第一話 炎上
作家。
人はそれを〝正気ではない人間〟と呼ぶ。
ペンがキーボードに変わり、紙がスマホになったとしても。
真っ白な世界をエゴで染めるのは、狂った人間しかいない。
長年伸び悩む作家の勘 千佳伊は、今日も荒ぶっている。
「WEB投稿サイトは、出版社にとって従順で都合が良い作者を選別するためのシステムだ!」
「ま~た、千佳伊が変なことを語り始めたよ」
「だってそうであろう? ランキング、星やレビュー、コンテストまでもが時代を先取りした斬新な作品にとって逆風になる構造ではないか!」
親友の黄泉 仙は〝緊急案件〟と呼び出しを受け、千佳伊の自室に来ていた。
仙が宥めても、千佳伊は鼻息荒く続ける。
「都合の良い作者だけを選出し、搾取するためのものであろう」
「どうしてそこまで一気に飛躍するのさ!?」
「自明ではないか! テンプレを使わずに戦う作者が不利となる仕組みだぞ!? 出版社の思い通りにならない作者なぞ要らぬという証左だ」
答えに詰まる仙の顔には「どうしてそうなる!?」がアリアリと見えるほどだ。
千佳伊は得意げに目を細める。
「どこもかしこも、今の投稿サイトは言わば踏み絵。その黒幕である株式会社門河の操る糸に絡めとられ、マリオネットと成り下がった作者ばかりよ」
そうした主張をツイッターでしていたらバズってしまった。
出版社が作家性を縛り、果ては作家の人権侵害にも及ぶと斜め上の展開へ。
炎上や誹謗中傷が続き、勝手に黒幕認定されてしまった門河社は、風評被害や不買運動の煽りを受けて経営が傾く事態に。
ついに千佳伊は元凶として門河社から訴えられてしまう。
「フハハハハハ! 見よ。裁判所から訴状が届いたぞ! これで門河が私を対等の好敵手として認めたということだな!」
「ど~~すんだよこれから!」
印籠でも見せびらかすかの千佳伊の姿に、仙は頭を抱えた。
楽しげに千佳伊は笑う。
「プックク! たかだか営業損失1000万円程度で顔を真っ赤にしているぞ」
「ちげーだろ! 1000億円だボケチカ! ちゃんと見ろよ!」
「私は近視だから多すぎる桁数は見えなくなるのだ。失敬!」
鼻歌まじりの千佳伊。
ため息が止まらない仙。
「「あ!」」
二人は同時に、とある事実に気づく。
「千佳伊! 弁護士はどうすんだよ!」
「それを私も考えていたところだ」
一つ頷いた千佳伊が、不気味に口角をあげる。
「長年の付き合いがあり、信頼できる者に頼むべきだと思わないか?」
「はぁ? 千佳伊にそんな知り合いが? ちなみに誰だよ?」
「当然だろう! いま、私の目の前にいる」
千佳伊と仙の二人きりの部屋。
しばらく意味を考えた仙が声を裏返す。
「はぁぁぁぁぁああ? 何言ってんのお前!?」




