第十一話 老害
仙たち三人はテレビ局に来ていた。
本番前の控室で弧見がガタガタと震えている。
「ウチ、大人気になってストーカーが増えて外も歩けなくなるんだ……」
「安心しろ。それは妄想だから」
逆に千佳伊は落ち着き払っていた。
「これで私も電波ジャックデビューか。世界に出る日も近いな」
「ジャックじゃねーし。海外進出だけは永遠にやめてくれ」
頬を染める弧見、不敵に笑う千佳伊、胃のあたりをさする仙。
三人は撮影スタジオへ。
頭にやや寂しさの募るプロデューサー。
「今日はよろしくお願いします。生放送なんで発言には気をつけてください」
「うむ。完全に把握している」
仙の胃が悲鳴をあげ、土気色の顔は固まったまま。
あれよあれよと本番が始まってしまう。
「大宮市の市長の悪事を暴いたのはこちらのお嬢さんだそうで」
白髪の司会者がそう話をふり始めたら、すぐに千佳伊が噛みついた。
「おい、老人。何しゃべってるか分からん。30歳くらい若返ってから出直せ」
「あ? なんだって?」
千佳伊の指摘に出演者たちは小さく頷く。
昔は滑舌だったのかも知れないが、今は耳障りで聞きづらい。
御年90を超えても現役なのは凄いが潮時にも思う。
仙は珍しく空気を読んで黙っていた。
しかし、千佳伊が止まるはずもない。
「耳も遠いのか。話も支離滅裂だし既に老害だな。ここからは私が仕切ろう」
周囲のスタッフたちがざわりとする。
仙は「チャレンジャーなプロデューサーだよな」としみじみと思った。
全国ネットの生放送で千佳伊が吠える。
「古い世代が昔のやり方を押し付けてくるのを窮屈に思ったことはないか!?」
千佳伊が天高く拳を掲げる。
「小説はもっと自由であるべきだ!」
「お嬢さん、うるさいよ」
「お前の方こそうるさいジジイ! 黙れ!」
白髪の司会者を指差す千佳伊。
「段落字下げ、三点リーダーの偶数、後アキを入れろ? ガタガタうっせーわ!」
背後で「CMいけ!」の声が飛び交う。
「段落字下げがないと板に見える? 小説と認めない? 知らんわボケ!」
千佳伊が、仙の決め込んでいた素知らぬ顔を指差す。
「おい、仙! 段落字下げで面白さが変わるのか!? 答えろ!」
「全国ネットで名前を言うのやめて」
「どうせテロップで手遅れだ! 三点リーダーが1つは読む価値なしか!?」
1カメを指差した千佳伊。
「どうなんだ国民よ! 答えてみろ!」
特大の放送事故が起こり、その後は朝までAC広告となった。
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