(17)やっぱり愛が足りない
「そういえば、戦士ギルドではかなり活躍しているみたいだね」
食後のコーヒーを飲みながら、ふいにレインが話題を振る。するとクルミが「そうなんですよ!」と目を輝かせた。
「演習でも大活躍でしたし、魔物討伐でも誰よりも戦果を上げていてもうすごいんです!」
「ちょっ、大袈裟だって!」
横助は慌てて訂正する。そんな二人のやり取りを見てレインは可笑しそうに笑った。
「ところで、サンズは元気かい?最近会ってなくてね」
「サンズさんですか?元気ですよね?」
クルミは横助を見る。
「ん?ああ、元気すぎるとも言えるな」
ここ数日で横助はサンズのことがだいぶ分かってきた。リーダーとして常にどっしりと構えているサンズだが、いざ戦闘が始まると誰よりも先頭で戦う。結果、アーサーが代わりに指揮を執っているなんてこともざらにあった。
「そうか、彼も相変わらずだな」
レインは嬉しそうに言った。その様子を見てクルミは尋ねる。
「レインさんとサンズさんはどういったご関係なんですか?」
「まあ友達、かな。僕とサンズ、あとクラウディアを含めた三人はもともと戦士ギルドで戦士をやってたんだ。そこで出会って、意気投合して、今に至るって感じだよ。何だかんだでもう十年ぐらいの付き合いになるかなぁ」
レインが二十五歳ぐらいなので、大体今の横助とクルミぐらいの時期に出会ったと言うことになる。
「その頃からよくこの酒場を利用しててね。自分達の夢とか、西都はどうあるべきかとか、そんな話ばかりしてたよ。そんなわけで、未だに大事な話があるときはこの場所に集まるんだ」
そう、レインは少し恥ずかしそうに語った。横助の頭に、若き日の三人が互いの意見をぶつけ合う姿が浮かぶ。
「なんか、いいですね……」
クルミが羨ましそうに言った。なぜか横助の方を見て。横助はそっと目を逸らして、レインに向かって尋ねた。
「と、ところで、ガロンさんともその時から知り合いなんですか?」
するとレインは一瞬きょとんとした顔を浮かべて、すぐに「ああ」と呟いた。
「そういえば言ってなかったね。ガロンさんは元戦士ギルド長だよ」
「いやー、それにしてもびっくりですね。まさかガロンさんが戦士ギルドのギルド長をやっていらしたなんて」
「そうだな」
夜、部屋でクルミと横助が今日のことを話していた。二人がレインから聞いたのは、ガロンが戦士ギルド長だったことと、その頃から酒場を経営していたこと。ある日突然、後任をサンズにすると言ってギルドを辞めてしまったことだ。
「ガロンさんって、どこか不思議な方ですよね」
「そうだな」
横助も同意した。
「でももっと不思議なことがあるんだけど」
「なんですか??」
「どうして僕らは同じベッドで寝ているんですか?」
天井を見つめたまま横助は尋ねる。
「…………え?」
「いや『え?』じゃなくて」
「お母様に言われたんです。横助さんの元気がないから、添い寝でもして慰めてあげなさいって。それでなるほどと思って」
クルミはさも当然のように言った。
(いやなるほどじゃないでしょ。襲われたらどうすんの……。まあ襲わないけど)
「それに私はやっぱり、横助さんには愛が足りないと思うんです」
そう言ってクルミは横助の方に向き直った。
「いいよ愛なんて……」
じっと目の奥を覗き込むようなその瞳に耐えかねて、横助は背を向ける。しかしそんな横助の背中をクルミはギュッと抱きしめた。
「ちょ……クルミ?」
「私は横助さんを愛したいんです」
その言葉と共に、何か温かいものが横助の中に流れ込んできた。
「ク、クルミ……?」
「すぅ……すぅ……」
「え、寝るのはやっ!?子供かよ!」
驚くべき早さで寝息を立て始めたクルミ。柔らかい二つの感触が上下するのを背中で感じながらも、横助は吸い込まれるように眠りの世界に落ちていった。




