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食糧調達と野盗と言う事を聞かないゾンビらしき者達。

 タンスが開けられ、物色された形跡がある。


 食べ物、金、貴金属の類いを探していたんだろう。


 世界がこんなんになっても金···か。


 それと、たまに首と胴が切り離された死体や遊びながら殺されたのか、手の指を全部切り落とされていたり、手足だけを切り離された死体を何軒かの家で見た。


 みんなが助け合わなきゃならない時に、強盗や殺人、拉致、レイプ······そんな事をしている人間ばかりじゃないにしても、男相手には疑心暗鬼になるなぁ。


 とりあえず僕には、ゾンビらしき者を仲間にする能力が備わってるおかげで、戦力としては低くないはずだ。


 ただ、5体じゃ心許ないからもう少し数は増やしたいな。


 それにしても、新しく仲間になったこの5体のゾンビらしき者はカイやジンと違って動きが鈍いままなのは、何か違いがあるんだろうか?


 その辺の事も勉強しなきゃな。


「ふぃがりゃふぃふぁん(五十嵐さん)」


 しずくにも入れ歯を···って思うけど、入れ歯って個人に合わして作るんだよな?


 というか、素直な疑問だがどうやって歯を全部綺麗になくしたんだ?


 ······いや、考えるのはやめよう。


 想像できる事が一つしかなく、肝を冷やすって多分こういう事だろうな。


「どうした?」


「ふぉふぁふぁふいふぁ(お腹空いた)」


 太陽がちょうど真上にあるから昼くらいか。


 早いところ何か食糧をと思ったけど、全部の家や商店が荒らされて何にも残ってなかった。


 というか、この辺一帯にもゾンビらしき者も人間の生き残りも何にもいないのは、さすがにおかしい。


 約70万人もいる市なのに。


 何か理由があるはずなんだけど······。


「んもー!」


「あ、ごめん、ちょっと考えてたんだ。」


 もう少し進んだ所に隣町に行く橋が出てくるけど、そこを渡ってすぐの所に商店が3~4件あったはずだ。


 行って、帰って来てギリギリ間に合うかの距離か······この辺をうろうろしてても仕方ないから行くか。


「あと30分くらい歩くけど大丈夫?」


 しずくは少し考えた後にうなずいてくれた。


 ちょっと不機嫌になっちゃったかやっぱり。


 お腹が減って、さらに歩くなんて言われたら仕方ないか。


 でも、この先を少し行った所のトンネルを抜けたら土手道にも行けるから一度川に寄って、水の確保をして喉を潤せば少しは気も紛れるだろう。


 ってか紛れて欲しい。


 ──────



 橋を渡って見た物がひどすぎる。


 うろつくゾンビらしき者、黒こげになっている人や車、自転車、バイク、とにかく色々な物に火がついていたと思われる。


 しずくには、橋の下に隠れてもらっていて正解だった。


 僕は誰かを守って戦った経験なんかないから不安だったし。


 それから、ここら辺のゾンビらしき者もやはり僕を襲ってくる雰囲気はないものの、動きを止めて僕の言う事を聞こうとする素振りはない。


 何か発動条件みたいなものがあるんだろうか?


 ······と、今は食糧食糧っと。


 確かこの細い路地を抜けた所に地元民しかこないような雑貨店あるんだけど、そこならあんまり漁られていないんじゃないかって思って、進んでいるけど何か妙な胸騒ぎがする。


 急いでしずくの所に戻らないと──


 細い路地を抜けて、目当ての雑貨店にたどり着き、店内に入ると予想通り荒らされていない。


 鯖の缶詰めにマグロフレーク、コーンの缶詰めとスナック菓子に冷えてないけど、ジュースも何本か商品のエコバッグに入れて持ち出した。


「これくらいあれば大丈夫かな? あっ! あと水筒。」


 ガタンッ!


 田舎にはよくあるけど、お店と住居が一緒になっているタイプのお店で、その奥の部屋から物音がしたのだ。


 ゾンビらしき者なら問題ない。


 僕は襲われないから。


 問題は人間だ。


 それでも1~2人相手なら負けないとは思う。


 僕はそろりそろりとお店から家に上がり込み、奥の部屋へと進み、壁に背をあて乱れてきた呼吸を、心臓の鼓動を抑えようど精神を集中した。


 "落ちつけ、僕は大丈夫。僕は強い。味方もいる"


 ちらっと部屋を覗いて安堵した。


 割れた窓ガラスから入ってきた風がアニメのタペストリーを揺らし、時折音を出していただけだった。


「驚かさないでくれよ。」


 あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ー!!!!


 ううぉぉぉぉぉぉぉう~!!


 その時突然連れてきていたゾンビらしき者達が騒ぎだしたのだ。


「おいおいおい!! 食いもんも飲み物もあるじゃねーか!?」


「宝の山かよ!! てめえらゾンビどもには必要ねぇんだから死んどけ──よ!」


 ガッ!


「え? バットが壁に当たってフルスイング出来─!?」


 ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!


「いてぇ! ふざけんな! 離れろ!」


 その呻き声のあと、すぐに人間の声。


 ヤバい!


 ·······野盗だ!!


 しかし、どうやらこんな狭い店内でバットなんか振り回せるわけないだろ、本当にバカだな。


 とりあえず1人は噛みつかれたからもうダメだろうな。


 様子見して考えるか。


 先ほど噛みつかれた野盗は、次々に襲いかかられ絶命しているようだ。


 野盗は、あと1人か。


 食われている様を震えて見ているようだ。


 チャンスだ!


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「なっ!? なんだてめえは!?」


 飛び出した勢いそのままに体当たりをかまし、()()()の視線がこちらに向けられる。


「みんな!! こいつを食い殺せ! ちょっと遅めのランチだ!」


「てめえ何言ってやがる!?」


 僕が命令を口にしたとたんに、ゆっくり立ち上がりだし野盗に5体のゾンビらしき者が襲い始めた。


「どっ!? どうなってやがるんだ!? なんでこいつの言う事を······ひぃ!? 来るな! 近寄るな! い、ひぃぎゃあ! く、食わないでくれ!」


 この食い殺された男達も僕の仲間になるだろう。


 ()()()が満足するまで食事をさせてあげよう。


 僕は、まだ発作がきてないから人間を食べるよりも棚に残した缶詰めを一つ取り、僕も遅めのランチと······お茶。


 ごくっごくっごくっ······。


「ぷはーっ! 美味い!」


 焼き鳥の缶詰めも美味い!


 炭火焼きした焼き鳥を缶詰めにしているって謳い文句だけど、本当に美味いぞこれ!


 タレも絶妙な甘じょっぱさと程好い焦げの匂いが、嫌な匂いじゃなくむしろ美味さを引き立てている。


「これ温めたら絶対美味いな。そうだ、フライパンと油も持ってライターも10個もあれば足りるかな?」


 フライパンなら武器や盾にもなるし、油も使い方次第で罠や武器に使えるかもだし。


 火は絶対必要だよな。あそこもガスや電気止まってるはずだし。


 ゆらっと最初に食い殺された野盗1が起き上がり、ふらふらしている。


 そのまま外に行こうとしたので慌てて「止まれ!」と言っても言う事を聞かずに、そのまま出て行ってしまった。


 え? 僕の言う事を聞くんじゃないの?


 この事態を飲み込めなかった僕はみんなに「離れて!」と命令したら、食事をぴたりとやめて野盗2から離れた。


 やっぱり言う事聞くよね?


 なりたてゾンビらしき者はダメなのかな?


 野盗2が起き上がろうとするのを待とうと視線を向けたけど······絶対にこいつはゾンビらしき者にはなれないと思い、みんなを連れてしずくの元へ向かった。


 途中うろうろしている彼らに命令したものの、やはり言う事を聞かない。


 どうなってるんだ?


 何か発動条件があるのか?


 でも、この5体の()()()は言う事を聞くし······まだまだ色々試さなきゃな。


 "やぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーッ!!!!"


 しずくの声だ!


 野盗か?


 ゾンビらしき者か?


 とにかく急がないと!


 僕は何をのんきにしていたんだ!? 食糧を確保···目的を達成したら速やかに戻るのは鉄則なのに!


 くそっ!


 橋の下にたどり着いた時3人の男達が、しずくを囲んでいる。


「やめろーーッ!!」


 僕は叫びながら男達に向かって落ちていた拳大くらいの石を拾いあげ殴りかかった。


「あぁ?」


「なんだぁ?」


「おいお─ぶっ!」


 不意討ちで中肉中背の角刈りの男に一発をお見舞いしてやった。


 そのまま呆気に取られた2人を突き飛ばして、すぐにしずくに僕のTシャツを着せると顔をぐしゃぐしゃにして泣きじゃくった。


 ひどい事をする奴らだ。


 いくらこんな世界になったからって1人の女の子を男3人で寄ってたかって······許せない!


「てめえ~突然現れてなにしやがるんだ? あぁっん!?」


「ガキぃ、お前死んだぜ?」


「クソガキがぁ、てめえよくも俺を殴りやがったな! てめえには何にもしてないのによぉ!」


 こいつら本当に自分達が悪くないって思ってる?


 ······クズすぎる。


「しずく、逃げて。 ここをまっすぐ行けば大きな木があるからそこに登って待ってて。 僕は必ず勝つから。」


 こくん。とうなずくと、木に向かって走りだした。


 それを見てすぐに息を思い切り吸い込み──


「みんなーーッ! こっちだぁーーッ!」


「は?」


「え?」


「ぎゃはははは! 仲間呼びやがったこいつ! 良いぜ? まとめて殺してやるから出て来いよ!」



 あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーッ!!!!


 う"ぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーッ!!


 あとは······。


「なっ!? 仲間って人間じゃねーのか? いや、そもそもゾンビが仲間わけねぇ!」


「ちっ! とりあえず逃げるぞ!」


「ゾンビが来る前にこのガキをやっちまえば良いんだよ。このガキ許さねぇわ。」


 許さねぇ······か。


 巨大ブーメランなんだけどな。


 僕の頭には拳法の知識まで入ってるんだ。


 右足を軽く後ろに引き、左足で地面を蹴飛ばし一気に間合いを詰める"蜘蛛足"


 そのまま、左手の指を全部第2関節まで折り曲げて人をひっかく時みたいな手にした"熊手"


 蜘蛛足で間合いを詰めて射程距離に入り、熊手を相手の右あごに下から脳を貫くイメージで打ち抜く。


「がっ!?」


「坂田!?」


 坂田と言われた男はもろに食らった為に軽い脳震盪を起こして、ガクガクっと膝から崩れ落ち、

 回復するまで1分はかかるはず。


 次ッ!!


「てめえ! 調子に乗ってんな!」


 痩せた長身男の殴りかかってきた右腕を、体を左に少しずらしつつ左手でその腕を右側に弾いていなす。


「ぬわぁ!?」


 体制を崩して無防備になった背中に思い切り相手の背骨めがけ肘で叩きつける。


 潰されたカエルみたいに体を地面に張りついたところに頭をサッカーボールのように蹴飛ばしてやった。


 しばらくは激痛と軽い呼吸障害を起こして、すぐには動けないだろう。


 次っ! あと1人!


「てめえ···坂田と金木を──」


 はぁはぁ。


 ヤバい······息が上がってきた。


 やっぱり体力がなさすぎる。


 当分は体力づくりをしなきゃな。


 じりじりと少しずつ左に動く。


「さっきまでの威勢はどうした? 息も上がっているみたいじゃねーか?」


「へへへ······」


「何がおかしいんだてめえ!?」


「勝ちを確信したから······走れ()()()ーーッ!!」


 あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーッ!!!!


 う"ぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーッ!!


 ふーっ! ふーっ! ふーっ!


 ぎしゃぁぁぁぁぁぁぁーーッ!!


 ぶろぉぁぁぁぁぁぁぁーーッ!!


 連れてきた5体が人間さながら、けたたましい叫び声をあげて襲いかかってきた。


「なっ!? 走れるゾンビ!? そんなん聞いてねぇぞ!? ってか、てめえ今ゾンビどもに命令したよな!? ()()()()()()···てぇ! ひぃやだぁ! いてぇ! 助けて! やめさせ···っ!」


「あ···あが···あぁぁぁぁぁ!」


「いっひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


金木と坂田っていうのも回復する前に()()()が駆けつけてくれて助かった。


 3人の野盗達は一斉に噛みつかれ、遅れてやってきたゾンビらしき者達もさらに食事にありつけた。


 今回の件でわかったのは、僕には5体しか言う事を聞かす事が出来ない事。


 それから最後に言われた"あの人といっ···"って多分"一緒"って言おうとしたよな?


 僕と同じ能力者がいるって事?


 深く考えるのは帰り道でいいや。


 今は、あの木までしずくを迎えに行かなきゃ。


 食糧や飲み物、フライパンが入ったバックを持ったその時バイクのエンジン音が鳴り響き、僕は嫌な予感がして逃げておくように言っておいた木に向かって走りだした。


 ───やっぱりいない。


 くそっ!


 またか!


 僕にはやっぱり誰かを守りながら戦うなんて無理だよ。


 ······弱音を吐いても仕方ない。気持ちを切り替えよ。


 しずくは、さっきのバイク野郎にさらわれた可能性がある。


 なら一旦コミュニティに戻って藤崎さんに相談して、情報収集からだ。


 何の情報もなしに行くのは危険すぎるし、時間を無駄にしすぎる。


 待ってろよしずく。


 必ず助けに行くからね────

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