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『召喚された俺のスキルは【理科】でした~辺境で始める科学文明再生記~』  作者: とびぃ


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第6節:招かれざる客

アリアの夜食存在に励まされ、そして何より「仲間」のを再認識した俺は、研究の方針を転換した。俺一人の知識に頼るのではなく、セーラの持つ膨大な薬草学の経験と、俺の化学の知識を融合させる、共同研究へと切り替えたのだ。

そして、ついに俺たちは、探し物を見つけ出した。セーラが「毒性が強すぎて、誰も使おうとしなかった」という、ある特定の樹皮。その成分を【観察者の眼】で分析したところ、それは強力な抗菌作用を持つアルカロイド――キニーネに似た物質を大量に含んでいることが判明した。俺たちは、その樹皮からエタノール抽出法を用いて有効成分だけを取り出し、人体に影響のないギリギリの量まで希釈することで、原始的ながらも強力な「経口抗生物質」を完成させたのだ。

薬を投与されたミミたちは、数日のうちに劇的な回復を見せた。あれほど猛威を振るった高熱は嘘のように下がり、意識を取り戻したミミが、母親の腕の中で、かすれた声で「ママ」と呟いた時、診療所と化していたセーラの小屋は、涙と歓声に包まれた。村には、ようやく本当の平和が訪れようとしていた。

誰もが、長く続いた悪夢からの解放に安堵の息をつき、鋼の農具を手に、再び畑の開墾へと戻っていく。村は、以前にも増して強い生命力と団結力で、復興への新たな一歩を踏み出そうとしていた。その矢先だった。

「――領主様! 大変です!」

村の西側を見張るために、ロイドが急造した見張り台。そこから、一人の若者が、転がるように駆け下りてきた。

「西の街道より、多数の騎馬の一団がこちらへ! 旗印は……赤地に、翼を広げた黒い鷲! 間違いありません、アードラー辺境伯の紋章です!」

その名前に、広場で作業をしていた領民たちの顔が、一瞬で凍りついた。アードラー辺境伯。このグレイウォールに隣接する領地を治める、武力と権威を何よりも重んじる、傲慢で貪欲な大貴族だ。

俺たちの村が、呪われた水と土地を克服し、未知の製法で強靭な鋼を生み出し、ついには不治の病さえも克服したという噂は、風に乗って、当然、彼の耳にも届いていただろう。

やがて、地平線の向こうから砂埃が立ち上り、威圧的な一団が姿を現した。先頭に立つのは、全身をこれでもかと磨き上げられた装飾鎧に身を包み、見事に飾り立てられた肥え太った軍馬にまたがる、尊大な態度の騎士。彼が、辺境伯の使者だろう。その後ろには、揃いの鎧をまとい、長い槍で武装した兵士たちが、まるで壁のように、ずらりと三十名ほど控えている。その装備の質も、兵士たちの体格も、グレイウォールの貧しい村人たちとは比較にならなかった。

使者の騎士は、村の入り口で止まると、馬上から、まるで虫ケラでも見るかのように俺たちを見下ろし、その唇に嘲るような笑みを浮かべた。

「貴様が、この地の新たな領主、サガラとやらいう者か。噂に聞く『賢者様』とは、随分とみすぼらしい格好だな」

彼は、俺の着古した白衣と、泥の跳ねたズボンを見て、隠す気もなく侮蔑の言葉を吐いた。

「我が偉大なる主、アードラー辺境伯様が、慈悲深くも、貴様らのような辺境の民に、お言葉を授けてくださる、とのことだ。ひれ伏して、光栄に思うがいい」

使者は、供の者から羊皮紙の巻物を受け取ると、それを芝居がかった、大げさな身振りで広げ、村中に響き渡るような大声で読み上げた。

「曰く、『その地に、奇跡の如き技術ありと聞く。水の浄化、土地の再生、鋼の製法、そして病を癒す秘薬。それら全ての知識と技術を、速やかに我が方へ献上せよ。さすれば、我が寛大なる庇護の下、貴様らの命と、ささやかなる暮らしは保証してやる』……とのことだ」

それは、交渉でも、要請でもない。一方的な、恫喝。全てをよこせという、あまりに理不尽な略奪の宣言だった。

「お答えを聞こうか、サガラ殿。イエスか、ノーか。それ以外の返答は、我が主は望んでおられん。ああ、言うまでもないと思うが、ノーと答えた場合、この後ろの者たちが、力尽くで『説得』することになる。この痩せた村が、半日もつかな?」

使者の目が、冷たく光る。その後ろでは、兵士たちが示し合わせたように槍の穂先をキラリと光らせ、無言の圧力をかけてきた。

グレイウォールを襲った、次なる敵。それは、目に見えない細菌ではなかった。

それは、人間の飽くなき欲望と、剥き出しの暴力という、あまりにも生々しく、そして巨大な、目に見える脅威だった。

俺は、恐怖に震え、顔を青くするアリアや領民たちを背にかばうように一

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