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肉食系腐男子(ゾンビ)・ヘッズ①

《琥珀のエルミタージュ》のジークハルトルートのトゥルーエンドの概要はこうだ。



学院に来ても相変わらず複数人の女を囲み、婚約者のエレーナも知らないところで浮き名を流すジークハルト。

彼にとってはリストランテ学院への入学など、将来の愛妾を選別するための場所でしか無いはずだった。


そんな中、白魔法の才能を見込まれ、特例で学院に入学してきたアンリエッタに興味を持ったジークハルトは、あの手この手を使ってアンリエッタに接近を試みるが、アンリエッタは彼が誇示する権威や財力には興味を示さず、むしろ嫌悪する。


自分を王太子としてではなく、一人の人間として平等に扱おうとするアンリエッタの清純さに、ジークハルトはいつしか本気の恋をしていることに気づく。


その後は同じくアンリエッタを見初めたコンラッドと決闘を繰り広げたり、ギュンターとバチバチの睨み合いをすることになるが――そこは割愛。


物語終盤。婚約者の気持ちが既に離れている事に気づいていたエレーナは、アンリエッタへの嫉妬と怒りの余り、禁断の黒魔術に手を出し、魔物を使役してアンリエッタを暗殺しようとする。


だが、そのことにいち早く気づいたジークハルトは、アンリエッタと手と手を取り合って立ち向かい、アンリエッタの白魔法の力を以って魔物を打ち破る。


企てが明るみに出たエレーナは暗にリヴレ公爵家と王家との力関係を匂わせてジークハルトに復縁を哀願するが、真実の愛とやらに目覚めたジークハルトは耳を貸さなかった。


エレーナは禁断の黒魔法を使用した罪で婚約を破棄され、国外追放となり、めでたくアンリエッタはラビリシア王・ジークハルトの妃となりましたとさ――どっとはれ。





こ れ だ 。





私はくわっと目を見開いた。


なんだコレ、なんでもっと早く気がつかなかったのか。

エレーナはジークハルトとの婚約は破棄され、国外へ追放となる――。

だが大概のルートで最後は死ぬか、魔物化してラスボスと化すエレーナにとっては一番『ソフト』な末路であるし、死にはしない。

しかもルート通りなので世界は《バグ》で崩壊しない。

しかも私が苦手なジークハルトとの婚約も破棄できる――。


一石三鳥ではないか。


そう気づくと俄然やる気の炎が燃えてきた。

私は目に力を入れてアンリエッタとジークハルトを見つめた。


相変わらず二人はいい雰囲気だった。

ジークハルトが何かを言う度に、アンリエッタは実に面白おかしそうに笑う。

おや、今度は逆にアンリエッタがジークハルトになにか質問した。




「行けっ、そこだ! 『ジークハルト様には彼女とかいらっしゃるんですか?』って訊け!」




まぁぶっちゃけ、いるぞ!


彼女どころか婚約者がいるんだ!


でもそれでも一向に構わないんだ!


行け!




……おや、逆になんだか二人が静まり返ってしまった。

何かつらいことでも思い出したのだろうか。

ぎゅっと手を握りしめてアンリエッタが俯く。

目尻に光るのは涙――か?




「おいおいおいおい何やってんのよ……! 何トラウマ踏み抜いて泣かせてんのよ! カバーカバー! 『涙なんて君には似合わないよ』『でも、ジークハルト様には婚約者が……!』

『真実の愛(笑)の前にはそんな者関係ないさ……』、こうだ、愛を囁やけ!」




おっ、ジークハルトがアンリエッタの頭をポンポンと叩いた。

アンリエッタは恥ずかしそうに笑みを浮かべながら涙を拭っている。

よし、堅実なディフェンスに定評のあるジークハルトの完璧なリカバリー。

よって試合は再びイーブンに戻ったのだ。




「よしよしよしドンマイドンマイ! 『そうだ、この後二人で抜け出さないか。夜景の綺麗な場所を知ってる』『夜景? 嫌です、そんなに綺麗な夜景なら、ジークハルト様が私ではなく夜景に見惚れてしまうから……』『見惚れるものか。百万ドルの夜景よりも君の笑顔のほうが何倍も素敵さ。さぁ行こう』『あっ、こんな皆の前で……! いけませんわジークハルト様! 婚約者様が見てる! あぁ……あぁ! すごく強引! ジークハルト様ぁ!!』」




「おいエレーナ、エレーナ!」


バシバシと肩を叩かれ、私はハッと我に返った。

見ると、コンラッドが私を心配そうに見つめていた。


「……本当に、どこも噛まれてないよな?」

「へっ? ……あぁ、大丈夫ですわ! 今のはちょっと、そう、疲れてたんですの! ちょっと盛り上がっちゃっただけですわ! あおほほほほ!!」


今までいっぺんもやったことのない、右手を添えるお嬢様笑いに、コンラッドがなんだかちょっとゾッとしたような表情を浮かべたが、それも一瞬のことだった。


「まぁなんでもいいさ。毛布が来たぞ」

「へ?」

「明日は一日いっぱい動かなきゃならない。今日は早めに寝よう」


そう言ってコンラッドは毛布を広げ始める。


あぁ、寝るのね……。


私が頷くと、コンラッドが意味ありげな目配せをしてきた。




「生憎だが、毛布は全員には行き渡らない。残念ながら俺たち二人で一枚しかないんだ」




え……? と私がぽかんとしていると、急にコンラッドに肩を抱き寄せられた。




ふぁ!? と声を上げた途端だった。

コンラッドはあっという間に一枚の毛布で私までを包み込んでしまった。




(えええええええええええ!?)




顔に音を立てて血が上り、心臓が信じられない勢いで鳴り始めた。


私の頭は盛大に混乱した。


推し……推しが激しい!! 

積極的だ!

うん凄く積極的だ!

この男、遂に野獣のような本性を剥き出しにしてきた! 

そのまま毛布ごと私を抱き寄せてその分厚い胸板に押し付けようとしてくる! 


おそらく吸収だ!

このまま私を魔人ブウのように良質なタンパク源として皮膚から直接吸収するつもりなのだ! 

確かに今の食事にはタンパク質が足りていなかったように思う……。

つまり今の私はプロテインなのだ!

プロテインとして彼とひとつになる哀れで幸福なるタンパクの塊でしかないのだ!

私プロテイン! プロテイン私!

ウッヒョヒョーイウッヒョヒョーイ――。



「このまま黙って聞いてくれ」



 不意に――静かな声で耳打ちされて、私のわけのわからない悲鳴は霧散した。



「はい?」

「あの怪我人たち……もうゾンビに噛まれてたな」



不穏な一言に、私の心臓が思い切り収縮した。



「それも一箇所じゃない、複数箇所だ。彼らの体力がいつまで持つかわからないが……放っておけない」



私は目だけでコンラッドを見た。


コンラッドは固い決意を秘めた目で私を見た。





「今夜、怪我した人間は全員殺さないといけない」


ここまでお読みいただきありがとうございました。


現在、このスプラッタ小説は非常に評価・ポイント共に苦戦しております。

もしお気に召しましたら、この広告下から評価・ブックマーク等よろしくお願いいたします。


何卒、よろしくお願いいたします。

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