心情を考えると気の毒だったが……その後、第二夫人としてイライザが嫁ぐことが決まった。