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第七話 ヒロイン役から逃げたい私は、イベントを躱します②

ここから短編の続きになります。

 授業が始まるとイベントも多くなる。

 まず最初は移動教室の時のイベントで、大将の令息であるノーキンと廊下を曲がった辺りでぶつかるシーンがある。

 私は出会いイベントをこなしていないため、彼のことを知らない状況になっているが……念には念を入れてイベント回避のために、チャイムギリギリで次の教室に着くように教室を出ようと考えていた。しかし、そんな私の元に「一緒に行きませんか?」と声をかけてきたのはミリアだった。


 一瞬どうしようかと悩んだが、一緒に向かう事にする。正直断る理由がなかったからだ。でも、イベントに関わりたくない……そう考えた私は、イベントが起こるであろう場所に着く直前に「あ、忘れ物をしたので先に向かっていて下さい」と言ってミリアを一人にしたのだ。


 「先に行って下さって結構ですよ」と言って来た道を戻る私を、ミリアは不快に感じたのだろう。自身の感情を隠す様子も全く見せず、顔をしかめて私を見つめている。私はそれに気づかないフリをしてぶつかる場所から一番近い角を曲がり身を隠した。


 ミリアは私を待つかどうか一瞬悩んだようだが、イベントを優先したのか……先を歩いていく。そして彼女が本当にイベントを起こすのかが気になった私は、魔法を使う事にした。アナベル(宮廷魔道士)先生から教わった、遠くの声を聞き取る魔法。先生曰く、


「学園内では訓練所以外での攻撃魔法の使用を禁止しているだけだから、これ位の魔法なら使っても構わないはずよ」


 と指導中に笑顔で教えてくれた。先生も学園に在籍中、魔法の練習を兼ねて魔道科と軍部科の生徒が遠くで話している時によく使用していたらしい……政治経済科の生徒には使わなかったのか?と尋ねたところ、「機密情報を喋るから……」と苦笑いしていた。


 そんな事を思い出していると、「きゃっ」と声が聞こえた。ミリアだ。息を潜めてチラッと彼女の方を見ると、丁度ノーキンが彼女に手を差し伸べている最中だった。アナベル先生に教えて頂いた魔法は絶好調。そのお陰で彼らの声を聞き取れたのは助かった。


「すまない、大丈夫か?」


「はい……こちらこそすみません」


「いや、前を向いていなかった此方の責任だ……ん?君は……ミリア嬢だったかな?」


「そ、そうです」


 やはりゲームの好感度上げイベントのようだ。

 確かこのシーンはオドオドしていたミリアがノーキンと話している最中に笑みを見せる。偶然その笑顔を見たノーキンが彼女に心奪われるというシーンだったはず。今彼女は満面の笑みを浮かべているのだろう。その笑顔に彼は心を掴まれるのだ。

 今の私がノーキンを一言で言うとすれば、「父親に憧れている脳筋」。他の恋愛ゲームでも大将の令息の性格でありがちな、熱血愚直な性格なのだ。ゲームの時は弟みたいで可愛いなぁ、弟がいたらこんな感じなのかな?なんて妄想したのだけれど、実際にこの場面を見ると「チョロい脳筋」にしか見えなくなってきた……。


 しかし、彼は顔がよく騎士を目指しているだけあって爽やかな笑みなので、女性が見惚れる理由もわからなくはない。実際そんなスマイルを目の前にしているミリアは、上目遣いで彼を見ているのだが、そんな状況でも、勿論ミリアは好感度が上がるような台詞を選択して話しているだけではなく、自身が可愛く見えるように、手を胸の前で組んで上目遣いで頬を染めて彼を見ているのだ。……ああ、これなら脳筋くらいイチコロだろう。


 気になってもう一度覗くと彼の頬がほんのりと紅潮していた。あ、今は頭をかいて照れているようだ……本当にチョロすぎる……

 ゲームでの彼の婚約者は現在王家に仕えている女性騎士(年上)だった。第二王子や彼らの事を聞いたついでにメアリ先生に聞いたところいろいろ教えてくださったのだが、ゲーム通りに婚約者は女性騎士だそうだ。彼女の母親は王家の女性護衛騎士の指揮官で彼女もゆくゆくはその地位を譲り受けるのでは、と噂されているくらい優秀らしい。優秀な上、他人にも自分にも厳しく笑顔を見せない婚約者と婚約当初から比較され、彼はコンプレックスを抱いている。それをヒロインが癒すという流れだ。


 ふと気づくとイベントは終わっていた。ボーッと立っているように見えるミリアに、私は今戻ってきた風を装い「あら?ミリアさん?どうされまして?」と声をかける。

 頬を赤らめて慌てて「あ、何でもないの!行きましょう!」と言う彼女と移動教室先に向かった。


 その後もボリック(宰相の令息)シュニッツ(保健室の先生)とのイベントが発生したが、全て彼女が進行させているようだ。全てを見てはいないが、様子を見ている限りこれは逆ハールートの可能性が高い。まあ……現在ミリアがヒロインとしてイベントをこなしているのは確定らしい。


 何故それが分かるのか、そして全てを見ていない理由はミリアの行動にある。最初はイベントが発生するだろう、と思われる時に彼女は私に声をかけてきた。だが、ボリックやシュニッツ、そして二回目のナルディス(第二王子)とのイベントが終わると彼女は全く声をかけてこなくなったのだ。


 その理由は二点あると思う。

 一点目は、私に声をかけても何らかの方法で私がイベントを回避するため、居なくても問題ないと思っていること、そして二点目はヒロインである私がいなくても、イベントが発生することから。

 ヒロイン役を回避できた私は天にも昇る心地なのだが……手放しで喜べない理由が彼女(ミリア)の行動である。


 ああ……現実世界でやる(お花畑)がいるとは思わなかった……この国の将来、大丈夫かしら……

 もしミリアが逆ハーレムルートを達成し、その取り巻きの一人である第二王子が王太子から国王陛下に即位する事になり、彼女が王妃になったとしたら……うん、将来が怖い。


 最終手段は出奔か。……彼らがもし王位についたとしても、すぐに国が衰退に向かうことはないだろうし、見極める時間ならあるはずだ。

 時間のある今のうちに周辺国の勉強もしつつ、宮廷魔道士に就職できる程魔力を磨いておけば、どうにか他国でも職を得られるはずだ。まずは宮廷魔道士を目指して頑張ろうかな……

 のんびりと更新していきます。

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