自動化の閃き
第6話 自動化
材料費は安くできた。しかし製造コストはむしろ高くなってしまった。
思案する事2週間、、、
久しぶりの休日がやってきた。
今回はおじさんの提案で、浅草に行く事に。
当時浅草は日本一の歓楽街。娯楽といえばここだった。東京市電に乗って、浅草停留所を目指す。
今回の目的地は、浅草寺周辺。街歩きをする事にした。
参道を歩いてお土産を見たり、紙芝居を見たりするつもりだ。
そういえば、近くに鬼もいると噂を聞く事もある。元々治安が悪い場所で、スリもかっぱらいも腐るほどいる。そのせいだろうか。
参道を歩いていると、華やかな芸者さんを見たりとか、あるいは幼い子どもや、お年をめした方も多くいることが分かる。建物も高く、発展した街だなと改めて思った。
すると、あるものを見つけた。
「江戸名物 もんじゃ焼き」
おじさんが言った 。
「よく奥さんともんじゃ焼きを食べに行ってた。あの店はもうないが、ここに入ってみようか」
店に入る。
店主が話しかけてきた。
「いらっしゃい!って、、高野!?」
ふたりとも驚いた顔をしている。
「お前、、、生きてたのか」
どうやら顔見知りのようだ。
軽く世間話をした。
「、、そうだったのか。奥さんを亡くしてつらいな。」
店主がそう言う。
「ああ、だけど前を向いて歩くしかない。どうすればいいかわからないけどな」
そうおじさんが返す。
「そういえば、そちらのお嬢さんは?」
店主に聞かれる。まずい。声を出したら男とばれる。
「覚ちゃんだよ。人見知りで、会社と家にいる時以外声を出さないんだ。筆談なら喋れるから、紙と鉛筆をくれないかい?」
おじさんに助けられた。
そうして料理を頼み、もんじゃ焼きを目の前で作ってもらっていた。
店主が言う。
「もんじゃ焼きってのは、具材を上から載せるんだ。好きなように作れる。
だから、絵を書いたり、新しい具材に挑戦したり、まるで作家になったような気分になれるんだよ」
変わらないな。とおじさんに笑われる。
店主の手捌きを見る。
タコ、キャベツ、ソース。ありとあらゆるものが、上に乗せられていく。
その風景を見てふと気がついた。
回路を先に作り、それを基盤の上に乗せれば、、、
「これだ、これだったんだ!」
思わず俺は叫んだ。低い、男の声で。