TOURNAMENT 1
「場所は第4会場、開会式の後の1試合目だ。代表チームは控室から仮想空間に入
る。コーチとしては入れるのは1人だけなのでキリコ、頼む。」
「わかりました。」
「カエデ、何かあるか?」
「いや、代表チームはがんばったし後は優勝を目指すだけだよ。対抗戦とは関係
ないけど、魔導銃のプログラムを決めてる人は教えて。試合見ながら組む。」
「余裕だな、おい!」
「はっはっは、大丈夫だよ。みんなは強い。」
5人程の魔導銃とメモを預かる。諭吉と才蔵は風紀委員の仕事。ミナミとアカリが
自分のクラスの試合以外はレットアに入ってくれるから婆ちゃんもボルタの
活躍を見れるだろう。僕はニング先生に許可をもらいクラブハウスのアトリエで
プログラミングをしながら観戦。
開会式は時短のため、カーミラの開会宣言のみだ。
「リング、コーヒーお願い。」
「承知しました。」
「いや~、楽しみだねえ。」
「私達も楽しみです。子供の成長は早いですから。」
「箱庭にも中継してるんでしょ?」
「はい。キリコ様以外はあまり映らないかもですが・・・。」
「今の学園の力を見るには丁度いいよ。」
おっ、カーミラの開会宣言だ。
「生徒の皆さん、仮想空間ではありますが怪我がないように普段の鍛錬の
成果を思う存分発揮してください。ではスタッフの皆様スタートです。」
こんな開会宣言もあるのね。さてと、魔導銃のプログラムをしよう。
まずはアトムのか。成程な、生産寄りの構成だ。ヒールはデフォルトで後は
火と氷。瞬間的に熱したり冷やしたりに使うんだろう。攻撃も耐熱温度差や
水蒸気爆発を使えそうだし良いセレクトだ。
おっ、第1試合が始まる。最初は剣だ、何かこっちまで緊張してきた。
ディーは来てるのかな?
「観客席を映して。」
「承知しました。」
さすがに午前中の第1試合だ、観客もまばら。
おっ、いたいた。笹雪とレベッカさんも一緒だ。ディーも緊張してるな。
ちゃんと父母席もあるのか。授業参観みたいだ。
んっ!錦が居る。という事はあの隣に居るのがボルタママか。凛々しいというか
カッコイイ感じ。ボルタママの隣に居る小柄な人の好さそうな人がパパかな。
確か皇室勤めだったはず。他にも代表選手の親達らしき人達が居る。
1年Fクラスの快進撃をお見せしよう。ふふふ・・・。
と魔導銃のプログラムをしながら思っていた時期もありました。
3年Aクラス、滅茶苦茶強えーじゃねえか!
アトムは何とか辛勝、ボルタは普通に負けた。
「スズメ、資料ある?」
「今持って行きます。」 すぐにスズメは来てくれた。
「強くない?」
「代表選手が代わってますね。やられました。全員ベル様のギルドの方です。」
「そんなのあり?」
「ありです。大会前日までエントリーできます。」
「それは盲点だった。」
「情報操作の一環だと・・でも大丈夫です。キリコが付いてます。」
「そ、そうだよね・・・。」
3試合目のベルグも負けたよ。ベルグの方を持つわけではないが代表の人は
ナギサ先輩並みに強かった。
「1勝2敗・・・後がない・・・。」
「だ、大丈夫ですよ。」
次はブラウだ。んっ、相手の魔導師の恰好は・・・。
「まずい、スズメ。相手は付与師だ。」
「えっ!」
案の定、自分自身にバフをかけ超強化している。
時ポから繰り出されるファイヤーボールやロック、ウォーターランスまで
ひょいひょいと躱している。すごいスピードでブラウに近づいてくる。
「ブラウー!逃げてー!」と思わずモニターに叫んでしまった。
「大丈夫です。時空ポケットでの攻撃は誘いです。」
「へっ?」
「バフを掛けれるのは相手の付与師だけではありません。」
ブラウが相手を引き寄せてストライクロッドでしばき倒した。当然肉体強化
から繰り出される強烈な1撃だ。
「勝った・・・。ブラウが勝ったよ!スズメ!」
「冷や冷やしますね。ですが、これでイーブンです。」
「そうだった・・・ゼルダ、頼むよ・・。」
相手は大剣使いだ。まじ13歳なの?あれ。
「あれ大人じゃないの?」
「資料によるとちゃんと13歳ですね。ベル様のギルドのBチームの
リーダーです。」
「Bチーム?」
「人数が多いので5チームくらいに分かれているようです。」
「Bのリーダーって事はギルドの中でも強い方か・・・。」
「そういう事になります。」
ゼルダ、勇気と自信をもって接近戦に持って行くんだ。
「はやっ!」
「大剣とは思えないスピードです。」
「ハイランダーじゃないよね?」
「ちょっと不安になってきました・・・。」
「大丈夫、空島の1週間は伊達じゃない。ボルタは別ね。」
剣が青白く光りだした。空島での修行でプラズマをボール状にしなくても
剣に纏わせる事が出来るようになったんだ。
よし!あとは雷光で少しだけでもいいから身体に触れれば勝ちだ。
バチッと鳴って相手が膝をついた。よっしゃあ・・あー!立ち上がった。
「3年生のプライドでしょうか?」
「それもあるけど、単純にタフなんだ。次で決めないとゼルダの方が先に
燃料切れだよ。」
「他に武器はないんですか?」
「あるにはあるんだけど、成功率が低い。それもあって1回戦で使う予定じゃ
なかったんだ。」
「温存してる状況ではなさそうです。」
「そうだね、ゼルダのあの構え・・使う気だ。」
構え自体は剣を逆手に持つ雷光に近いのだが、剣の光が先端に集中している。
周りからは良く見えるのだが相手からは身体がブランドになり見えてない。
「剣先にエネルギーを集中させているんですね。」
「幸が真空を使ってやるんだけど、それをプラズマでやってるんだ。」
「成功率が低いというのは?」
「あの状態をキープするのに集中するあまり動こうとするとプラズマが
霧散してしまう。」
「駄目じゃないですか?」
「だから相手に突っ込んできてもらってカウンターで斬る。
いや、斬らなくても大剣に当てるだけでいい。」
「相手も負けるわけにはいかないから、焦っていると。」
「1年にイーブンにされてる時点で焦ってるはずさ、ましてやベル姉のギルド
なら、なおさらだ。」
「あっ、来ました。」
「よし!いけー!ゼルダー!」
ドンッ、爆発したー!両方、吹っ飛んだー!何でー!
「相手も何か大剣に仕込んでたんだ。」
「さすがベル様のギルドの方。一筋縄ではいきませんか・・・。」
「この場合はIAの判定?」
「そうなります。」
会場で応援しているクラスのみんなも、観客のみなさんも固唾を飲んで
判定を待っている。もちろん、僕達もだ。
IAからアナウンスが入る。
「只今の試合、判定により1年Fクラスゼルダの勝利です。」
会場から歓声があがった。
「ふぅ・・・心臓に悪い。正直、戦闘服の性能の差だ。」
「それを含めて勝利は勝利です。紙一重というやつですが。」
「全くだよ、手に汗をかいた。」
「フフフ。」
「今日はこれで終了?」
「はい、1日目は試合数が多いので明日2試合。3日目が準決勝、決勝です。」
「了解。1度、クラスに戻ろう。」
「はい。」
教室に戻るとお祭り騒ぎだ。そりゃそうか格上相手にジャイアントキリング
と言ってもいい勝利だ。
「お疲れー。」
「ああ、なんとかな・・・。」
「3年Aクラス、想定よりもかなり上でした・・・。」
「代表選手が入れ替わったんじゃ、しょうがないよ。代表チームのみんな、
1回戦突破おめでとう。」
「カエデ、これが後4試合ってムリゲーじゃない?」
「はははアトム、負けるなよ。ディーと将軍と副将軍が見てるからな。」
「うへぇ・・・本当に師匠が来てるんだ・・やるしかないか・・・。」
「そういうこった。ほい、魔導銃。」 こいつテムなんだよなあ・・・。
「ぬっほ~!」 魔導銃に頬ずりしてるよ・・・。
「ごめんカエデ、負けた・・・。」
「しょうがないよ、ベルグ。あの人すげえ強かった。」
「授業でも勝てた事ないんだ・・・。」
「あの方はナギサ先輩とどっこいどっこいですよ。」
「やっぱそうなんだ。」
「やりましたカエデ。」
「おめでとう。ナイスファイトだったよブラウ。バフも使えたんだね。」
「ザイルに教えてもらってました。」
「ブラウは既に魔導院からスカウトが来てます。」
「それはすごいねえ。ザイルからよく話を聞いて決めてね。学生でも仕事は
できるから。」
「はい。」
「ゼルダ、燃え尽きるのは早すぎるぞ。」
「わかってるでしょ?」
「ああ、戦闘服の差だったな。」
「先輩の大剣が爆発した。その破片に吹っ飛ばされたよ。」
「自爆技か・・・雷球は?」
「大剣に当たった瞬間に爆発。」
「爆発が大きくなったか・・・。」
「たぶん。ヘッドギアからフェイスシールドが出て助かったよ。」
「シゲさんが念の為って仕込んでたから。」
「初戦で全部、出し尽くした感じ。」
「格上相手だ、隠してる場合じゃなかったよ。ヒカミ、ボルタは?」
「ボルタなら怒りのボルタママに連れて行かれました。」
「へっ?京に?」
「いえ、ワイズさんの所に宿泊してるそうで。そこに。」
「千疋狼の技は打ち合ってこそだからね。相手は居合だったし
しょうがなかったと思うけど・・・。」
「ニシキさんとボルタパパもそう仰ってたんですが、子供の試合だから
いいようなもの、外なら死んでると・・・。」
「まあ、そうだけど・・・。後で挨拶に行くよ、付き合って。」
「わかりました。」
「シゲさん、これからの予定は?」
「みんな、これからは自由行動だ。他のクラスの試合を見てもいいし鍛錬に
使ってもいい。試合を見る連中は気になった事があれば報告してくれ。
ニング先生、何かありますか?」
「いや、大丈夫だ。大会は始まったばかりだが代表チーム、初戦突破おめでとう
よくやった。だが、無理はするな。」
そう言いながらニング先生はニマニマしていた。
後で聞いたのだが3年Aクラスの担任と仲が悪いらしい。
「キリコ、ボルタは居ないけど代表チームに映像を見てもらって反省会と
明日の事を。」
「わかりました。」
「シゲさん。」
「そうだな、さっきみたいな事もあるし試合の観戦だな。明日の相手も気に
なる。エイルとスズメは分析を手伝ってくれ。」
「「わかりました。」」
「ザイルは優勝候補のチェックを頼む。試合を見る連中はなるべく分散して
見てくれ、情報が欲しい。」
みんな試合を見るため、方々へ散っていった。
勉強してくれたまえ、来年は代表になるかもだからね。
「カエデは?」
「ちょっとワイズの所に。ボルタを助けてくるよ。」
「了解。」
ヒカミを連れてコクーンでワイズ邸へ。
「ボルタには申し訳ないけど先に昼食を食べよう。腹ペコだ。」
「フフフ、そうですね。私もです。」
「ワイズ―、昼食お願い。錦達、来てるでしょ?」
「はい、訓練場に居ます。」
「了解。」
おっ、昼食はステーキだ。柔らかーい!うまいー!
「美味しいですね。いつもですが。」
「白さん達、帝都に来てるの?」
「はい、屋敷の1部を白国の作戦本部に改装中ですね。」
「ヒカミママ、張り切ってたもんね。」
「母様には困ったものです。白国の事は雷電さんに任せ父様まで来てます。」
「まあ箱庭で事件は滅多に起きないからね。」
「改装が終わるまで暇だからと言って、2人で帝都観光してますよ。」
「はっはっは、デートだね。」
「私、弟か妹が欲しいので2人には頑張ってもらいたいです。」
「・・・・そ、そうなんだね。」
「ワイズ―、私にもステーキちょーだい!」
「白竜、来てたんだ。」
「こんにちわ、白竜様。」
「あら、デートぉ?駄目ねーキリコは。」
「違う!キリコは学園だよ。」
「そうだったわ。」
「白竜達もキリコの屋敷を改装中?」
「そうよ。そっちは旦那に任せて私は情報収集ね。」
「ご苦労様。」
「しばらく見ないうちに帝都もだいぶ変わったわ。魔力がすごいし、
美味しそうな食べ物が一杯よ。」
「白竜様、是非ビストロへいらして下さい。」
「ええ、みんなで伺うわ。母さんにも自慢されたし。2人はさぼり?」
「ちがーう!仲間を助けに来た。」
「ここに?ああ、錦達ね。じゃあ、あの白い顔の子が仲間なのね。」
「カエデ・・・。」
「まずいな、行こう。じゃあ白竜、またゆっくり。」
「ええ、逝ってらっしゃい。」
「字がちがーう!」




