TOURNAMENT 2
急いで訓練場へ。ボルタは正座させられていた。
「あの、錦・・・。」
「あら、カエデ。紹介するわね、睡蓮と信長。」 あー、ボルタが泣きそう。
「初めましてイカルガ様、スイレンよ。ごめんなさいね、うちのボルタが不甲斐
なくて。」
「い、いや~あれはしょうがないですよ。居合でしたし・・・。」
「甘いわ!イカルガ様ともあろう者が!仮想空間だったから良かったけど外なら
もう死んでるわ!」
「そうですが・・・。」
迫力すげー、母さん程ではないがで、でかい・・・。
「あの立ち姿で居合ってわかったはずよ。ちょっと強くなって慢心したのよ。」
「か、返す言葉もございません。」
「あのう、スイレン様。お気持ちはわかりますが大会は始まったばかりですし
チームは勝つ事ができました。明日、次の試合もありますのでチャンスを
頂けませんか?」
「あなた・・・すごいわねえ・・・。」
「申し遅れました。クラスメイトのヒカミと言います。」
「虎の気配もあるわねえ・・・。」
「はい、父が白虎です。」
「まあ、白虎様の・・・。」
「どうでしょうスイレンママ、ここは錦に免じて許していただくわけには。」
「えっ、私?何で?」
「アホ!親友のお前が頼めば許さないわけにはいかないだろ!」
「そうかしら?」
「クックックッ。イカルガ様、噂通り面白い方ですわね。」
「今はカエデとお呼びください。」
「わかったわ。ボルタが帝都で楽しくやれてるのはどうやら、あなたのお陰の
ようね。半妖とわかっても全く態度が変わらないってボルタが言ってたわ。」
「まあ、ひとつの個性ですから。」
「気に入ったわ!ボルタ、あんたアカリじゃなくてカエデ様に仕えなさい。
そして勉強させてもらいなさい!」
「えっ!」
「い、いや麻呂でいいんじゃ・・・。」
「神を呼び捨て!ますます気に入ったわ。カエデ様、ボルタはまだまだ強くなり
ます。どうかよろしくお願いいたします。」
スイレンママは膝をつき、頭を下げた。ほう・・・。
「よして下さいスイレンママ。千疋狼の長とあろう者が簡単に頭を下げてはだめ
です。それにボルタは僕に仕えなくても既に仲間であり友人です。」
「ボルタ!あんた、帝都に来て良かったわ。次の試合から気合いれておいき!
カエデ様に恥かかせるんじゃないよ!」
「わ、わかったよママ。」 こいつ・・まじでママって呼んでんのか・・・。
念話でヒカミが「いや、カエデもママ呼びですよ。」
「そうだった・・・。」
「じゃあスイレンママ、ノブナガパパ。ボルタは預かります。明日からの2日間、
必ず優勝しますから見守って下さい。」
ノブナガパパが握手してきた。
「ありがとうカエデ君。まじ、助かった。スイレンはああなると中々止まらなくて
ナイスバデーなんだけどねえ。」
「あんた子供に何言ってんだ!」
ウィンクして去って行った。只者じゃねーな、ノブナガパパ・・・。
「さて、クラブハウスへ戻るか。いや、その前にメシ食え。」
「腹ペコなんだ。」
食堂でステーキを食わす。
「う、うめえ!っていうかここどこなんだ?」
「ワイズ邸。不動産王ワイズの屋敷でボルタの両親や錦も宿泊してる。」
「不動産王は名目です。ここはカエデ様の本拠地、覇道への前線基地です。」
「うわ!どこから・・・。」
「最初から居ました。」
ボルタがじっとこっちを見ている。
「何だ?」
「覇道か・・・本当にやりそうだと思ってな。」
「やるか!僕はスローライフを送るんだ。」
「無理だろ!どう考えたって黒幕じゃねーか!」
「確かに・・・。」
「ヒカミまで・・・。ボルタ、スローライフは1日にして成らずなんだよ。」
「何それ。」
「さっ、食ったら帰るぞ。試合は続いてる。」
「わかった。」
「ヒカミ、僕はそのまま屋台の方の様子を見に行く。」
「わかりました。」
「忙しいスローライフ・・・。」
「・・・・。」 返す言葉がない・・・。
「じゃあワイズまた来る。白竜達にも協力してあげて。」
「承知しました。」
再びコクーンで学園に戻る。
ヒカミ達とは別れ屋台のコーナーに。おお。すげえ混んでる。
「婆ちゃん、アカリ。昼食は?」
「まだじゃ。」
この分だとクランボさん達の屋台も学食も混んでるだろう。
「アカリ、婆ちゃんとカモナで昼食をとって。」
「わかりました。」
「婆ちゃん、鬼丸の詳しい事は後で話すよ。」
「負けたのう・・・。」 少し落ち込んでるか・・・。
「カモナ、戻ってる?」
「はい、大変勉強になりました。」
「アカリと婆ちゃんにうまいもん食べさせて。」
「かしこまりました。」
「うお!執事!」
「レットア様、アカリ様。こちらへ。」
さて、僕はメガネをかけて店番だ。生徒達も見にきてるが、貴族たちのお付きの
メイドさんや執事なんかも居る。お祭りみたいなもんなんだな。
「あのすみません。この棒は何ですか?」
メガネをかけた、タイの色からすると2年の生徒だな。
「はい、バトンと言って身を守る時に使ったり相手を殺さずに制圧
したりします。」
「えっ、こんなに小さいのに物騒な物なんですね。」
「いえいえ、剣や刀の方がよっぽど物騒ですよ。」
「それはそうですね、殺さずに制圧か・・・。」
「もちろん、持ってるだけじゃ無理ですけど。このボタンを押します。」
ジャキーン!と伸びた。
「おお・・・そういう事ですか。短剣くらいになりますね。」
「はい、普段は小さいままベルトにさしたりポケットに入れたりできます。」
「成程、アイテムバッグはお高いですものね。あの、振ってみても良いで
しょうか?できれば2本。」
「いいですよ、どうぞ。」
ヒュンヒュンと振り出した。この人・・・強いな。
「良いですね・・・これは良い物です。おこずかいでも買えますし。
あの、2本購入します。」
「ありがとうございます。今ならサービスで何か彫りますよ。」
「何か、ですか?」
「そうですね、例えばお好きな花とか。」
「それは嬉しいサービスですね。では黒竹をお願いします。」
「黒竹・・・。バトン自体黒いですから竹を彫れば・・・何か黒竹に見えて
きました。」
「フフフ、確かに。」
「あっ、マチルダ先輩。」
「あら、スズメさん。御機嫌よう。」
「お買い物ですか?」
「ええ、この黒竹を・・・いえバトンを。」
「スズメ、知り合い?」
「はい、図書委員会でご一緒してます。ベル様のギルドにも所属なさって
ますよ。」
「えっ、ベル姉の。」
「ベル姉?まあ、あなたが弟さんなのですね。」
「はい、カエデ・ガーネットです。」
「へぇ・・・噂は噂という事ですね。」
「いえいえ、ちゃんと出涸らしですよ。出来ました、どうぞ。」
「見事な黒竹です。」
「なんかもう黒竹にしか見えなくなりました。」
「ウフフ、私もです。ありがとうございます、良い買い物ができました。
ではスズメさん、図書室で。」
そう言ってマチルダ先輩はウフフと去って行った。
「強いねえ、マチルダ先輩。」
「ベル様のギルドですから弱くはないと。ですが戦ってる姿は見た事が無い
ですね。本を読んでる姿しか・・・。」
「ベル姉達のギルドは強者揃いだね。」
「カエデ、私も黒竹が欲しいです。」
「バトンな。ってかもう黒竹っていう名前にしよう。」
「その方が分かり易いですね。」
スズメの黒竹にはフェニックスを入れる。
「・・・カエデ。出涸らしを演じるには無理がありませんか?見事な
フェニックスです。」
「そお?香輝なんてこんなもんじゃないよ。」
「比べる基準が間違ってますね。」
黒竹はスズメとマチルダ先輩が好んで使うようになったため、図書委員の
必須アイテムになった。戦う司書・・・おっと・・。
しばらくスズメが居てくれたので大繁盛だ。メガネ外してるし・・・。
オマタクラブで出してた物も飛ぶように売れ、僕は接客よりコピーの方が
忙しかった。ブーメランブームが起こるんじゃないだろうか、黒竹も・・。
婆ちゃん達が戻ってきた。
「いや~カエデ、驚いたわい。」
「そんなに美味かった?」
「美味かったが、それじゃない。」
「龍神様にお会いしました。」
「えっ、リーファンが来てるの?」
「はい、大会を見に来たそうです。」
「ああ、成程。」
「武具屋のババアなのに加護をもらった・・・。」
「・・・・良かったね?」
「私はこれを・・・。」 脇差・・・。
「良かったね?ああ・・婆ちゃん、ちょっと。」
婆ちゃんの目の前で柏手を打つ。神気にあてられてる。
「ん・・・儂は・・・。」
「神気にあてられたよ。」
「どおりで・・・フワフワした感じじゃった・・・。」
「まあ慣れれば平気になるけどね。」
「カエデ・・・お前はいったい・・・。」
「気にしない気にしない、それよりこれ見てよ。」 売り上げを見せる。
「なんじゃこりゃ~!」
「例のモノはまだ売れてないよ。」
「そうか・・まあ、楽しみは後じゃ。在庫が足らんのう。」
「今日はもう店じまいにして、明日に備えよう。」
「そうじゃのう。」
1度、アイテムボックスにしまい店を閉める。
「スズメ、アカリ。婆ちゃんを送ってくる。」
「「わかりました。」」
イド君で婆ちゃんを送っていく。
「のおカエデ、鬼丸の小僧はどうしておる?」
「ママに雷を落とされてたよ。」
「そうか・・・。」
「もう大丈夫だよ。明日からはもう負けないと思う。」
「そうか・・・。」
「それより婆ちゃん、在庫はありったけにして。」
「売り上げを見てびっくらこいたぞ。1年分を越えとる。」
「じゃあ、3年分稼いでのんびりしよう。」
「それもええのう・・・。」
婆ちゃんをおいてクラブハウスへ。明日の相手が決まってるかも。
と、その前にブッシュクラフトの屋台に寄る、ザイルが居た。
「お疲れー、レットアは閉めたよ。」
「混んでましたからね。」
「こっちはどう?」
「目論見どおりかと。1年生を中心にレーションや結界杙、大手ギルドを中心に
テント、寝袋、ランタンなどの野営道具でしょうか。」
「おお・・やはり大手ともなるとダンジョンは泊まり込みなんだろうね。」
「そうですね。あまり趣味として買っていく方はいませんね。
あっ、リクオ様が塔のダンジョンへ行くと大量に買って行きました。」
「・・・まいど。クラブハウスへ行くよ、明日の事も気になるし。」
「わかりました。」
「リング、コーヒーちょーだい。」
「承知しました。」
リビングに行くとみなモニターに釘付けになっている。
「どうしたの?」
「んっ、カエデか。伏兵の登場だ。」
「へぇ、どこのクラス?」
「2年Eクラス。5年Bクラスに勝った、明日の相手だ。」
「うわー5年が撃沈か・・・。」
「カエデ、試合を見て下さい。妙なんです。」
「妙?まさか・・・リングお願い。」
モニターの一つにその試合を映してもらう。僕達の試合同様、大人と子供って
感じだ。剣から始まる、5年生の方が優勢だが・・・・。
「ここからです。」
「んっ?まともに技を食らって倒れない・・・。」
「はい、斬られてもいますし吹っ飛ばされてもいます。」
「ゾンビだね。」
「はい・・・。」
「それだけじゃない、見ろ。」
「これは・・・段々と強くなってるのか?あれ?大きくもなってる?」
「そうだ。カエデ、これは間違いなくバーサーカーだ。」
「反則じゃないの?」
「いえ、特に審議とかもなく2年Eクラスの完全勝利です。」
「ふ~ん、成程ねえ。」
「カエデ、これがバーサーカーなのか?」
「う~ん、の割には弱いんだけどね。グレーっていう感じ。貴族や冒険者が
ターゲットだと思ってたけど、どうやら教師の中にも協力者がいるようだね。」
「担任か・・・。」
「反則扱いになってないなら、そういう事だ。僕が知ってっるバーサーカーは
意思なんてなかったけど、彼らは自分の意思があるようだし。」
「俺達のAPSと同じ扱いって事か・・・。」
「まあ、ある意味そうだね。弱めの薬なのか何なのかわからないけど
検証中って感じがするよ。」
「真っ向勝負ですか?」
「いや、さすがにゾンビ相手じゃね。対策は練ろう。」
「何か気づいてるようですね。」
「うん。やられても何度も立ち上がってくるのは痛覚を極端に弱めてるから
だと思うんだよ。」
「あの、まさか手足を斬ると・・・。」
「外でゾンビに会ったら手足どころが頭を潰すでしょ?」
「まあ、そうですが・・・。」
「けど、さすがに生徒相手にそんな事したら代表チームがヒール扱いだ。
ゾンビじゃないしね。」
「ああ、成程わかりました。痛覚が弱いのを逆手に取るんですね?」
「そういう事。」




