侯爵令息ブライアン
少しですが一方的な暴力描写があります。
苦手な方は気をつけて下さい。
「衛兵の分際で何をする!僕が侯爵家嫡男だと知らないのか!?今すぐ解放したら許してやる。君たちも死にたくはないだろ?」
「この犯罪者は煩すぎる。猿轡を噛ませろ。」
「はい、先輩!」
衛兵の1人が僕の口に縄を入れて後頭部で縛った。後ろ手にして縛られているから自分で外すことができない。どこまで僕を侮辱すれば気が済むんだ!
「フガケフワ!フー、フー、フー。」
上手く話せないじゃないか。侯爵家嫡男である僕を侮辱して無事に済むと思っているのか?鞭打ちでは許さない。この2人は必ず処刑台に送ってやる!
「先輩!こいつに現実を教えてやってもいいですか?」
「顔以外にしておけ。処刑か強制労働だろうから骨も折るなよ。」
神に選ばれた僕に下賤な者たちが手を上げるつもりか?
「おい、先輩が優しくてよかったな。侯爵家嫡男君は感謝しろよ。俺は爵位を自慢するだけの馬鹿が大嫌いなんだ。衛兵を見下してんじゃねーよ!」
腹を何度も殴られ痛みで蹲ると背中や尻を何度も蹴られた。
こんな屈辱は初めてだ…。
「おい、謝罪はまだか?額を地面につければ謝罪したことにしてやるよ。」
この衛兵は死罪になることが分かって、死ぬ前に仕返しをしているつもりか?こいつは確実に狂っている!道連れとして殺されたら最悪だ!
「おい、早くしろ!どうせ下らないことを妄想してんだろ?まだ殴られ足りないのか?」
背中を何かで突いてくる。衝撃は小さいがかなり痛い!声を上げても笑われる…。
何故このような目に遭わなければならない。僕の凄さを理解できない、低能な奴にここまでされるとは…。決して楽には死なさないからな!
頭頂部を板のようなもので叩かれた。何度も叩かれた!
「おい、猿轡を取って謝りたいなら頭を下げろ。猿轡を噛んだまま謝るなら額を地面に付けろ。ほら、早く決めろよ!はぁ…、馬鹿に理解させるのはきついな。こいつが暴れるから引き摺って運んだことにしましょうか?全身砂塗れの擦り傷だらけになる。先輩、どうですか?」
「こいつは俺たちを殺そうと考えているだろうからな。それが無理だと理解することができないのだろう。今でも自分が上だと思っているに違いない。廃嫡されるこの馬鹿を次期当主にしていた、侯爵家も没落するかもしれないのに。何の権力もない嫡男が勘違いしすぎだ。両足を縛って馬車まで引き摺っていくか。」
低能が自分の想像を語る。僕が廃嫡されるだの、家が没落するだの言いたい放題だな。謝ってやろうと思ったが止めだ。もう好きにしろ。お前たちの処刑は決定だからな!
両足を縛られた後にうつ伏せにさせられた。
わざと引き摺る前にうつ伏せにしたな!口の中に砂が入るし顔もかなり痛い。自分の顔を鏡で見てみたい。治る傷だけだといいのだが…。
「地面が砂でよかったな。石畳だったら顔の皮がめくれていただろう。少しの擦り傷と砂塗れか。これなら問題なしだ。」
「もっとボコボコにしたかったけど、この辺が妥当ですね。馬車から逃げようとして落ちたりしたら、逃亡防止の為にしばらく歩けないようにする。伝えたからな。」
僕はもう冷静だよ。お前たちの顔は覚えたし、牢に入っているのも夜までだろう。つまりお前たちの命は明日までという事だ!止めは僕が刺すか…。平民の死刑は絞首刑だったはず。それだけでは味気ないからな。何度も剣を突き刺してあげるよ!
「よし、看守に引継ぎして俺たちはパーティー会場に戻るぞ。」
「そうですね。こいつの顔を見ると殴りたくて仕方ありません。早く戻りましょう!」
城に着いたら自分で歩かされた。やはり大きな傷を負わせることができないようだ。小物が一生懸命に考えたのだろうが、僕は許さないよ!
城の出入口の正面ではなく、通ったことがない横道を歩かされた。人が2人並んで歩ける程度の広さの道で、高い壁に挟まれていて圧迫感を感じる。
奥には地下に続く階段があり下りていく。
地下は中心に歩く道があり、そこだけ陽が入るようになっているみたいだ。
両端には牢がずらりと並んでいる…。
「こいつを平民用の牢に入れろと、クリスティアン王太子殿下からのご命令だ。暴れたせいで砂塗れだから顔に水をぶっかけてやってくれ。頭が悪いから会話をすると疲れるぞ。」
「王族の命令ならこいつはすぐに消えるだろう。貴族を平民用の牢に入れるんだからな。ご苦労さん。」
両手を縛られている縄を話していた男に渡すと、衛兵の2人は階段を上がっていった。
「牢に入れば自由だと思うな。騒いだら他の囚人の迷惑になる。寝るか静かにしていろ。騒いだら静かになるまで警棒で殴り続ける。これは法律で許された行為だ。他の囚人が証人になるから安心しろ。理解したか?お前は手前の牢に入れてやろう。」
牢に入り両足を鎖で繋がれ両手も鎖で繋がれた。その後に衛兵に縛られた縄が外された。
大声で叫びたいが我慢しよう。
先程から対応している男たちの目に光がない。ここまで連れてきた衛兵も大概だと思ったが、ここはかなり危険な気がする…。
叫んだり暴れたりしたら、躊躇いなく殺されそうな雰囲気がある。
「おい、本当に水をぶっかけてもいいのか?日陰で服はなかなか乾かないぞ。夜は冷えるし風邪をひいて、熱を出して死ぬかもしれない。どうする?」
貴族として砂塗れの姿でいるのは恥だが、目の前の男の言葉には重みがある。衛兵とは違って気遣ってくれているようだ。
長年囚人を見てきて、僕が特別な存在だと気づいているのだろう。ここはこいつの助言に従っておくのが無難だな。
「このままでいい。静かにしているよ。」
「理解が早いじゃないか。俺たち看守に逆らうのは、死にたいと言っているようなもんだ。あんた命拾いしたな。それじゃあな。」
看守が鉄格子を閉めると牢に入れられたと実感する。
何もすることがないしベッドで横になるか…。
何て硬いベッドだ!
木の上に布を敷いてあるだけじゃないか。
こんなベッドで寝たら確実に体が痛くなる。
それに臭い!なんだこの臭いは?体に害はないだろうな!?
全ての復讐を終えたらシャルロッテを迎えに行こう。
彼女との幸せな生活が待っている!
ベッドに座り壁に背を預け目を閉じた…。
◇◇◇
「ブライアン、起きろ。ブライアン、起きろ!」
聞きなれた声に目を開けた。
僕は寝てしまっていたのか。
「やや、父上ではありませんか。お待ちしておりました!早くここから出して下さい!まずは侯爵家嫡男である僕を、侮辱した奴らを処刑しなければなりません。」
「何も分かっておらぬようだな…。リーゼロッテ嬢と婚約することができたから、次期当主とした。婚約者としての義務を丁寧に確実に果たせと言い続けた。彼女の機嫌を損なうような事はするなと何度も釘を刺した。それなのに…、この愚息が!卒業パーティーで婚約破棄を宣言する愚者を、次期当主にしていた私は陰で嘲笑されておる。それに真実の愛だと!観劇の主役にでもなったつもりか!?しかも相手は王太子殿下の婚約者。シャルロッテ嬢に婚約破棄を迫ったのも知られておる。第二王子殿下にも不敬を働いた。お前に何ができる?私もリーゼロッテ嬢が我が家に来ることになって、浮かれていた。ブライアン、現実を教えてやる!全貴族が我が家と縁を切った。御用商人も他の貴族を気にして取引を断る。社交界に顔も出せぬ。これまで以上に領地の管理に力を入れ、信用を得られるように、努力し続けるしかない。お前には3つの選択肢がある。夢を見たまま死ぬ。鉄鉱山で強制労働を5年間。領地の邸で監禁生活。どれがいい?ああ、言い忘れた。強制労働から逃げたら処刑。監禁生活から逃げたら処刑。さあ、選べ!」
父上はおかしくなってしまったのか?誰かに言わされているのか?これでは僕を侮辱した奴らを処刑することも、シャルロッテと結婚することもできないではないか!
監禁生活を選んで上手く父上を排除し僕が当主になる。
悲しいがこれしかないな…。
「領地の邸にて監禁生活をします。」
「当然だが別邸で暮らしてもらう。牢を作るからできたら呼びに来る。それまではここで世話してもらえ。またな。」
完全に囚人扱いではないか。僕は侯爵家嫡男なんだ…。いずれ当主になる男だ!
そうだ!
牢の中では何もできないじゃないか。
「父上、いずれ当主となった時に執務ができません!」
「はぁ…、言わなければ分からないか。お前は廃嫡だが自由に動かれては困る。殺すのが一番だが、親としての情だ。本は読ませてやる。陽に当たることもできる。ベッドの質も食事の質も、ここより良いだろう。私にもお前の教育を間違えた責任がある。すぐに当主を交代するべきだが、息子の成長を待つしかない。私も忙しい身だ。牢ができたらまた来てやる。」
父上が出入口に向かって歩き出した。
すぐに来るだろうね。
僕を廃嫡すれば我が家は確実に没落だ。
泣きついてくるのは間違いない。
僕は優しいから家族は特別に許してあげるよ!
別邸にてブライアンは食事に毒を入れられて殺されるでしょう。
慰謝料を余分に払った意味がありません。
父は侯爵家を分家に譲ろうとしましたが断られました。
妻には離婚を突き付けられます。




