❗3.宿泊室 6 ~ 続・人形の裏切り?? ~
──*──*──*── 廊下
一寸した遊び感覚で、怒った風を装い《 宿泊室 》を出たセロフィートは、つい先程見たマオの慌てた様子を思い出すと、クックックッ…と笑い出した。
セロフィート
「( 本当に、マオは可愛い…。
毎日、飽きない子です♪ )」
御機嫌なセロフィートはハミングをしながら階段へ向かう。
階段を下り、1階へ着いたセロフィートは、《 民宿 》を出ると夜の闇の中へ消えて行った。
──*──*──*── 宿泊室
セロフィートが《 宿泊室 》から出て行ったのを見送る形となったマオは、置いて行かれた事に対して絶望感に襲われていた。
マオの両目には光が宿っておらず、涙腺から流れ落ちる涙がマオの両頬を伝い濡らしていた。
──*──*──*──*──
どのくらいの時間が経過しただろう。
マオは空気ベッドの上で目を覚ました。
自分が、どうやって空気ベッドの上に上がったのか覚えていない。
力の入らない両腕を使い、マオは何とか上半身を起こした。
ゆっくりと室内を見回してみる。
セロフィートの姿は無い。
マオの両目から再び涙が流れる。
壁には長いセロフィート用と短い自分用の真っ白いコートがハンガーに掛けられたままになっている。
2人分の真っ白いコートの直ぐ下には、セロフィートが愛用している『 如何にも〈 吟遊詩人 〉が好んで使いそう 』なポーチも床に置かれたままになっている。
壁の隅にはマオの愛刀と寄り添う形でセロフィートが愛用している杖が置かれていた。
《 小土間 》へ目を向けるとセロフィートのブーツは、マオのブーツの左横に置かれたままになっている。
セロフィートの私物が未だ室内にある事が分かり、マオは安堵した。
然し、其の安堵は気休め的なものに過ぎない。
セロフィートは〈 古代魔法 〉が使えるのだ。
〈 古代魔法 〉を使えば、何時でも何処に居てもセロフィートの好きな時に〈 魔法陣 〉を通して、置いて行った私物を自分の手元へ取り寄せる事が出来るのである。
今は未だ室内にあるが、何時セロフィートの私物が室内から消えてしまうか分からない。
安心は出来ないのである。
マオは不安で仕方がなかった。
セロフィートが此のまま戻って来なかったら──と思うと、マオは気が気ではなく、此のまま気が狂ってしまいそうだった。
セロフィートと共に生きる道を選んでしまった為に、大事な心臓をセロフィートへ捧げてしまったマオは、心の奥底迄セロフィートに支配されてしまっている。
居ても立ってもいられないマオは、何とかしてセロフィートに会いたかった。
どうしたらセロフィートは自分の元へ戻って来てくれるのか──とマオは考えた。
──*──*──*──*──
どのくらい考えていただろうか。
何気無しに壁に掛けられている時計へ目を向けると、時計の針は1時を過ぎていた。
セロフィートが《 宿泊室 》を出て行ったのは22時半を過ぎた頃だった。
マオが置き去りにされてから、約2時間半も経過していた。
マオ
「………………セロ…」
名前を口に出す度に両目から涙が流れ出て来る。
此が『 不思議の国のアリス 』ならば、余裕で涙の海が出来上がっているだろう。
其程の量の涙をマオは流していた。
マオ
「……………………心…臓??
………………そうだ…。
セロ…はオレの心臓を持ってる…。
…………セロ…とオレ…は……離れても引き寄せ合うんだ…。
セロの持ってるオレの心臓が、オレを呼んでくれる…。
オレに…セロの居場所を教えてくれる…。
…………セロが未だ此の≪ 集落 ≫の中に居るなら──、セロを見付けられる筈だ…。
もう1度…セロと会える……」
マオは空気ベッドから下りると、愛刀の柄を手に取った。
装備から外していた愛刀を再び装備したマオは、《 小土間 》でブーツを履いた。
セロフィートに何かを言われていた気がしなくもないが、記憶にないマオはセロフィートの言い付けを破り、《 宿泊室 》から出た。
──*──*──*── 廊下
廊下へ出たマオは、微かに感じるセロフィートとの繋がりを頼りに階段を駆け下りる。
──*──*──*── 1階
静まり返っている《 民宿 》を出たマオの姿は、闇の中へ消えて行った。
スリッパを履いたまま外に出しちゃったな……。
どうしよう……。




