1-3
永久国の王都に向かうにつれ道が整備されているので馬車の振動も減り安定した乗り心地に変化していく。
ミレーヌは手帳をボストンバッグにしまうと、外の景色に視線を移していた。
ド田舎の男爵領とは段違いの、洗練された町並の城下町。
昨夜、走馬灯のようにミレーヌ・サリエール男爵令嬢としての半生を夢で見て確認する事でこの国についてのおさらいと生活習慣などの記録、茜の記憶の乙女ゲーム『龍王の花嫁候補』のこれから先の未来への下準備は整った。
永久国の国の基礎となった、初代王妃は日本人なのだ。
初代の王妃は正確には転生者でなく、異世界トリップに当たる。
江戸時代以前の日本人だろうと、ミレーヌはこの国の歴史書を見て推測していた。
この永久国の随所に、日本の昔の文化の痕跡が存在するのもその所以だ。
さすがに、日本語は伝承されていないのでミレーヌは念の為に日本語でこの乙女ゲームのシナリオを綴っていた。
それは、そうと乙女ゲームの攻略対象者に出会わないといけない。
初日からイベントは目白押しの怒涛の展開なのだ。
龍城の正門、南門にある龍城の門前には馬車の大きな発着所のロータリーが存在する。
サリエール男爵領から2日間に渡る馬車の旅。
長旅で、整備されてない荒れた荒野の様な道を通った結果、腰をやられつつも浮腫む足を引きずりながら念願の龍城へ到着した。
ボストンバックを掴むと、念願の『龍王の花嫁候補』の舞台となる乙女ゲームの舞台に足を踏み入れていた。
ボストンバックを掴んだまま、はしたなくも大きくミレーヌは背伸びをしていた。
なにはともあれ、本日17:00迄に登城して出席の宣言をすることで花嫁候補の選抜合宿に参戦することになるのだ。
周囲を見回すと、他の令嬢も続々と到着していた。
貴族の馬車であろうとも、龍城の中迄馬車で入れる身分は王族しか許されておらず、南門のロータリーに続々と貴族の馬車が横付けされている。
龍城への登城には、正門の関所で身分証と登城目的と登城時間の申告が義務づけられている。
花嫁選抜合宿であっても、下級貴族が龍城に宿泊すること事態が稀有なことだった。
貴族であっても、ピンからキリまでの経済状況であるため、花嫁選抜で各自の王都内であっても宿の金額もピンからキリなので令嬢の安全面を考え、合同合宿で花嫁候補の選抜をするという強硬手段となっていた。
龍王アーウィスは末弟であったために、王位を継ぐとは最近まで考えられていなかった。
ただ、先代の龍王の寵愛したただ一人の男児ということで、先代龍王が自身の寵愛した妃の息子を推挙した。
熾烈な王位争いを繰り広げた結果、アーウィスは抜きん出た実力を見せ付けて王位を継いだのだ。
王位をついで、1年しか経っていない。
もともと、本人に王位を継ぐつもりがなかったので、特定の婚約者候補もいなかった。
昨年、先代龍王の愛した側妃であり、アーウィスの母親が危篤になったことで実家に呼び戻されて王位争いに巻き込まれたのが始まりだった。
龍王アーウィスは寄宿学校を卒業後の痕跡が何もないのだ。
永久国の武官、文官の功績も挙げていない。
記録が何もないのだ。
ミレーヌ自身も、ゲームが始まったところからの龍王アーウィスしか知らない。
まあ、美形なのは確かなのと溺愛系ラブロマンスなので王道ルートを目指すのみ!
ミレーヌ・サリエール男爵令嬢は、鼓舞するように拳を振り上げると登城の為の関所の列の最後尾へ足を向けていた。
アーウィスの経歴の空白は100年・・・・・・。
その事について、乙女ゲームでその空白の100年について言及されたイベントもなかった。




