第44話 四天王筆頭の実力
魔王城の外門が開いた。
重い音が響く。
ギィィ……。
外には荒野が広がっている。
黒い岩。
赤い空。
魔王領特有の大地。
その前に立つのは三人。
リアナ。
セレナ。
そして――
炎将バルグ。
バルグは巨大な背中を向けたまま言った。
「行くぞ」
リアナが慌ててついていく。
「よろしくッス!」
セレナは静かに歩き出す。
魔王城を出てすぐ。
そこには巨大な飛竜が待っていた。
赤い鱗。
巨大な翼。
兵士たちが距離を取っている。
リアナは目を丸くした。
「でっか!!」
バルグが言う。
「乗れ」
リアナ
「これッスか!?」
バルグ
「そうだ」
リアナは恐る恐る近づく。
飛竜が鼻息を吹いた。
ゴォッ。
熱い風。
リアナ
「うわっ」
バルグは軽々と背に飛び乗る。
「早くしろ」
リアナ
「い、行くッス!」
リアナも登る。
セレナは慣れた動きで座った。
次の瞬間。
バルグが言った。
「飛べ」
飛竜が翼を広げる。
ドォォン!!
風が巻き上がった。
城が一気に小さくなる。
リアナは目を輝かせた。
「すげええええッス!!」
大地が流れる。
山脈。
森。
そして。
やがて見えてきた。
赤い煙。
巨大な山。
噴き上がる火柱。
リアナが叫ぶ。
「火山ッス!!」
バルグが頷く。
「俺の領地だ」
近づくにつれて空気が変わる。
熱い。
硫黄の匂い。
黒い岩の大地。
溶岩の川。
飛竜は火山の麓に降りた。
ドォン。
リアナが飛び降りる。
地面が熱い。
「うお……!」
バルグは周囲を見る。
「久しぶりだな」
リアナ
「火竜はどこッスか?」
バルグは顎で山頂を示す。
「上だ」
リアナ
「上!?」
セレナが言う。
「火口」
リアナは空を見上げる。
巨大な火山。
頂上は煙に包まれている。
リアナ
「マジッスか……」
バルグは歩き出した。
「来い」
三人は火山を登り始めた。
岩場。
熱気。
足場は悪い。
だがバルグは軽々と進む。
リアナは驚く。
「速いッス!」
バルグ
「遅い」
リアナ
「ええ!?」
セレナは平然とついていく。
リアナは慌てて追いかけた。
しばらく登る。
空気がさらに熱くなる。
その時。
バルグが止まった。
「来るぞ」
リアナ
「え?」
次の瞬間。
火口が震えた。
ゴォォォォォ……
赤黒い煙が噴き上がる。
その中から。
巨大な影が飛び出した。
翼。
鱗。
炎の吐息。
空を覆うほどの巨体。
火竜。
リアナの目が見開かれる。
「火竜ッス!!」
それは魔王軍でも危険指定されている魔物だった。
本来なら――
討伐隊を組む。
魔導砲を持ち出す。
四天王の許可が必要。
そういう存在。
火竜は空を旋回する。
そして。
三人を見下ろした。
次の瞬間。
咆哮。
ゴォォォォォ!!
炎が降り注ぐ。
リアナは反射的に剣を抜いた。
「来るッス!」
だが。
その前に。
バルグが一歩前に出た。
「どいてろ」
リアナ
「え?」
火竜が急降下する。
巨大な爪。
岩を砕く一撃。
リアナは叫んだ。
「危ないッス!!」
だが。
バルグは動かない。
拳を握っただけ。
リアナは目を丸くする。
「け、剣は使わないんスか!?」
バルグは鼻で笑った。
「この程度」
「素手で充分だ」
火竜が突進する。
巨体が迫る。
熱風が吹き荒れる。
そして。
バルグの拳が振られた。
ドゴォォォン!!!
爆音。
衝撃波が火口を揺らす。
次の瞬間。
火竜の巨体が宙を舞った。
岩壁へ。
ドガァァァァン!!
激突。
山肌が崩れる。
火竜は地面を転がった。
翼が折れる。
血が流れる。
それでも立ち上がろうとする。
だが。
立てない。
瀕死。
リアナが呟いた。
「え……?」
セレナが静かに言う。
「当然」
火竜を見下ろす。
「彼は炎将バルグ」
一拍。
「魔王軍最強の武人」
リアナは口を開けたまま固まっていた。
「いやいやいや……」
「強すぎるッス……」
火竜は必死に息をしている。
だが。
もう飛べない。
バルグが振り返った。
「リアナ」
「行け」
リアナ
「え?」
バルグは顎で火竜を指す。
「貴様の武器を作るんだろ」
リアナ
「……!」
バルグは笑う。
「トドメは」
「貴様だ」
リアナ
「でも……」
バルグは肩をすくめた。
「俺が殺ったら」
「意味ないだろ」
リアナは剣を見る。
タクミの武器。
何度も振った剣。
仲間を守ってきた剣。
リアナは笑った。
「了解ッス」
一歩踏み出す。
「タクミの武器で」
火竜を見据える。
「ぶった斬るッス!!」
リアナは地面を蹴った。
加速。
火竜の首へ。
剣が振り下ろされる。
その瞬間。
セレナの目が細くなる。
「……」
ザン!!
一閃。
火竜の鱗が裂ける。
本来。
火竜の鱗は鋼より硬い。
並の武器では傷一つ付かない。
だが。
リアナの剣は違った。
スッ――
刃が吸い込まれるように入る。
そして。
首を断った。
火竜の巨体が崩れ落ちる。
ドォォォン……
静寂。
リアナが息を吐く。
「やったッス……」
バルグが笑う。
「いい斬りだ」
リアナは振り返る。
満面の笑み。
「タクミの武器ッス!」
セレナが火竜を見る。
断面は滑らかだった。
まるで。
紙を切ったように。
セレナが呟く。
「……なるほど」
「確かに」
「かなりの強度と切れ味」
リアナ
「ッスよね!」
バルグが笑う。
「面白い鍛冶師だな」
火竜の死体を見下ろす。
「気に入った」
そして。
リアナを見る。
「次はもっと強い魔物で試してみろ」
リアナは笑った。
「任せるッス!!」
こうして。
炎竜素材は手に入った。
だが。
まだ誰も知らない。
この素材が。
やがて。
神造武器を超える武器
へ繋がることを。
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